航空機の開発は、大きく機体とエンジンとに分かれ、別のメーカーにより開発されることが多いようです。
さて、最強の戦闘機は、F-22ラプターかF-15EXイーグルIIなのかは、以下の記事にまとめていますが、ステルス性など求められる要素(要求や仕様)が違いますので、単純に比較するのは難しいです。
ここでは、F-22ラプターとF-15ストライクイーグルに搭載されているエンジンに注目して比べます。
エンジン試験の写真で外観を比べる
下図は、F-22ラプターとF-15ストライクイーグルのエンジン試験の写真です。
- 下図左側が、F-22ラプターのF119-PW-100です。
- 下図右側が、F-15イーグルのF110-GE-129です。
並べて見ると排気ノズルの形状の違いがよく分かります。
- 下図左側のF-22のエンジン排気ノズルは、上下方向に可動する2次元スラスト・ベクトル・ノズルです。
- 下図右側のF-15のエンジン排気ノズルは、オーソドックスな形状で排気口を開いたり閉じる(絞る)形状となっています。
図1 F-22ラプターとF-15ストライクイーグルのエンジン試験
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
上図のエンジン試験について簡単に説明します。
下図は、F-22ラプターのF119-PW-100のアフターバーナーを使用した試験時の写真です。
- エンジンは、エンジン試験架台にがっちりと固定されます。
- 下図左側のトンネルに推力となる排気ガスが吸い込まれていきます。
- 自動車のマフラーに相当するものはありませんので、この試験室内の騒音レベルはまさに爆音なのでしょう。
図2-1 エンジン試験:F-22ラプターのF119-PW-100
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
下図は、F-15イーグルのF110-GE-129のアフターバーナーを使用した試験時の写真です。
- 上図のF-22のF119-PW-100と同様、頑丈そうな架台に設置されています。
- 推力試験では、架台ごと持っていかれないように架台そのものも試験室の床に固定されます。
図2-2 エンジン試験:F-15イーグルのF110-GE-129
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
ジェットエンジンの試験とは
ジェットエンジンの試験室、音速を超えるエンジン出力を試せる試験室になりますので、試験施設も大掛かりです。
ジェットエンジンの試験は、研究開発で使われるだけではありません。
メンテナンス後の性能確認や、一定時間使用したエンジンに不具合がないかなどの調査などでも試験が必要です。
基地の様に多数のジェットエンジンを運用している場合には、メンテナンス施設と共にエンジン試験室も整備されています。
車でも乗用車とF-1などのレーシングカーでは、騒音のレベルが全く違います。戦闘機もなかなかの騒音ですが、エンジン試験では音速超えのフルパワーでは、どれほどの音と熱が出てくるのでしょうか。
F-22ラプターとF-15イーグルのエンジンを比べる
F-22ラプターのF119-PW-100エンジンとF-15EXイーグルIIにも搭載されているF110-GE-129エンジンを比べます。
F-22ラプターのF119-PW-100エンジンの特徴
P&W(Pratt & Whitney)製F119-PW-100は、F-22ラプターのエンジンです。
P&W(Pratt & Whitney)のWebサイト情報によると、次のような特長があります。
- ステルス技術に加え、高推力エンジンと2次元スラスト・ベクトル・ノズルにより高い機動性と生存性を実現しており、短距離離陸も可能にしています。
- 最高速度では仕様こそF-15に劣るものの、アフターバーナーなしでの超音速飛行可能なスーパークルーズを実現しています。
ステルス性と機動性を兼ね備えた2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、上下±20度の範囲があり、F-22ラプターの飛行制御システムと統合されており、自動的に制御されます。
F-22ラプターの詳細は、以下の記事をご参照ください。
下図は、F-22ラプターのエンジン試験の写真です。
- 最大出力での試験です。
- 風洞入り口のパイプで、騒音を吸収しています。
図3 F-22ラプターのF119-PW-100エンジン試験(その1)
出典:JOINT BASE LANGLEY-EUSTIS(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズルの詳細は、以下の記事をご参照ください。
F-15イーグルのF110-GE-129エンジンの特徴
ゼネラル・エレクトリック製F110-GE-129は、F-15EXイーグルIIにも使われているF-15のエンジンです。
最近作られたF-15イーグルにも採用されており、フライ・バイ・ワイヤが完全に統合されているなど、F-15EXイーグルIIで採用する際にもリスクの低い信頼性のエンジンです。
ゼネラル・エレクトリック(GE:General Electric Aerospace)社のWebサイト情報によると、F110-GE-129が採用されている主な機体は、F-15イーグルシリーズ、F-16ファイティング・ファルコン、F-2支援戦闘機です。
各機体の詳細は、以下の記事をご参照ください。
下図は、F-15のエンジン試験の写真です。
- アフターバーナー全開の状態です。
- エンジン試験は、飛行中と同じ様な条件で行われます。
図4 F-15イーグルのF110-GE-129エンジン試験(その1)
出典:KADENA AIR BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
下図は、エンジンの排気ノズルを絞った状態の写真です。
- 排気ノズルを絞ることで機体の推進力を上げることができます。
- アフターバーナーは、離陸時や急上昇や急旋回を行う場合に一時的に使われます。
図4 F-15イーグルのF110-GE-129エンジン試験(その2)
出典:KADENA AIR BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
エンジン仕様
F-22ラプターのF119-PW-100エンジンとF-15EXイーグルIIにも搭載されているF110-GE-129エンジン諸元を比べたいところですが、公表されている推力(Thrust class)を比べてみると、エンジン1基当たり、
- F-22ラプターのF119-PW-100:15,876 kg
- F-15のF110-GE-129:13,154 kg
であり、F-22ラプターのエンジンの方が約20%推力が大きい。
最大離陸重量を比べると、
- F-22の最大離陸重量:38,000 kg
- F-15Eの最大離陸重量:36,450 kg
となり、F-22ラプターの方が、約4%、約1,500kg大きい。
パワーウェイトレシオを次式としてみると、
(パワーウェイトレシオ)=(重量)/(エンジン推力)
- F-22:約0.62(=19,700/(15,876×2基))
- F-15:約0.65(=17,010/(13,154×2基))
となります。
パワーウェイトレシオをの重量を最大離陸重量としてみると、
(パワーウェイトレシオ)=(最大離陸重量)/(エンジン推力)
- F-22:約1.20(=38,000/(15,876×2基))
- F-15:約1.39(=36,450/(13,154×2基))
となります。
数値での単純比較が難しいため、用途や状況で比べようとしても、
- 高高度気球をサイドワインダーで破壊するミッションでは、F-22ラプターが採用されました。
- ステルス性ではF-22ラプターの圧勝です。
といったように、なかなか難しいと思います。
最強や最高速については、以下の記事をご参照ください。
まとめ
航空機の開発は、大きく機体とエンジンとに分かれ、別のメーカーにより開発されることが多いようです。
F-22ラプターはステルス機、F-15EXイーグルIIは第4.5世代の戦闘機で、求められる要求や仕様がそもそも違います、単純に比較するのは難しいと考えています。
ここでは、F-22ラプターとF-15ストライクイーグルに搭載されているエンジンについて、以下の項目で説明しました。
- エンジン試験の写真で外観を比べる
- ジェットエンジンの試験とは
- F-22ラプターとF-15イーグルのエンジンを比べる
- F-22ラプターのF119-PW-100エンジンの特徴
- F-15イーグルのF110-GE-129エンジンの特徴
- エンジン仕様