T-7Aレッドホーク(Red Hawk)は、T-38Cタロンの後継機となる次世代の訓練機です。
F-22ラプターやF-35AライトニングIIなどのステルス機やF-15EXイーグルIIなどの最新戦闘機やB-1BランサーやB-2スピリットなどの爆撃機を操縦するパイロットも、はじめから実機の戦闘機を使っての操縦訓練をするわけではなく、最初はシミュレータや訓練機から訓練をはじめます。
ここでは、T-7Aレッドホークについて、米国空軍のWebサイトの情報を主に写真で説明します。
T-7Aレッドホークとは
T-7Aレッドホークは、1960年代から運用されているT-38タロン(Talon)に代わり、戦闘機や爆撃機のパイロットの訓練に使われます。
下図は、T-7Aレッドホーク初号機です。
- 2023年11月8日にEDWARDS空軍基地での飛行試験の写真です。
- パイロットは、米国空軍のパイロットとボーイング社のテストパイロットです。
図1 T-7Aレッドホーク(Red Hawk)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
T-7Aレッドホークの主な特徴
T-7Aレッドホークの訓練機としての主な特徴を列挙します。
- 次世代型のコクピット
- シミュレーターと実機訓練を統合した訓練システム
- モデルベース・エンジニアリングによる機体設計から製造までの試験
- これまでの訓練機よりも安全性を高めたコクピット脱出システム
- 様々なミッションに柔軟に対応できるオープン・ミッション・システム・アーキテクチャとデジタル・フライ・バイ・ワイヤによるコントロールシステム
デジタル設計による最初の戦術航空機
T-7Aレッドホークの開発は、モデルベースのシステム・エンジニアリングと3D設計ツールを使ったデジタル設計による最初の戦術航空機です。
また、シミュレータを含め製造メーカーと米国空軍が密接に連携して開発が進められています。
下図は、T-7Aレッドホークのフライトシミュレーターです。
- 前席と後席の位置関係(高さの違い)が分かります。
図2 T-7Aレッドホークのフライトシミュレーター
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
B-2スピリットの後継機となる無尾翼の戦略爆撃機B-21レイダーは、デジタルツインで設計・開発が進められています。
- デジタルツインとは、実機と実機相当のシミュレーションモデルを使い設計・開発を行う手法の1つです。
写真で見るT-7Aレッドホーク
T-7AレッドホークをEDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイトの写真を使い説明します。
米国空軍のWebサイトで公開されている写真が少ないので、公開されたら追加していこうと思います。
機体形状
下図は、機体上方からの写真です。
- ストレーキを備えたオーソドックスな機体形状です。
- エンジンは1基で、F-16ファイティング・ファルコンに似ていますが、垂直尾翼は2枚です。
- 水平尾翼は、尾翼全体が可動します。
図3-1 T-7Aレッドホーク:上方から
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、前方からの写真です。
- F-22ラプター、F-35AライトニングIIやF/A-18スーパーホーネットの様に垂直尾翼が外向きとなっています。
図3-2 T-7Aレッドホーク:前方から(その1)
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
前方からの写真をもう1枚。
- 複座ですが、訓練機なので後席の位置が高いレイアウトになっています。
- 主翼上面の胴体側に小型の補助翼らしきものがあります。
図3-2 T-7Aレッドホーク:前方から(その2)
出典:COLUMBUS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、側方からの写真です。
- 主翼の付け根付近に垂直な補助翼らしきものがあります。
図3-3 T-7Aレッドホーク:側方から
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
下図は、下方からの写真です。
- 主翼下のハードポイントの無いシンプルな形状です。
図3-4 T-7Aレッドホーク:下方から
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
離陸
下図は、T-7Aレッドホークの離陸時の写真です。
図4 T-7Aレッドホーク:離陸
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
着陸
下図は、T-7Aレッドホークの着陸時の写真です。
図5 T-7Aレッドホーク:着陸(その1)
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
着陸時の写真をもう1枚。
図5 T-7Aレッドホーク:着陸(その2)
出典:VANCE AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
試験機
下図は、T-7Aレッドホークの試験機の写真です。
- 2017年4月の試験飛行中の写真です。
図6 T-7Aレッドホーク試験機(その1)
出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、2024年8月21日、エドワーズ空軍基地での飛行試験のため、移動中のボーイング社のBTX-1の写真です。
- 手前のグレーの機体がボーイング社のBT-Xです。
図6 T-7Aレッドホーク試験機(その2)
出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
T-7Aレッドホークの歴史
T-7Aレッドホークは、2018年に米国空軍と契約しており、2024年1月現在米国空軍による運用試験を実施しています。
2023年6月:初飛行
2023年9月:米国空軍に量産初号機納入
2023年11月:米国空軍の飛行試験開始
T-38タロンに代わる訓練機として配備するための飛行試験が開始されました。
2024年1月:耐候性試験
2024年1月から2月にかけマッキンリー気候研究所で耐候性試験が実施されました。
2024年11月:技術指令の第一段階試験完了
2024年11月8日、Boeing Defenseの公式Xによると、T-7レッドホークの技術指令の第一段階の試験(the first phase of testing the RedHawk’s technical orders)が完了しました。
- 安全で高品質な航空機運用をするために、メンテナンス文書が十分な詳細で正確であるかを検証するための試験です。
2025年1月現在の状況
2025年1月現在、T-7レッドホークのテスト機は2024年12月に5機目が米国空軍に納入されています。
2025年度(FY25:米国の会計年度)で4機がProduction Representative Test Vehicles(PRTVs:量産に向けた試験機)として調達し、FY26に納入予定です。
量産ロット1は、2026年度の計画となっています。
T-7Aレッドホークの諸元
ボーイング社のWebサイトの情報からT-7Aレッドホークの主要諸元を下表に示します。
機体の大きさは、F-16ファイティング・ファルコンに近いサイズです。
全長 | 14.55 m |
---|---|
全高 | - |
全幅 | 9.32 m |
エンジン | F-404 アフターバーナー付 |
重量 | - |
速度 | 1,161 km/h(マッハ0.975) |
高度 | 13,716 m |
燃料搭載容量 | 2,041 kg(胴体内) |
その他 | 最大迎角:30度
最大G:8G |
乗員 | 2名 |
参考リンク
この記事は、EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)とボーイング社のWebサイトの情報から作成しています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、ボーイング社や米国空軍の情報をご確認ください。
パイロットが学ぶこと:FAAパイロットハンドブック
「Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge」は、FAAが作成した操縦士向け教材です。
- FAA(FEDERAL AVIATION ADMINISTRATION)は、アメリカ連邦航空局のことです。
- 2024年1月現在、最新版は以下の2023年版です。
このFAAのパイロットハンドブックの2016年版ですが、国土交通省のWebサイトにはこの日本語仮訳が公開されています。
FAAパイロットハンドブックには、以下の内容を含め、小型航空機パイロットの航空機工学に関する知識やパイロットに不可欠な基本的知識などについまとめられています。
- パイロットに必要不可欠な基礎知識を提供するものである。
- パイロットとしての訓練が進むにつれて必要となる幅広い知識を紹介している。
- 民間航空に関連する連邦規則集を除き、パイロットの資格取得に適用される知識分野のほとんどを紹介している。
- 初心者のパイロットだけでなく、より高度なパイロットを目指すためにも役立つものである。
このFAAのパイロットガイドブックを読んでみて感じたことですが、航空機を操縦するパイロットには、操縦する航空機に関する以下のことを学び、しかも適切な判断・行動(操作)ができることが必要です。
パイロットではない私の想像ですが、
- 航空機に関する技術的な知識(トラブル対応を含む)
- 気象に関する一般的な知識と飛行する空域に関する知識
- 機体や気象に応じた適切な操作ができる判断力と操作技術
これらをベースに、
- 軍用機なら作戦行動ができる判断力と操作技術
が必要になります。これらの知識や技術には、様々な状況に応じて必要となる知識や操作技術にも基本的なレベルから応用や緊急対応などができるレベルの違いもあります。
さらに、パイロットになるためには、パイロット適性といわれる個人の持って生まれた資質のようなものも必要です。
パイロットになりたいだけでなく、航空機や航空機の操縦に興味を持った方は、FAAハンドブックが参考になるのではないでしょうか。
まとめ
T-7Aレッドホーク(Red Hawk)は、T-38Cタロンの後継機となる次世代の訓練機です。
F-22ラプターやF-35AライトニングIIなどのステルス機やF-15EXイーグルIIなどの最新戦闘機やB-1BランサーやB-2スピリットなどの爆撃機を操縦するパイロットも、はじめから実機の戦闘機を使っての操縦訓練をするわけではなく、最初はシミュレータや訓練機から訓練をはじめます。
ここでは、T-7Aレッドホークについて、米国空軍のWebサイトの情報を主に写真を使い以下の項目で説明しました。
- T-7Aレッドホークとは
- T-7Aレッドホークの主な特徴
- デジタル設計による最初の戦術航空機
- 写真で見るT-7Aレッドホーク
- 機体形状
- 離陸
- 着陸
- 試験機
- T-7Aレッドホークの歴史
- 2023年6月:初飛行
- 2023年9月:米国空軍に量産初号機納入
- 2023年11月:米国空軍の飛行試験開始
- 2024年11月:技術指令の第一段階試験完了
- 2025年1月現在の状況
- T-7Aレッドホークの諸元
- 参考リンク
- パイロットが学ぶこと:FAAパイロットハンドブック