F-22ラプターは、最新のF-15EXイーグルIIやF-15Eストライクイーグルなどと同じように、強力なエンジンを2基搭載し、超音速巡航だけでなく、2次元スラスト・ベクトル・ノズルにより機動性のポテンシャルも高くなっています。
F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、ステルス性能に加え、ピッチング方向のみの可動ですが、短距離離陸や高い機動性(運動性能)を実現しています。
ここでは、F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズルについて、F-15EXイーグルIIの排気ノズルと比べて説明します。
F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズル
下図は、F-22ラプター(下図左側)とF-15EXイーグルII(下図右側)の排気ノズルの写真です。
- 戦闘機のジェットエンジンの排気ノズルは、下図右側のF-15EXイーグルIIと同様の形状がほとんどです。
- F-22ラプターは、2次元スラスト・ベクトル・ノズルとよばれる、機体のピッチング(上下)方向に±20度の範囲で可動します。(写真を見つけられませんでしたが、左右のノズルは上下・左右共に独立して動くようです。)
- F-15の様に通常の排気ノズルは、出力(推進力)が必要な場合には絞り込まれることで断面積を小さくします。F-22は、上下の排気ノズルが閉じます。
- さらに、F-22の2次元スラスト・ベクトル・ノズルで排気の向きを±20度の範囲に偏向させることができます。
F-22の2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、F-14トムキャットやB-1Bランサーの可変翼の様に、パイロットの操作ではなく、機体の状態に応じて自動的にコントロールされます。
図1 F-22ラプターとF-15EXイーグルIIの排気ノズル
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
2次元スラスト・ベクトル・ノズルとは
F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、ピッチング方向に可動するだけですが、次のような効果があります。
- ステルス性の向上
- 短距離離陸
- 機動性の向上
2次元スラスト・ベクトル・ノズルの具体的な効果について補足します。
例えば、次のようなイメージになります。
- 離陸時に機体の後方(ジェットエンジン)から、上方に押し上げることで短距離離陸を実現する。
- 急上昇や急旋回時に、機体にピッチング方向の力を与えることで失速を避けたり、運動性能を上げる。
以下、F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズルを写真を使い説明します。
写真で見る2次元スラスト・ベクトル・ノズル
F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズルを写真で見ていきます。
機体後方から
下図は、機体後方から見た2次元スラスト・ベクトル・ノズルの写真です。
- 2次元スラスト・ベクトル・ノズルが閉じた(通常の)状態です。
- 機体後方から見るとF-15の様な通常の戦闘機の排気口は円形ですが、F-22では排気口が四角形となっています。
図2 2次元スラスト・ベクトル・ノズル:機体後方
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
機体上方と下方から
下図は、機体上方と下方から見た2次元スラスト・ベクトル・ノズルの写真です。
- 下図左側が機体下面側、下図右側が機体上面側です。
- 2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、上側と下側が同じ形状となっています。
図3 2次元スラスト・ベクトル・ノズル:機体上方と下方
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
機体側面から(駐機時と飛行時)
下図は、機体側面見た2次元スラスト・ベクトル・ノズルの写真です。
- 下図上側が飛行時、下図下側が駐機時です。
- ノズルが閉じた状態では、機体後端に向けて薄くなっていく形状となっています。
図4 2次元スラスト・ベクトル・ノズル:駐機時と飛行時
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
2次元スラスト・ベクトル・ノズルの開・閉状態
下図は、2次元スラスト・ベクトル・ノズルが開いている時と閉じている時の写真です。
- 左側が閉じた(ノズルが水平の)状態、右側が左右とも上下方向に開いた状態です。
- 上下20度の範囲で推力の向きを変えることができます。
- 2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、F-22ラプターの飛行状態に応じ自動制御されます。
図5 2次元スラスト・ベクトル・ノズル:開・閉状態
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
離着陸
下図は、離・着陸時の写真です。
- 左側が着陸、右側が離陸時です。
- 2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、閉じた状態です。
図6 2次元スラスト・ベクトル・ノズル:離・着陸
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
上昇時
下図は、上昇時の写真です。
- 写真の見た目では分かりませんが、2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、急上昇を助ける役割を果たしていると考えています。
図7 2次元スラスト・ベクトル・ノズル:機体後方
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- USAF(米国空軍)のF-22ラプターの紹介ページ
- PRATT & WHITNEY社のジェットエンジン(F119-PW-100)の紹介ページ
まとめ
F-22ラプターは、最新のF-15EXイーグルIIやF-15Eストライクイーグルなどと同じように、強力なエンジンを2基搭載し、超音速巡航だけでなく、2次元スラスト・ベクトル・ノズルにより機動性のポテンシャルも高くなっています。
F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、ピッチング方向のみの可動ですが、ステルス性能に加え、短距離離陸や高い機動性(運動性能)を実現しています。
ここでは、F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズルについて、写真を使い以下の項目で説明しました。
- F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズル
- 2次元スラスト・ベクトル・ノズルとは
- 写真で見る2次元スラスト・ベクトル・ノズル
- 機体後方から
- 機体上方と下方から
- 機体側面から(駐機時と飛行時)
- 2次元スラスト・ベクトル・ノズルの開・閉状態
- 離着陸
- 上昇時
- 参考リンク