ステルス機をあえて観測させるF-22ラプターのレーダー・リフレクター

F-22ラプターのレーダー・リフレクター 航空機の技術
出典:USAF(米国空軍)のWebサイトからの画像(加工しています)

ステルス機であるF-22ラプターは、レーダーに発見されにくい機体形状に加え、塗装などにも様々な工夫が施され、低観測性(LO)に優れた機体です。

F-22ラプターの写真をUSAF(米国空軍)のWebサイトなどで見ていると、機体下面に薬のカプセルの様な形のセンサーの様な物が取り付けられています。

Google先生に聞いてみたところ、どうやらレーダー反射装置のようです。

ステルス機なのにあえてレーダー波を反射させる理由やステルス機のレーダーによる観測イメージについて説明します。

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F-22ラプターの機体下面に付いているのは何?

最新のステルス機はF-35ライトニングIIシリーズですが、最強のステルス機はF-22ラプターだと考えています。

なお、F-22ラプターの詳細は、以下の記事をご参照ください。

F-22ラプターのレーダー・リフレクター

下図は、F-22ラプターの機体下面の写真です。

  • F-22 Raptor Demonstration Teamによるデモ飛行での写真です。
  • 機体下面の中央部に飛び出ている物が、レーダー・リフレクターです。
F-22ラプター

Radical maneuvers Maj. Joshua Gunderson, F-22 Raptor Demonstration Team commander and pilot, performs during the Orlando Air and Space Show at the Orlando Sanford International Airport, Fla., Oct. 30, 2022. The F-22A is a fifth-generation fighter incorporating fourth-generation technology, heightened maneuvering capabilities, the ability to fly at supersonic speed without afterburners and enhanced pilot situational awareness. (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Joshua Hastings)

図1-1 F-22ラプター

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、上図の機体下面中央部を拡大した図です。

F-22ラプター:レーザー・リフレクター

F-22ラプター:レーダー・リフレクター

図1-2 F-22ラプター:レーダー・リフレクター

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)

写真で見るF-22のレーダー・リフレクター

F-22ラプターの機体下部のレーダー・リフレクターの有無を写真で確認します。

レーダー・リフレクターあり

下図は、F-22ラプターの機体下部にレーダー・リフレクターがある写真です。

  • 2024年6月に行われた訓練での写真です。
  • 機体下面中央付近をよくみると確認できる突起状のモノが、レーダー・リフレクターです。
F-22ラプター:レーザー・リフレクター搭載

7th AF hosts F-22s for integration training with US, ROKAF An F-22 Raptor, assigned to Joint Base Pearl Harbor-Hickam and currently operating out of Kadena Air Base, Japan, takes off from the flightline at Osan Air Base, Republic of Korea, June 26, 2024. Seventh Air Force is hosting several F-22s for a week of integration training with the U.S. and ROK air forces, providing the opportunity for dissimilar training between 4th and 5th generation aircraft and testing agile combat employment (ACE) capabilities on the Korean peninsula. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Ashley Mikaio)

図2 F-22ラプター:レーダー・リフレクター搭載

出典:7TH AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)

レーダー・リフレクターなし

下図は、F-22ラプターの機体下部にレーダー・リフレクターがない写真です。

  • 2016年のRed Flag16-1(米国空軍の演習)での写真です。
  • Red Flag16-1では、実戦に近い条件での訓練を行うため、レーダー・リフレクターがないと思われます。
F-22ラプター:レーザー・リフレクターなし

Red Flag16-1 An F-22 Raptor from Tyndall AFB, Fla. flies over Nellis AFB, Nev., during Red Flag 16-1, Feb. 5, 2016. Twelve Tyndall F-22’s are participating in Red Flag 16-1, a joint-training, full-spectrum readiness exercise designed to provide the most realistic combat training possible. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Alex Fox Echols III)

図3 F-22ラプター:レーダー・リフレクターなし(その1)

出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)

もう1枚、レーダー・リフレクターなしの写真です。

  • 2024年10月の訓練での写真です。
F-22ラプター:レーダー・リフレクターなし(その2)

Fighters conduct training sorties in the USCENTCOM AOR A U.S. Air Forces Central F-22 Raptor flies within the U.S. Central Command area of responsibility, Oct. 17, 2024. The F-22’s unique combination of stealth, speed, agility and situational awareness, combined with lethal long-range air-to-air and air-to-ground weaponry, makes it one of the most advanced fighters in the world. (U.S. Air Force photo)

図3 F-22ラプター:レーダー・リフレクターなし(その2)

出典:U.S. AIR FORCE CENTRAL(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)

ステルス機をレーダーで観測するイメージ

F-22ラプターのレーダー・リフレクターについて説明する前に、レーダーについて説明します。

レーダーとは

レーダーには、レーダー波のを出す(発射、放射)とレーダー波を受信する機能があります。

レーダーにより、航空機を発見するイメージは、次の通りです。

  • レーダーから、レーダー波を発射します。
  • 発射されたレーダー波は、航空機等にぶつかり反射されます。
  • 航空機等に反射されたレーダー波を、レーダーで受信します。
  • 発射したレーダー波と受信したレーダー波の情報から、航空機等の位置を計算(推定)します。

ステルス機と非ステルス機によるレーダー処理

非ステルス機とステルス機は、機体で反射してレーダーで受信されるレーダーの反射波の大きさ(強さ)が大きく異なります。

  • 例えば、最強の戦闘機といわれるF-15EXイーグルIIと最強のステルス機F-22ラプターとでは、レーダー波の反射波の大きさは、1/10とか1/100といった感じで桁が違うイメージになります。
  • モノの大きさに例えれば、ステルス機はレーダー上には非常に小さい物体として映るということです。これを、低観測性(LO:low observability)といいます。

下図は、ステルス機と非ステルス機によるレーダー処理のイメージ図です。

  • 下図、青い矢印がレーダーにより発射されたレーダー波です。
  • 下図、赤い矢印は、レーダー波が機体で反射したレーダー波です。
  • 青い矢印と赤い矢印の大きさが、レーダー波の大きさ(強さ)を表しています。

非ステルス機(下図左側)と比べると、ステルス機(下図右側)はレーダー波の反射波が小さく(弱く)なります。

ステルス機と非ステルス機によるレーダー処理のイメージ

ステルス機と非ステルス機によるレーダー処理のイメージ

図4 ステルス機とレーダーとの関係のイメージ

ステルス機のレーダー・リフレクターのイメージ

下図は、ステルス機のレーダー・リフレクターの効果をイメージした図です。

  • 下図、青い矢印がレーダーにより発射されたレーダー波です。
  • 下図、赤い矢印は、レーダー波が機体で反射したレーダー波です。
  • 青い矢印と赤い矢印の大きさが、レーダー波の大きさ(強さ)を表しています。
ステルス機のレーダー・リフレクターのイメージ

ステルス機のレーダー・リフレクターのイメージ

図5 ステルス機のレーダー・リフレクターのイメージ

上図左側の図は、ステルス機から反射するレーダー波のイメージです。

  • ステルス機から反射されるレーダー波(反射波)が小さい(弱い)ことを示しています。

上図右側の図は、レーダー・リフレクターを設置したステルス機から反射するレーダー波のイメージです。

  • ステルス機から反射されるレーダー波は、機体による反射波に加え、レーダー・リフレクターによる反射もあることを示しています。
  • ステルス機としての性能を示す反射波(上図左側の赤い小さい矢印)よりも、レーダー・リフレクターによる反射波(上図左側の赤い大きい矢印)の方が大きいことを示しています。

考察:レーダー・リフレクターの役割について

実際のステルス機では、これほど単純ではないと思いますが、

  • レーダー・リフレクターは、レーダー波に対し、ステルス機本来のレーダー波ではなく、レーダー・リフレクターによる反射波をレーダーに受信させる役割がある。

と考えています。

ステルス機の持つ相手側のレーダーでは発見できないというメリットを最大限に活用するためには、ステルス性能を知られないことが重要です。

レーダー・リフレクターには、F-22ラプターのステルス性能を隠す役割もあるのではないでしょうか?

実戦的な訓練では、レーダー・リフレクターを外し機体本来のステルス性能を発揮して、ステルス性の優先度が低い訓練などでは、レーダー・リフレクターを搭載しているのではないかと考えています。

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まとめ

ステルス機であるF-22ラプターは、レーダーに発見されにくい機体形状に加え、塗装などにも様々な工夫が施され、低観測性(LO)に優れた機体です。

ステルス機は、機体表面が滑らかなのが特徴ですが、USAF(米国空軍)のWebサイトのF-22ラプターの写真では、機体下面に突起物(レーダー・リフレクター)があったり無かったりします。

ステルス機なのにあえてレーダー波を反射させる理由やステルス機のレーダーによる観測イメージについて、以下の項目で説明しました。

  • F-22ラプターの機体下面に付いているのは何?
    • F-22ラプターのレーダー・リフレクター
  • 写真で見るF-22のレーダー・リフレクター
    • レーダー・リフレクターあり
    • レーダー・リフレクターなし
  • ステルス機をレーダーで観測するイメージ
    • レーダーとは
    • ステルス機と非ステルス機によるレーダー処理
    • ステルス機のレーダー・リフレクターのイメージ
  • 考察:レーダー・リフレクターの役割について
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