航空機の耐候性試験についてT-7Aレッドホークを例に説明しました。
ここでは、最強のステルス戦闘機F-22ラプターの耐候性試験について説明します。
ステルス機でも対候性試験が必要な理由
ステルス機でも対候性試験が必要な理由は、いかなる飛行環境においても機体やアビオニクスが正常に作動するかどうか確認する必要があるからです。
地上は雨でも、雲を抜ければ晴天ですが、高度が高くなれば気温は下がります。
地上では、雨、風、雪の場合もありますし、雲の種類も様々です。
下図は、雪の残る空軍基地内を移動する最強のステルス戦闘機F-22ラプターの写真です。
- 駐機場から滑走路までの移動路が除雪されています。
- 除雪がされていなくても離陸や着陸をしなければならない場面もあると思われます。

221220-F-XK019-1093 Wolf Pack supports Raptors for IRON SHADOW An F-22 Raptor assigned to the 525th Fighter Squadron at Joint Base Elmendorf-Richardson, Alaska, traverses the flightline at Kunsan Air Base, Republic of Korea, Dec. 20, 2022. The 525th FS F-22s departed Kadena Air Base, Japan, to participate in the training exercise IRON SHADOW alongside ROK Air Force F-16 Fighting Falcons. IRON SHADOW is designed to strengthen fourth and fifth generation aircraft interoperability and showcase the two nations’ ironclad commitment to a free and open Indo-Pacific. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Isaiah J. Soliz)
図1-1 F-22ラプター:除雪した飛行場
出典:KUNSAN AIR BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
地上では、下図のような暴風雪の中に駐機せざるえない場合もあります。

100217-F-0000X-003 633 CES battles snowstorm, keeps missions underway LANGLEY AIR FORCE BASE, Va. ? A F-22 Raptor from the 94th Fighter Squadron sits on the flight line during a snow storm Jan. 30. 633d Civil Engineer Squadron crews cleared the airfield within 24 hours after the storm, ensuring continuation of critical homeland security and humanitarian missions. (U.S. Air Force photo/Col. Matt Molloy)
図1-2 F-22ラプター:暴風雪
出典:JOINT BASE LANGLEY-EUSTIS(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-22ラプターの詳細は、以下の記事をご参照ください。
F-22ラプターの耐候性試験
耐候性試験とは、低温から高温までの気象条件を再現した試験室の中で、試験対象の実機に異状なことが発生しないか、あるいは、本来の機能が正常に発揮されるかなどを確認する試験です。
試験対象の試験環境を変えるためか環境試験と呼ばれることもあります。
下図は、EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)にある、マッキンリー気候研究所(McKinley Climactic Laboratory)で行ったF-22ラプターの耐候性試験の写真です。
- 増槽を装備しているのでステルス性の試験ではなさそうですが、飛行環境によるステルス性への影響もあるのではないかと思います。

022808-F-0000P-001 F-22 in McKinley Climatic Laboratory
図2 耐候性試験:F-22ラプター
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
航空機の耐候性試験とは
航空機には、低温から高温、高湿度などの極端な環境においても、正常な飛行ができることを求められます。
正常な飛行をするまえに、機体や計器類、搭載している電子機器などが、極端な気温や湿度において、どの様な挙動を示すか(極端な気温や湿度に対し、どんな風に耐えたか)を確認する必要があります。
耐候性試験は、航空機が実際に飛行する前に、実際の環境(極端な高温から低温や高湿度)での環境下でどの様な挙動を示すかを評価するために行います。
実際の試験も一発勝負となりますので大変ですが、様々な条件を実現する準備作業も大変です。
マッキンリー気候研究所とは
マッキンリー気候研究所(McKinley Climactic Laboratory)は、フロリダ州にあるEGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)にあります。
最初の試験が1947年5月に行われ、2022年に75周年を迎えています。
- McKinley Climatic Laboratory celebrates 75th anniversary
マッキンリー気候研究所では、次のような様々な環境条件を再現できます。
- 砂漠や極寒
- 極端な高温および低温
- 砂、塵、風、雨、雪、塩霧、日射、雨氷、氷結、高地
- 急速な減圧
- 高湿度
下図は、マッキンリー気候研究所のメインチャンバー内で、試験準備のためスノーマシンで人工的に雪を作っている写真です。

220526-F-F3405-1009 McKinley Climatic Laboratory celebrates 75th anniversary Team members at the McKinley Climatic Laboratory at Eglin Air Force Base, Florida, use machines to create snow in the MCL Main Chamber to prepare for environmental testing. Those at the MCL recently celebrated the 75th anniversary of the facility. The first tests at the MCL occurred in May 1947. The MCL is operated by the 717th Test Squadron, 804th Test Group, Arnold Engineering Development Complex. (U.S. Air Force photo by William Higdon)
図1 スノーマシンによる雪づくり
出典:AIR FORCE MATERIAL COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)の以下の記事
まとめ
航空機の耐候性試験についてT-7Aレッドホークを例に説明しました。
ここでは、最強のステルス戦闘機F-22ラプターを例に、耐候性試験が必要な理由と雪の中の運用されるF-22ラプターについて、以下の項目で説明しました。