艦載機F-35Bライトニングを運用するJMSDF「かが」の艦上運用試験

「かが」(JS Kaga DDH-184)のF-35BライトニングIIの運用試験 艦載機
出典:US NAVY(米国海軍)のWebサイトからの画像(加工しています)

2024年10月から11月にかけて、海上自衛隊の「かが」でのF-35BライトニングIIの運用試験が、米国海軍と海兵隊の協力により行われました。

F-35BライトニングIIに限りませんが、航空機を運用するためには、パイロットや機体のメンテナンス要員だけでなく、空港などの地上設備や要員の協力が不可欠です。

艦載機では、空母甲板や格納庫という限られた空間での運用となり、雨風などの天候に加え、海面や潮流などの海の状況も影響するため、パイロットはもちろんのこと空母に乗り込んでいる全員の協力が必要です。

ここでは、艦載機を空母で運用するための試験について、海上自衛隊の「かが」を例に写真で説明します。

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F-35BライトニングIIとは

2024年現在、実際に運用されている戦闘機のキャッチコピーをいくつかあげてみると、

最強の戦闘機といえば、F-15EXイーグルII

最強のステルス戦闘機といえば、F-22ラプター

戦闘機界のベストセラーといえば、F-16ファイティング・ファルコンです。

F-35ライトニングIIは、2024年現在の米国及び米国以外での採用状況をみていると、ステルス機のベストセラーとなりそうです。

F-35ライトニングIIシリーズは、空軍仕様の標準型のF-35A、海兵隊で使われるSTOVL(短距離離陸/垂直着陸)のステルス機F-35B、空母運用が可能なF-35Cの3機種があります。

比べてみよう:F-35ライトニングII、標準のA、STOVLのB、艦載機のC
F-35ライトニングIIには、標準型のF-35A、短距離離陸/垂直着陸可能なF-35B、空母艦載機F-35Cがあります。戦闘機として最も優れたF-35A、ステルス性などを共通化し用途に適した変更が加えられたF-35BとF-35Cについて、F-35Aを基準にその違いを説明します。

艦載機を運用するための訓練

航空機を運用するためには、パイロットや機体のメンテナンス要員だけでなく、空港などの地上設備や要員の協力が不可欠です。

艦載機では、空母甲板や格納庫という限られた空間での運用となり、雨風などの天候に加え、海面や潮流などの海の状況も影響するため、パイロットはもちろんのこと空母に乗り込んでいる全員の協力が必要です。

艦載機として運用されるF-35ライトニングIIは、海兵隊で使われるSTOVL(短距離離陸/垂直着陸)のステルス機F-35B、空母運用が可能なF-35Cの2機種です。

護衛艦「かが」(JS Kaga DDH-184)は、F-35BライトニングIIを運用するため、改造されました。

外観の大きな違いが飛行甲板です。

下図は、改造前の「かが」です。

  • 艦首側の甲板が台形になっています。
「かが」:改造前

201026-N-YQ181-1028 Japan Maritime Self-Defense Force (JMSDF) Izumo-class Helicopter Destroyer JS Kaga (DDH 184), front, and dry cargo and ammunition ship USNS Tippecanoe (T-AO 199) transition in formation during Keen Sword 21. Keen Sword is an example of the strength of the U.S.-Japan Alliance, the foundation of peace and security in the Indo-pacific region for 60 years. The relationships built and maintained during these events are critical to our shared capability to respond to contingencies at a moment’s notice. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Askia Collins)

図1-1 「かが」:改造前

引用先:US NAVY(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から(加工しています)

下図は、改造後「かが」の写真です。

  • 艦首側の甲板が方形(四角形)になっています。
「かが」:改造後

241025-M-TH104-1544 UNITED STATES 10.24.2024 Photo by Cpl. Daniel Childs 3rd Marine Aircraft Wing

図1-2 「かが」:改造後

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

下図は、「かが」のF-35BライトニングIIの艦上運用試験の写真です。

  • 左上は、「かが」から発艦する海兵隊のF-35BライトニングII
  • 右上は、夜間「かが」から発艦する海兵隊のF-35BライトニングII
  • 下図は、改造され甲板の船首(図左側)が、台形から角型に変わった「かが」
「かが」F-35BライトニングIIの艦上運用試験

「かが」F-35BライトニングIIの艦上運用試験

図1-3 「かが」F-35BライトニングIIの艦上運用試験

引用先:US NAVY(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から(加工しています)

2024年10月から11月にかけて、米国海軍と海兵隊の協力により行われた海上自衛隊の「かが」でのF-35BライトニングIIの運用試験について写真で説明します。

護衛艦「かが」のF-35B艦上運用試験

海上自衛隊の「かが」が、F-35BライトニングIIを運用できるように改造され、米国海軍と海兵隊の協力によりF-35BライトニングIIの艦上運用試験が行われました。

  • 目的:「かが」(いずも型護衛艦)でのF-35BライトニングIIの艦上運用に必要なデータ収集
  • 期間:2024年10月5日~11月18日
  • 主な試験内容:F-35BライトニングのSTOVL(短距離発艦、垂直着艦)と艦上運用

以下、米国海軍の写真を使って説明します。

昼間の着艦

「かが」に着艦するF-35BライトニングIIの写真です。

  • 写真のキャプションによると、2024年10月20日、航空自衛隊第23飛行隊(VX-23)のテストパイロットが搭乗するF-35BライトニングIIが、いずも型多機能護衛艦「かが」(DDH-184)への初着艦のため接近している時の写真です。
「かが」へのF-35BライトニングII着艦(その1)

241020-N-QA151-8660 UNITED STATES 10.20.2024 Photo by Cmdr. Darin Russell F-35 Lightning II Pax River ITF

図2 「かが」へのF-35BライトニングII着艦(その1)

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

下図は、着艦直前の写真です。

かが」へのF-35BライトニングII着艦(その2)

241020-N-QA151-9808 UNITED STATES 10.20.2024 Photo by Cmdr. Darin Russell F-35 Lightning II Pax River ITF

図2 「かが」へのF-35BライトニングII着艦(その2)

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

下図は、着艦した写真です。

「かが」へのF-35BライトニングII着艦(その3)

241020-N-QA151-8328 UNITED STATES 10.20.2024 Photo by Cmdr. Darin Russell F-35 Lightning II Pax River ITF

図2 「かが」へのF-35BライトニングII着艦(その3)

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

昼間の発艦

「かが」からF-35BライトニングIIが発艦する写真です。

甲板から機体が浮いています。

  • 停止状態から離陸可能なスピードに加速させて離陸します。
「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その1)

241021-O-ZB537-2379 UNITED STATES 10.21.2024 Photo by Dane Wiedmann F-35 Lightning II Pax River ITF

図3 「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その1)

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

下図は、甲板から離れる直前の写真です。

  • 水平尾翼が大きく下向きになっていることが分かります。
「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その2)

241021-O-ZB537-4099 UNITED STATES 10.21.2024 Photo by Dane Wiedmann F-35 Lightning II Pax River ITF

図3 「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その2)

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

下図は、艦から離れた直後の写真です。

「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その3)

241021-O-ZB537-1369 UNITED STATES 10.21.2024 Photo by Dane Wiedmann F-35 Lightning II Pax River ITF

図3 「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その3)

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

夜間の発艦

夜間、「かが」からF-35BライトニングIIが発艦する写真です。

下図は、発艦時の写真です。

夜間の「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その1)

241030-O-ZB537-9230 UNITED STATES 10.30.2024 Photo by Dane Wiedmann F-35 Lightning II Pax River ITF

図4 夜間の「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その1)

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

排気が水平後方ではなく、下無味になっていることが分かります。

夜間の「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その2)

241030-O-ZB537-7366 UNITED STATES 10.30.2024 Photo by Dane Wiedmann F-35 Lightning II Pax River ITF

図4 夜間の「かが」からのF-35BライトニングII発艦(その2)

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

夜間の着艦

夜間、「かが」にF-35BライトニングIIが垂直着陸する写真です。

夜間の「かが」へのF-35BライトニングII着艦

241031-O-ZB537-3815 UNITED STATES 10.30.2024 Photo by Dane Wiedmann F-35 Lightning II Pax River ITF

図5 夜間の「かが」へのF-35BライトニングII着艦

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

「かが」のハンガー(格納庫)

下図は、「かが」のハンガー内で整備中のF-35ライトニングIIです。

ハンガー内のF-35ライトニングIIは、エレベーターにより甲板との間を移動します。

「かが」のハンガーのF-35BライトニングII

241019-N-QA151-1054 UNITED STATES 10.18.2024 Photo by Darin Russell F-35 Lightning II Pax River ITF

図6 「かが」のハンガーのF-35BライトニングII

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

スタンプカードと折り鶴

最後に、以下にも日本らしい品物の写真です。

  • 「折り鶴」は、英語で「origami crane」ということをはじめて知りました。
  • 「stamped card」は、少々味気ない感じがします。
Stamped card and Origami crane

241027-N-NT193-4659 UNITED STATES 10.27.2024 Photo by Michael Land F-35 Lightning II Pax River ITF

図7 Stamped card and Origami crane

出典:DVIDS(米国防総省画像配信システム)F-22 RAPTOR DEMONSTRATION TEAMからの画像

洋上補給訓練

下図は、F-35BライトニングIIの艦上運用試験後に実施された、米国海軍の貨物弾薬補給艦との洋上補給訓練の写真です。

  • 下図左は、米国海軍の貨物弾薬補給艦Washington Chambers(T-AKE 11)です。
  • 下図では分かりにくいのですが、両艦の間にロープが渡されています。
「かが」:洋上補給訓練

160514-N-YG401-1184 The Lewis and Clark-class dry cargo ship USNS Washington Chambers (T-AKE 11), left, conducts a replenishment-at-sea with the Japan Maritime Self-Defense Force Izumo-class multi-functional destroyer JS Kaga (DDH 184) while underway in the Pacific Ocean, Nov 18, 2024. JS Kaga recently completed F-35 Lighting II aircraft developmental testing in the U.S. 3rd Fleet area of operations. An integral part of U.S. Pacific Fleet, U.S. 3rd Fleet not only leads naval forces in the Indo-pacific, but also provides the realistic, relevant training necessary to flawlessly execute our Navy’s role across the full spectrum of military operations-from combat operations to humanitarian assistance and disaster relief. U.S. Fleet works together with our allies and partners to advance freedom of navigation, the rule of law, and other principles that underpin security for the Indo-pacific region. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Andrew Benvie)

図8 「かが」:洋上補給訓練(その1)

引用先:US NAVY(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から

下図は、両艦の間の給油パイプとロープ部分を拡大した図です。

「かが」:洋上補給訓練(その2)

「かが」:洋上補給訓練(その2)

図8 「かが」:洋上補給訓練(その2)

引用先:US NAVY(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>から(加工しています)

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まとめ

2024年10月から11月にかけて米国海軍と海兵隊の協力により、海上自衛隊「かが」でのF-35BライトニングIIの艦上運用試験が実施されました。

航空機を運用するためには、パイロットや機体のメンテナンス要員だけでなく、空港などの地上設備や要員の協力が不可欠です。

艦載機では、空母甲板や格納庫という限られた空間での運用となり、雨風などの天候に加え、海面や潮流などの海の状況も影響するため、パイロットはもちろんのこと空母に乗り込んでいる全員の協力が必要です。

ここでは、艦載機を空母で運用するための試験について、海上自衛隊の「かが」の艦上運用試験を例に以下の項目で説明しました。

  • F-35BライトニングIIとは
    • 艦載機を運用するための訓練
  • 護衛艦「かが」のF-35B艦上運用試験
    • 昼間の着艦
    • 昼間の発艦
    • 夜間の発艦
    • 夜間の着艦
    • 「かが」のハンガー(格納庫)
    • スタンプカードと折り鶴
    • 洋上補給訓練
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