B-1Bランサーにも使われているボルテックス・ジェネレーター

B-1Bランサーのボルテックスジェネレータ 航空機の技術
出典:NELLIS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイトからの画像(加工しています)

ボルテックス・ジェネレーターとは、旅客機の主翼の上にある突起状のモノです。日本語では、渦発生装置といわれています。

ボルテックス・ジェネレーターを主翼に取り付けることで、空力的な性能向上や燃費改善の効果が得られるため、旅客機や輸送機などでも実際に使われている技術です。

ここでは、米国空軍の可変翼の戦略爆撃機B-1Bランサーを例に、ボルテックス・ジェネレーターについて説明します。

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ボルテックス・ジェネレーターとは

ボルテックス・ジェネレーターとは、渦発生器のことです。

下図は、旅客機の主翼の写真です。

  • 下図の青枠で囲んでいる部分の主翼上に並ぶ小さな突起物が、ボルテックス・ジェネレーターです。
  • ボルテックス・ジェネレーターの設置位置は、設置目的(期待する効果)などにより様々です。
ボルテックス・ジェネレーターの例

ボルテックス・ジェネレーターの例

図1 ボルテックス・ジェネレーターの例

出典:フリー素材ドットコムからの画像(加工しています)

ボルテックス・ジェネレーターの効果

ボルテックス・ジェネレーターは、航空機の性能や燃料消費量削減などの効果を得ることができます。

図1を例にボルテックス・ジェネレーターの効果を説明します。

  • 図1の右側が進行方向です。

主翼表面を空気が流れていきますが、高速になったり上昇したりすると主翼後方(図1右側)部分の空気層が主翼表面から離れていき、空気抵抗(抗力)が大きくなり、速度が低下したり速度を維持するためにエンジン推力を上げることで燃料消費量が増えたりします。

ボルテックス・ジェネレーターを設置すると、

  • ボルテックス・ジェネレーターにより、主翼表面に小さな渦が発生します。
  • この小さな渦の層が、主翼表面を後方に流れることで、高速になったり上昇したりすると主翼後方(図1右側)部分の空気層が主翼表面から離れていくのを遅らせる効果があります。
はかせ
はかせ

ボルテックス・ジェネレーターは、主翼表面に小さな渦を発生することで主翼全体の空気抵抗(抗力)を小さくする効果を得られるというイメージです。

B-1Bランサーのボルテックス・ジェネレーター

ここでは、B-1Bランサーに設置されたボルテックス・ジェネレーターについて説明します。

可変翼の戦略爆撃機B-1Bランサー

B-1Bランサーは、可変翼の戦略爆撃機です。

B-1Bランサーは、高速航行と低速(爆撃時)安定性を両立させるために可変翼が採用されたようです。

米国の戦略爆撃機部隊は、現在のB-1Bランサー、B-2スピリット、B-52Hストラトフォートレスの3機種から、開発中のB-21レイダーとB-52Hストラトフォートレスの2機種体制に変わっていく予定です。

下図は、B-1Bランサーの写真です。

  • 主翼を前方に広げた状態です。
  • 全長:44.5 m、全高:10.4 m
  • 全幅:主翼前方時 41.8 m、主翼後退時 24.1 m
  • 最大離陸重量:216,326 kg
  • 最高速度:1,448 km/h以上(マッハ1.2以上)
B-1Bランサー(その1)

B-1 bombers conduct training mission in East China Sea A 9th Expeditionary Bomb Squadron B-1B Lancer flies over the East China Sea May 6, 2020, during a training mission. The 9th EBS is deployed to Andersen Air Force Base, Guam, as part of a Bomber Task Force supporting Pacific Air Forces’ strategic deterrence missions and commitment to the security and stability of the Indo-Pacific region. (U.S. Air Force photo by Senior Airman River Bruce)

図2 B-1Bランサー(その1)

出典:AIR FORCE GLOBAL STRIKE COMMAND AFSTART-AIR(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、主翼を後退させた状態の写真です。

  • 高速飛行時には、主翼が後退します。
B-1Bランサー(その2)

Bomber power INDIAN SPRINGS AIR FORCE AUXILIARY FIELD, Nev. – A B-1 Lancer performs a fly-by during a firepower demonstration here recently. The bomber is from the 7th Bomb Wing at Dyess Air Force Base, Texas. (U.S. Air Force photo by Master Sgt. Robert W. Valenca)

図2 B-1Bランサー(その2)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

B-1Bランサーの詳細は、以下の記事をご参照ください。

B-1Bランサーのボルテックス・ジェネレーター

B-1Bランサーのボルテックス・ジェネレーターは、下図の通り、胴体後部に設置されています。

B-1Bランサー:ボルテックス・ジェネレーター(その1)

170608-F-JV039-022 Weapons School Integration takes flight A B-1B Lancer from the 77th Weapons Squadron, Dyess Air Force Base, Tex., takes off for a US Air Force Weapons School training exercise June 8, 2017 at Nellis AFB, Nev. During the USAFWS course, students receive an average of 400 hours of graduate-level academics and participate in demanding combat training missions. (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Andrew D. Sarver/Released)

図3 B-1Bランサー:ボルテックス・ジェネレーター(その1)

出典:NELLIS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)

下図は、機体後方から見たボルテックス・ジェネレーターの写真です。

  • 下図の通り、胴体後部と垂直尾翼下部に設置されています。
  • ボルテックス・ジェネレーターは、左右に各11個、合計22個設置されています。
B-1Bランサー:ボルテックス・ジェネレーター(その2)

150422-F-YM181-008 34th BS gains deployment training at Green Flag A B-1B Lancer, assigned to the 34th Bomb Squadron, Ellsworth Air Force Base, South Dakota, taxis down the runway during Green Flag 16-05 at Nellis Air Force Base, Nev., April 21, 2016. The squadrons that attend prepare to deploy in the future, the ability to throw a wrench in the day-to-day operations and force aircrews to overcome the challenges of deploying provides essential experience. (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Kevin Tanenbaum)

図3 B-1Bランサー:ボルテックス・ジェネレーター(その2)

出典:NELLIS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

ボルテックス・ジェネレーターによる効果

下図は、B-1Bランサーの胴体後部のボルテックス・ジェネレーター設置位置を拡大した写真です。

B-1Bランサー:ボルテックス・ジェネレーター

111103-F-KX404-294 77th Weapons Squadron, Dyess Airmen, train at Nellis AFB A U.S. Air Force B-1 Lancer assigned to the 77th Weapons Squadron departs for a training mission during the integrated tactics phase of the U.S. Air Force Weapons School Nov. 3, 2011, at Nellis Air Force Base, Nev. The 77th Weapons Squadron, part of the U.S.A.F.W.S., provides instructional flying and tactics training for students piloting the B-1 Lancer. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Brett Clashman/Released)

図4 B-1Bランサー:ボルテックス・ジェネレーター

出典:NELLIS AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)

B-1Bランサーのボルテックス・ジェネレーター設置場所をよく見ると、2か所に分かれています。

  • 垂直尾翼下部の補助翼前方部分に片側7個のボルテックス・ジェネレーターが設置されています。
  • 胴体後部に片側4個のボルテックス・ジェネレーターが設置されています。

垂直尾翼のボルテックス・ジェネレーターの役割について考察してみます。

はかせ
はかせ

考察としていますが、理論的な裏付けはなく、個人的にこう思うという推測です。

B-1Bは音速超えが可能であり、胴体後部はテールコーンとよばれる特徴的な形をしています。

B-1Bが高速で飛行する際、胴体からテールコーンへと続く機体表面の空気の流れが、垂直尾翼の補助翼の動作に悪影響を与えるのを防いでるのではないかと推測しています。

  • 垂直尾翼の下部は、胴体表面の空気の流れの影響を直接受けるということは、補助翼の動作にも直接的な影響が出ると考えられるからです。

また、胴体後部のボルテックス・ジェネレーターには、テールコーン表面を流れ離れていく空気層に対する効果があるのではないかと考えています。

はかせ
はかせ

ボルテックス・ジェネレーターは、主翼表面に設置されていることがほとんどかと思います。

しかし、B-1Bランサーの場合、垂直尾翼下部と胴体後部(テールコーンにつながる部分)に設置されているので、その理由はよく分かりませんが、ボルテックス・ジェネレーターの使い方の1つとして興味深いものがあります。

参考書籍(B-1Bランサー)

戦略爆撃機であるB-1Bランサーの情報は、米国空軍のWebサイトで諸元等はある程度分かりますが、技術的なことはほとんど分かりません。

B-1Bランサーの参考になる書籍として、2016年発刊のムック本を紹介します。

  • 「B-1Bランサー(イカロス・ムック 世界の名機シリーズ)」
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まとめ

ボルテックス・ジェネレーターとは、旅客機の主翼上にある突起状のモノで、渦発生装置といわれています。

ボルテックス・ジェネレーターは、空力的な性能向上や燃費改善の効果が得られる技術です。

ここでは、米国空軍の可変翼の戦略爆撃機B-1Bランサーを例に、ボルテックス・ジェネレーターについて、以下の項目で説明しました。

  • ボルテックス・ジェネレーターとは
    • ボルテックス・ジェネレーターの効果
  • B-1Bランサーのボルテックス・ジェネレーター
    • 可変翼の戦略爆撃機B-1Bランサー
    • B-1Bランサーのボルテックス・ジェネレーター
    • ボルテックス・ジェネレーターによる効果
  • 参考書籍(B-1Bランサー)
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