A-29スーパーツカノ(Super Tucano)は、EMBRAER社製のローコストの単発のプロペラ機です。軽攻撃機、武装偵察機、及び、訓練機の3タイプがあります。
2024年10月、米国空軍の試験や訓練機としてA-29スーパーツカノが、米国空軍のテストパイロットスクール(The Air Force Test Pilot School)に移管されました。
T-38タロンやF-16ファイティング・ファルコンを使ってきた様々な訓練や試験の一部に、A-29スーパーツカノを使うことで、開発に必要な試験や訓練能力を向上させることができます。
ここでは、A-29スーパーツカノについて、米国空軍やEMBRAER社のWebサイトの情報を使い説明します。
- なお、移管された3機は複座型ですが、参考にした記事ではA-29となっていたため、A-29としています。
A-29スーパーツカノとは
A-29スーパーツカノ(Super Tucano)は、EMBRAER社製のローコストの単発プロペラ機で、次の3タイプがあります。
- 軽攻撃機(LIGHT ATTACK AIRCRAFT)
- 武装偵察機(ARMED RECONNAISSANCE)
- 訓練機(TACTICAL TRAINER)
多用途に対応した単一プラットフォームであるため、訓練や航空機による様々な試験にも対応することができます。
下図は、A-29スーパーツカノです。

A-29 Super Tucano joins Air Force Test Pilot School fleet An A-29 Super Tucano conducts a ferry flight to Edwards Air Force Base, California, July 18, it they will join a unique fleet at the U.S. Air Force Test Pilot School. (Air Force photo by Richard Gonzales)
図1 A-29スーパーツカノ(Super Tucano)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
A-29スーパーツカノは、これまでの実績が示す信頼性、費用対効果(コストパフォーマンス)に優れた単一のプラットフォームであり、ジェット機が主流となっている現在でも、様々な国で運用されています。
A-29スーパーツカノの主な特徴
A-29スーパーツカノの特徴を列挙します。
次のような最新のアビオニクスを搭載できる、マルチミッションに対応可能な機体です。
- 正確な照準識別(accurate targeting identification)
- ウェポン・システム(weapons systems)
- 包括的な通信システム(comprehensive communication suite)
未舗装の滑走路でも運用可能な頑丈な機体に、最新のアビオニクスを組み合わせているだけでなく、シンプルな整備性を備えることで、高い信頼性を実現しています。
軽攻撃機としての特徴
軽攻撃機(LIGHT ATTACK AIRCRAFT)として、攻撃目標を発見(識別)し、目標を指定、攻撃することができます。
- 主な用途は、近接航空支援、前方地域の航空管制、航空阻止、特殊作戦、航空警護などです。
武装偵察機として
武装偵察機(ARMED RECONNAISSANCE)として、高精度のセンサーと機銃(internal machine guns)を搭載しています。
- 最新の電子光学センサーにより、昼夜を問わず、低高度から高高度からの撮影ができます。
- 偵察中の自己防衛などには、機銃で対応することができます。
一般的な訓練機として
訓練機(TACTICAL TRAINER)として、パイロットの基本訓練から作戦を想定した訓練にも対応できます。
軽攻撃や航空偵察の訓練において、シミュレーターとの連携も考慮されコストパフォーマンスに優れた訓練環境(ソリューション)を提供できます。
米国空軍の訓練機、試験機として
米国空軍の訓練機、試験機として次のような特長があります。
- 機体のスピンテスト(spin testing)に適している。
- 主翼パイロンに様々な機器を搭載(吊り下げ)できる。
- 最新のアビオニクスを搭載できる。
これらの特長により、以下の効果が見込まれています。
- 様々なセンサーや武器に関する訓練や研究ができる。
- T-38タロンやF-16ファイティング・ファルコンへの依存を軽減できる。
- 開発試験を進める能力を高めることができる。
A-29スーパーツカノによる訓練には次のようなものがあります。
- パイロットにとって重要なスキルセットである失速とスピンの訓練
- レーザー誘導弾やロケット弾のセンサー、ウェポンシステムなどを含むミッションシステムを使う訓練
その他、高度なデータ収集やウェポン・ステーションを使った訓練についても準備が進められています。
写真で見るA-29スーパーツカノ
A-29スーパーツカノを、USAF(米国空軍)のWebサイトの写真を使い説明します。
機体形状
下図は、移管された3機が飛行中の写真です。
- 複座であることが分かります。
- 機体上部と下部にアンテナやセンサーの様なものを確認できます。

A-29 Super Tucano joins Air Force Test Pilot School fleet Three A-29 Super Tucanos conduct a ferry flight to Edwards Air Force Base, California, Aug. 18., where they will join a unique fleet at the U.S. Air Force Test Pilot School. (Air Force photo by Richard Gonzales)
図2-1 A-29スーパーツカノ:横方向から
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、正面からの写真です
- 5枚羽根のプロペラ機です。
- ジェット機のような空気取入口がなく、胴体が細長いことが分かります。

A-29 Super Tucano joins Air Force Test Pilot School fleet An A-29 Super Tucano arrives at Edwards Air Force Base, California, July 18, where it will join a unique fleet at the U.S. Air Force Test Pilot School. (Air Force photo by Lindsey Iniguez)
図2-2 A-29スーパーツカノ:正面から
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、前方からの写真です
- 機体の形状が分かります。
- 左右の主翼下にある計4基のパイロンを確認できます。
図2-3 A-29スーパーツカノ:前方から
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
駐機中
駐機中の3機の写真です。
- 見かけはクラシックですが、中身は最新のアビオニクスを備えています。

A-29 Super Tucano joins Air Force Test Pilot School fleet Three A-29 Super Tucanos prepare for a ferry flight to Edwards Air Force Base, California, July 18, where they will join a unique fleet at the U.S. Air Force Test Pilot School. (Air Force photo by Richard Gonzales)
図3 A-29スーパーツカノ:駐機(その1)
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

A-29 Super Tucano joins Air Force Test Pilot School fleet Three A-29 Super Tucanos arrive at Edwards Air Force Base, California, July 18, where they will join a unique fleet at the U.S. Air Force Test Pilot School. (Air Force photo by Lindsey Iniguez)
図3 A-29スーパーツカノ:駐機(その2)
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
訓練飛行
2025年7月現在、米国空軍のテストパイロットスクールでは、カリキュラムに正式に組み込まれはじめています。
下図は、2025年7月に公開された訓練中のA-29スーパーツカノの写真です。

250624-F-PJ086-1033 Instructors at Air Force Test Pilot School depart Edwards Air Force Base in California during an A-29C training flight. The A-29C Super Tucano fleet has begun formal integration into school’s curriculum. This new aircraft provides students with a modern platform for instruction in aerial spins, sensors and mission systems training, while also giving the school an additional aircraft type for data collection during research projects. (Air Force photo by James West)
図4 A-29スーパーツカノ:訓練
出典:EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
A-29スーパーツカノの歴史
A-29スーパーツカノの歴史について調べてみましたが、次のこと以外分かりませんでした。
- 16の空軍によって運用されている。
- 飛行時間は、550,000時間以上
- 260機以上の受注実績
2024年10月:テストパイロットスクールに移管
米国空軍の試験や訓練機としてA-29スーパーツカノが、米国空軍のテストパイロットスクール(The Air Force Test Pilot School)に移管されました
- 移管された3機は、Air Force Special Operations Command(米国空軍)から移管されています。
- テストパイロットスクールに到着した3機は、その後6か月間の大規模なメンテナンスが行われました。このメンテナンスにより、教官は期待を徹底的に研究し、訓練計画に反映させています。
また、テストパイロット学校の教官は、正式な飛行訓練なしにEDWARDS AIR FORCE BASEまで飛行するため、様々な準備を行い臨んでいます。
- Tucano Tales: A-29C operations formally begin at the USAF Test Pilot School
A-29スーパーツカノの諸元
EMBRAER社のWebサイトの情報からA-29スーパーツカノ(Super Tucano)の主要諸元を下表に示します。
全長 | 11.38 m |
---|---|
全高 | 3.97 m |
全幅 | 11.14 m |
エンジン |
|
重量 | 3,200 kg |
速度 | 280 km/h(最高速度:320 km/h) |
高度 | 10,668 m |
最大離陸重量 | 5,400 kg |
航続距離 | 2,870 km(外部燃料タンク3本使用) |
武装 | 機銃2基 |
乗員 | 2名 |
参考リンク
この記事は、以下のWebサイトとEMBRAER社のWebサイトの情報を参考にしてまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報とEMBRAER社のWebサイトをご参照ください。
- EDWARDS AIR FORCE BASE(米国空軍)のA-39の記事
まとめ
A-29スーパーツカノ(Super Tucano)は、EMBRAER社製のローコストの単発のプロペラ機です。
2024年10月、米国空軍の試験や訓練機としてA-29スーパーツカノが、米国空軍のテストパイロットスクール(The Air Force Test Pilot School)に移管されました。
A-29スーパーツカノについて、米国空軍やEMBRAER社のWebサイトの情報を使い以下の項目で説明しました。
- A-29スーパーツカノとは
- A-29スーパーツカノの主な特徴
- 軽攻撃機としての特徴
- 武装偵察機として
- 一般的な訓練機として
- 米国空軍の訓練機、試験機として
- 写真で見るA-29スーパーツカノ
- 機体形状
- 駐機中
- 訓練飛行
- A-29スーパーツカノの歴史
- A-29スーパーツカノの諸元
- 参考リンク