KC-135ストラトタンカー(Stratotanker)は、空中給油機です。
戦域での航空支配という新しい戦い方を実現したのが最新鋭のステルス戦闘機F-22ラプターならば、燃料補給という兵站面での軍用機の運用を変えたのが空中給油機KC-135ストラトタンカーです。
空中給油機の登場は、軍用機の運用にも良い意味での大きな影響を与えることになりました。
ここでは、主に米国空軍のWebサイトの情報からKC-135ストラトタンカー(Stratotanker)についてまとめています。
軍用機運用を変えた空中給油機KC-135ストラトタンカーとは
戦域での航空支配という新しい戦い方を実現したのが、ステルス戦闘機F-22ラプターです。
空中給油機KC-135ストラトタンカーは、戦闘機を含む軍用機の運用、作戦行動を変えたと言われています。
例えば、航空機の燃料消費量が最も多いのが離陸時です。
空中給油機を利用することで、
- 離陸時には燃料満タンにせず素早く離陸し、空中給油で燃料を満タンにして作戦行動に移る。
- 作戦行動中に、燃料補給のために基地まで戻ることなく、空中給油で燃料を補給する。
ことが可能になりました。
さらに、
- 滑走路の制約により離陸距離を十分に取れない様な場合に、武装を減らすことなく燃料を減らして離陸し、空中給油で燃料を満タンにする。
- 艦載機の場合、着艦せずに空中給油で燃料を補給することで、パイロットの負担を軽くできる。
といったメリットがあります。
下図は、F-22ラプターに空中急をしているKC-135ストラトタンカーです。
Fueled for the fight A KC-135 Stratotanker assigned to the 168th Air Refueling Wing refuels F-22 Raptors from the 3rd Wing alongside F-15 Eagles from the 144th Fighter Wing over the Joint Pacific Alaska Range Complex, Alaska, April 18, 2022. The aircraft trained together as part of Alaska Dissimilar Aircraft Combat Training. (U.S. Air National Guard photo by Master Sgt. Charles Vaughn)
図1 KC-135ストラトタンカー(Stratotanker)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
KC-135ストラトタンカーの主な特徴
KC-135ストラトタンカーは、半世紀以上、米国空軍だけでなく、海軍、海兵隊及び同盟国の様々な航空機に空中給油によるサポートをしています。
- 4基のターボファンエンジンを搭載
- 給油システム上部に貨物デッキがあり、人員と貨物の混載可能
空中給油以外にも、以下の運用に対応しています。
- 航空医療搬送
- 人員と貨物の混載(給油システム上部の貨物デッキ)
空中給油システム
KC-135ストラトタンカーは、フライングブームにより給油を行います。
給油の操作は、ブーム・オペレーターが、機体後部の操作室(部屋と言うほど広くはないようです。)で、フライングブームを操作します。
- フライングブーム以外の給油方法として、シャトル型の特殊なドローグを使い、プローブを装着した航空機に給油することもできます。
- 翼端に特殊なポッドを取り付けたマルチポイント給油システムを装備した機体もあり、2機同時に給油可能です。
写真で見るKC-135ストラトタンカー
KC-135ストラトタンカーをUSAF(米国空軍)のWebサイトの写真を使い説明します。
機体形状
下図は、機体上方からの写真です。
- 旅客機に似た形状の機体で、4基のエンジンを主翼下に搭載したオーソドックスな設計です。
- 機体後方に飛び出ているのは、空中給油システムのフライングブームです。
KC-135 soars over CENTCOM AOR A U.S. Air Force KC-135 Stratotanker aircraft, assigned to the 350th Expeditionary Aircraft Refueling Squadron, flies over Qatar, Feb. 13, 2021. The KC-135 delivers U.S. Air Forces Central Command a global reach aerial refueling capability to support joint and coalition aircraft throughout the U.S. Central Command area of responsibility. (U.S. Air Force photo by Master Sgt. Joey Swafford)
図2-1 KC-135ストラトタンカー:上から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、前方正面からの写真です。
U.S. Air Force 92nd Maintenance Group Airmen prepare a KC-135 Stratotanker from the 916th Air Refueling Wing, Seymour Johnson Air Force Base, North Carolina, for aircrew to disembark, at Fairchild Air Force Base, Washington, Oct. 16, 2019. Team Fairchild received the first of 12 additional KC-135s to join the base fleet; the remaining aircraft are scheduled to arrive by the end of February 2020. (U.S. Air Force photo by Airman Kiaundra Miller)
図2-2 KC-135ストラトタンカー:前から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、横からの写真です。
A KC-135 Stratotanker takes off from the flightline at Al Udeid Air Base, Qatar, Feb. 18, 2015. The KC-135 fleet at Al Udeid AB flew more than 14,700 sorties in 2015 accumulating 103,419 combat hours in support of Operations Inherent Resolve and Freedom’s Sentinel. (U.S. Air Force photo/Senior Airman Kia Atkins)
図2-3 KC-135ストラトタンカー:横から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、機体下方からの写真です。
意外にスマートな機体だと思います。
60th Anniversary of the KC-135: Age is just a number A KC-135 Stratotanker from the New Jersey Air National Guard’s 108th Wing flies over Joint Base McGuire-Dix-Lakehurst, N.J., Aug. 31, 2016. The KC-135 celebrated its 60th anniversary, having made its first flight on Aug. 31, 1956. (U.S. Air National Guard photo/Tech. Sgt. Matt Hecht)
図2-4 KC-135ストラトタンカー:下から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
離陸
下図は、離陸時の写真です。
Airmen prepare KC-135 A KC-135 Stratotanker takes off April 14, 2011, from Selfridge Air National Guard Base, Mich. (U.S. Air Force photo/John S. Swanson)
図3 KC-135ストラトタンカー:離陸
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
着陸
下図は、着陸時の写真です。
KC-135 Stratotanker practices landings A KC-135 Stratotanker descends before landing at McConnell Air Force Base, Kan., Jan. 18, 2018. Air Mobility Command’s tanker fleet, which is primarily made up of KC-135s, offloaded 1.18 billion pounds of fuel to U.S. and allied aircraft in 2017. (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Erin McClellan)
図4 KC-135ストラトタンカー:着陸
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
空中給油におけるフライングブームの操作
下図は、フライングブームが延ばしているKC-135ストラトタンカーの写真です。
空中給油で燃料を送る側と受け取る側、双方がお互いの位置関係を空中で維持しているわけで、見かけ以上の熟練の技のようです。
Last tanker leaves Grand Forks The final KC-135 Stratotanker formerly stationed at Grand Forks Air Force Base, N.D., performs a low approach, with its boom fully extended, in one last salute to the men and women of Grand Forks AFB, after taking off from the base Dec. 4, 2010, for the final time. The departure of this aircraft signaled the end of the KC-135 air refueling mission at Grand Forks AFB. (U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Johnny Saldivar)
図5-1 KC-135ストラトタンカー:フライングブーム
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、KC-135ストラトタンカーからA-10サンダーボルトIIへの空中給油のため、ブーム・オペレーターがフライングブームを操作している写真です。
- 小さな窓から、パイロットと連絡を取りながら左手でジョイスティック?の様なレバーでフライングブームの操作をしています。
Soaring over Arizona Master Sgt. Vincent Jones, a KC-135 Stratotanker boom operator with the Arizona Air National Guard’s 161st Air Refueling Wing based in Phoenix, refuels an A-10 Thunderbolt II April 29 from the 355th Fighter Wing at Davis Monthan Air Force Base, Ariz. (U.S. Air Force photo/Senior Airman Alesia Goosic)
図5-2 KC-135ストラトタンカー:ブーム・オペレーター
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
空中給油いろいろ
KC-135ストラトタンカーは、様々な機体への空中給油が可能です。
ここでは、以下の戦闘機への空中給油を写真で紹介します。
- F-22ラプター
- F-15Eストライクイーグル
- F-35AライトニングII
- B-1Bランサー
- B-2スピリット
- F/A-18スーパーホーネット
下図は、F-22ラプターへの空中給油です。
- F-22ラプターの空中給油口は、機体中央部にあります。
F-22 refuels with synthetic fuel An F-22 Raptor from Edwards Air Force Base, Calif., receives synthetic fuel from a KC-135 Stratotanker Aug. 28 during an aerial refueling test using an alternative jet engine fuel. The KC-135 Stratotanker is from March Air Reserve Base, Calif. (Lockheed Martin photo)
図6-1 KC-135ストラトタンカー:F-22への空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、F-15Eストライクイーグルへの空中給油です。
- F-15Eストラークイーグルの空中給油口は、下図の部分です。
Eglin Air Force Base key to Emerald Flag success A 96th Test Wing F-15E Strike Eagle prepares for in-flight refueling from a 155th Air Refueling Wing KC-135 Stratotanker during exercise Emerald Flag over the Gulf of Mexico, Dec. 3, 2020. More than 25 agencies participated in the exercise at Eglin Air Force Base, Fla. The exercise incorporated ground, space, cyberspace and air platforms for joint test and experimentation. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Joshua Hoskins)
図6-2 KC-135ストラトタンカー:F-15Eへの空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、F-35AライトニングIIへの空中給油です。
- F-35AライトニングIIの空中給油口は、F-22ラプター同様機体中央部にあります。
Lightning from above A U.S. Air Force F-35A Lightning II assigned to the 355th Fighter Squadron receives fuel from a KC-135 Stratotanker assigned to the 909th Air Refueling Squadron during a bilateral air exercise with Japan Air Self-Defense Force fighters over the Pacific Ocean, April 14, 2023. Bilateral operations exemplify the U.S. and Japan alliance’s ability to quickly and decisively respond to threats within the Indo-Pacific region. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Jessi Roth)
図6-3 KC-135ストラトタンカー:F-35AライトニングIIへの空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、B-1Bランサーへの空中給油です。
- B-1Bランサーの空中給油口は、コクピット前方の機首にあります。
140923-F-YQ276-364 A KC-135 Stratotanker from Fairchild Air Force Base refuels a B-1B Lancer during a training exercise Sept. 23, 2014, over South Dakota. For more than 50 years the KC-135 has provided the core aerial refueling capability for the Air Force. The aircraft can travel up to 1,500 miles with 150,000 pounds of transfer fuel, which enables the Air Force to project rapid, flexible military power. The B-1B is assigned to Ellsworth Air Force Base, South Dakota. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Mary O’Dell)
図6-4 KC-135ストラトタンカー:B-1Bランサーへの空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、B-2スピリットへの空中給油です。
- B-2スピリットの空中給油口は、機体中央にあります。
Deter and Assure; 100th ARW increases bomber’s global reach A KC-135 Stratotanker assigned to the 100th Air Refueling Wing Royal Air Force Mildenhall, England, prepares to transfer fuel to a B-2 Spirit from Whiteman Air Force Base, Mo., off the coast of Spain, June 13, 2017. Two B-2s deployed to the U.K. to participate in theater bomber assurance and deterrence operations. Bomber deployments enhance the readiness and training necessary to respond to any contingency or challenge across the globe. (U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Micaiah Anthony)
図6-5 KC-135ストラトタンカー:B-2スピリットへの空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、F/A-18スーパーホーネットへの空中給油です。
- KC-135ストラトタンカーのシャトル型の特殊なドローグから、F/A-18スーパーホーネット機首右側のプローブに給油します。
180615-F-ZU607-0119 A KC-135 Stratotanker refuels a Navy F/A-18E Super Hornet over Iraq June 15, 2018. (U.S. Air Force Photo by Staff Sgt. Corey Hook)
図6-5 KC-135ストラトタンカー:F/A-18スーパーホーネットへの空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
KC-135ストラトタンカーの歴史
KC-135ストラトタンカーの歴史について説明します。
ボーイング社の367-80型が、KC-135Aストラトタンカーの基本設計に使われました。
米国空軍への導入状況
- 1954年:米国空軍、29機購入
- 1956年8月:初飛行
- 1957年6月:最初の量産機であるストラトタンカー納入
- 1965年:最後のKC-135が米国空軍に納入
KC-135ストラトタンカーの改修
KC-135ストラトタンカーには幾つかの機種があります。
- KC-135Aは、417機以上が、新型CFM-56エンジンに改修されました。
- KC-135R/135Tは、KC-135Aよりも燃料搭載量が50%増加、燃料効率25%向上、運用コスト25%低減、静粛性96%向上しています。その後、能力と信頼性向上のためアップグレードが続けられています。
- KC-135Eは、TF33-PW-102エンジンを搭載、2009年退役しました。
- RC-135は、特殊偵察用途に使用されました。
- OC-135は、観測プラットフォーム(オープンスカイ条約準拠)として運用されました。
KC-135ストラトタンカーの諸元
米国空軍のWebサイトの情報から主要諸元を下表に示します。
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- USAF(米国空軍)のKC-135ストラトタンカー(Stratotanker)の紹介ページ
まとめ
KC-135ストラトタンカー(Stratotanker)は、空中給油機です。
空中給油機の登場により、軍用機の運用にも良い意味での大きな影響を与えることになりました。
燃料補給という兵站面での軍用機の運用を変えたのが空中給油機KC-135ストラトタンカーです。
ここでは、主に米国空軍のWebサイトの情報からKC-135ストラトタンカーについて、以下の項目で説明しました。
- 軍用機運用を変えた空中給油機KC-135ストラトタンカーとは
- KC-135ストラトタンカーの主な特徴
- 空中給油システム
- 写真で見るKC-135ストラトタンカー
- 機体形状
- 離陸
- 着陸
- 空中給油におけるフライングブームの操作
- 空中給油いろいろ
- KC-135ストラトタンカーの歴史
- 米国空軍への導入状況
- KC-135ストラトタンカーの改修
- KC-135ストラトタンカーの諸元
- 参考リンク