第5世代のステルス機と共に行動できる第4.5世代機ともいわれるのがF-15EXイーグルIIです。
F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとは、どこが違うのか、何が違うのか。外観を見ただけでは、F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとの違いは、ほとんど分かりません。
しかし、中身を比べてみると、F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとは、まるで別物、むしろF-22ラプターやF-35AライトニングIIに近いといってよいほどです。
ここでは、F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとの違いについて説明します。
基本性能の違い
F-15EXイーグルIIは、第5世代のステルス機と共に行動する第4.5世代機ともいわれますが、外観を見ただけでは、F-15EストライクイーグルなどのF-15シリーズとの違いが分かりません。
下図は、F-15EXイーグルIIの試作2号機の写真です。
- 飛行中ですが、コクピット後方のエアブレーキが開いています。(作動テストなのか減速のためなのかは分かりません。)
図1 F-15EXイーグルII
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとの違いを基本性能から比べます。
F-15EXイーグルIIは、
- 搭載量(payload)
- 航続距離(range)
- 速度(speed)
が、クラス(双発の戦闘機)最高となっています。
従来のF-15シリーズと比べて、F-15EXイーグルIIは、
- より多くの武装(燃料)を搭載
- より遠くまで飛行可能
- マッハ2.5の最高速度を維持
しており、
これまでのF-15シリーズで培ってきた制空権をベースに、戦闘実績と最先端の設計・技術を融合させた、戦術戦闘機部隊の主戦力(基幹機、backbone)であし、これからの次世代型戦闘機です。
F-15イーグルの進化版
F-15イーグルは、ほぼ同じ時期に開発されたF-16ファイティング・ファルコンが技術的に新しいものを取り入れたのに対し、保守的な設計思想で開発されました。
例えば、F-15EXイーグルIIで採用となったフライ・バイ・ワイヤですが、F-16ファイティング・ファルコンでは当初から採用されています。
フライ・バイ・ワイヤによるメリットには、例えば機体の姿勢制御をコンピュータで行えることがあります。
自動操縦は、例えば長距離移動などのパイロットの負担を減らしたり、ミサイル発見から回避までを自動化により短時間かつ確実に行うなどのメリットがあります。
しかし、メカニカルな操縦系を残したまま自動操縦を実現することは現実的ではないため、F-15EXイーグルIIがフライ・バイ・ワイヤを採用したことで、第5世代のステルス機や無人機なども含めたこれからの戦闘機軍の運用に対応できるようになったと考えています。
クラス最大の搭載量と最新アビオニクスの組み合わせ
F-15EXイーグルIIは、超大型武装を含む最大13,300kgの搭載量(ペイロード)を持ちます。
- 例えば、F-15EXイーグルIIは、12発のAIM-120 AMRAAMやその他の大型兵器を搭載することができます。
- 最新のアビオニクスと搭載量(ペイロード)により、長距離のスタンドオフ・ウェポン・システムとなります。
- AMRAAM(Advanced Medium-Range Air-to-Air Missile)
- 中距離空対空ミサイル
- 慣性誘導による中間誘導、終端誘導はアクティブ・レーダー・ホーミングによる「撃ちっぱなし能力」あり
F-15EXイーグルIIの搭載量と航続距離に、次のような最新のセンサー(レーダー)や、高度な電子戦システムを組み合わせた戦闘力を発揮することができます。
- 最新のソフトウェアインフラ:次世代レーダー、センサー、ネットワーク機能を搭載
- 将来的な改修やアップグレードは、最新のソフトウェア開発、デジタルエンジニアリング、オープンミッションシステムアーキテクチャを取り入れており、より速く低コストな将来戦闘機開発のための先駆者(digital pathfinder)となっています。
その他にも、
- F-15シリーズで培った高い信頼性
- ステルス機と比べればリーズナブルで優れたコストパフォーマンス
具体的にどの機種と比べたかは分かりませんが、
- 他の戦闘機に比べ運用コストが低い。
- 武器搭載量は4倍、燃料、航続距離、速度は2倍
であり、世界中の空軍が現実的に配備できる最新ソリューションとなっています。
アビオニクスの進化:EPAWSS
F-15EXイーグルIIは、EPAWSSを搭載することで、最新の自己防護能力と状況認識能力を実現しています。
- EPAWSS:Eagle Passive/Active Warning and Survivability System
- EPAWSSは、F-15Eストライクイーグルにも搭載することができます。
EPAWSSにより、レーダー・ウォーニング、ジオロケーション、強化したチャフとフレアとが統合されており、電子戦環境下において、対電子戦における自己防護と攻撃的な電子戦能力を備えることになります。
- 敵のレーダー波の検知、位置情報の把握により、チャフやフレアを含めた対応ができるということです。
- EPAWSSは、BAE SUSTEMS製AN/ALQ-250です。
BAE SUSTEMS社のWebサイトの情報から主な特徴を以下に列挙します。
- 第5世代戦闘機からのデジタル電子戦テクノロジーを最大活用
- 攻撃・防御両方のデジタル電子戦能力
- モジュール型で拡張性に優れたオープンアーキテクチャーなシステム
- 全方位を網羅する広帯域レーダー警報およびジオロケーション(位置情報)
- マルチスペクトル、無線周波数(RF)、赤外線(IR)対策
- レーダーおよびレーダー警報受信機に干渉しない同時ジャミング
- アクティブ電子走査アレイ レーダーとの相互運用が可能
- レーダー警報と対抗手段(チャフやフレア)を単一のシステムに統合
- 状況認識力の強化
- F-15への電子戦システムの省スペース化を実現
- 将来のさまざまな脅威の識別・対抗能力
外観上の違いはCMWS
F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとの外観上の違いが分かるのは、操縦席横の突起物です。
これは、CMWS(Common Missile Warning System)とは、ミサイル警報システムです。
- CMWSは、ミサイルに関する警報や発射されたミサイルを検知します。
- CMWSは、BAE SYSTEMS社製のミサイル警報システム(AN/AAR-57)の様です。
- BAE SYSTEMS社のWebサイトの情報では、AN/AAR-57はF-15SAをサポートしています。対戦車ヘリなどの回転翼機にも対応しています。
写真で見る違い
F-15EXイーグルIIとF-15Eストライクイーグルの違いを写真で説明します。
F-15EXイーグルIIの性能諸元が公開されたら、数値を比べてみたいと思います。
外観を比べる
F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとの外観を写真で比べます。
- 従来のF-15シリーズとして、F-15Eストライクイーグルを選んでいます。
- F-15EXイーグルIIとF-15Eストライクイーグルのほぼ同じ角度の写真を探してきました。
正直なところ、ほとんど見分けがつきません。
- F-15EXとF-15Eの写真を見比べると、F-15Eにはない操縦席横の突起物がF-15EXイーグルIIにはあります。
下図は、F-15EXイーグルII初号機の写真です。
図2 F-15EXイーグルII
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、F-15Eストライクイーグルの写真です。
図3 F-15Eストライクイーグル
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
外観上の違いはCMWS
上述のF-15EXイーグルIIとF-15Eストライクイーグルの写真は、ほぼ同じ角度の写真を選びましたが、ほとんど見分けがつきません。
外観上の違いが分かるのは、F-15EイーグルIIの操縦席横の突起物です。
これは、BAE SYSTEMS社製のミサイル警報システムCMWS(Common Missile Warning System)です。
下図は、F-15EXイーグルIIのコクピット部分を拡大した写真です。
- 前席と後席の間付近の突起物がCMWSです。
- 後述のF-15QAの写真と比べると、CMWSは設置されていないようです。
図4 F-15EXイーグルII:CMWS
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
F-15SAのCMWS
下図は、F-15SAの写真です。
- コクピット横の突起物がCMWSです。突起物の形状はF-15EXイーグルIIと同じようです。
- CMWSの円形状のセンサーを確認できます。
図5 F-15SA:CMWS
出典:AIR COMBAT COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
F-15QAのCMWS
下図は、F-15QA の写真です。
- コクピット横の突起物がCMWSです。突起物の形状がF-15EXイーグルIIやF-15SAとは違うように見えますが、カラーリングにより違って見えるようです。
- CMWSの円形状のセンサーを確認できます。
図6 F-15QA:CMWS
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
パイロットが感じる違い(感想)
パイロットからみたF-15EXイーグルIIの違いについて、F-15EXイーグルIIの8号機の操縦をしたベテラン・パイロットの感想を紹介します。
元記事は、英語なので私の意訳です。
このパイロットによると、
- EX8号機は、期待通りに正確なパフォーマンスを発揮した。(EX 008 performed exactly as expected)
- 機体のパフォーマンスは、速い、とても速いに尽きる。(As far as the aircraft performance goes, it is fast. Very fast.)
とのことです。
主観的なコメントですが、F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとの違いが分かる様な気がします。
パイロットの感想の続きは、
- F-15EXイーグルIIは、これまでのF-15シリーズとはその特性を大きく変えた斬新な(Novel)機体である結果だと考えています。
- F-15EXイーグルIIの先進的なレーダーシステム(advanced radar)
- 新しい自己防衛システム(new self-defense suite)
- 大型化されたモーター(bigger motors)
- フライ・バイ・ワイヤーによる操縦(fly-by-wire controls)
です。
見た目はの違いは小さいのですが、中身は大きく違うF-15EXイーグルIIといってよいと思います。
パイロットのイーグルIIの感想については、以下の記事をご参照ください。
まとめ
第4.5世代機ともいわれるのF-15EXイーグルIIですが、外観を見ただけでは、F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとの違いは、ほとんど分かりません。
しかし、中身を比べてみると、F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとは、まるで別物、むしろF-22ラプターやF-35AライトニングIIに近いといってよいほどです。
ここでは、F-15EXイーグルIIとこれまでのF-15シリーズとの違いについて、以下の項目で説明しました。
- 基本性能の違い
- F-15イーグルの進化版
- クラス最大の搭載量と最新アビオニクスの組み合わせ
- アビオニクスの進化:EPAWSS
- 外観上の違いはCMWS
- 写真で見る違い
- 外観を比べる
- 外観上の違いはCMWS
- F-15SAのCMWS
- F-15QAのCMWS
- パイロットが感じる違い(感想)