最新のF-15EXイーグルIIはもちろんのこと、F-15Eストライクイーグルを含むF-15シリーズは、最大速度マッハ2.5の戦闘機です。
ちなみに、F-15より速く飛べるのは、世界最高速度の記録を持つSR-71ブラックバードです。
戦闘機のジェットエンジンは、インテーク(吸気口)から空気を取り込み後方に排気することで推進力を得ています。
ここでは、最大速度マッハ2.5を実現するF-15の可変インテークシステムについて説明します。
私が理解した内容でまとめていますので、正確ではないかもしれない点はご了承願います。流体でしかも圧縮性があり難しいですね。
可変インテークとは
下図は、F-15の可変インテークが動くことが分かる写真です。
- 下図左側は、インテークが下がった状態です。
- 下図右側は、左側のインテークが上がった状態です。
図1 F-15の可変インテーク
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイトからの画像
音速を超えて飛行するために解決しなければいけない課題には、
- 戦闘機がどのような姿勢や状態であってもエンジンに空気を送り込むこと
- 音速を超える時に発生する衝撃波対策
などがあります。
写真で見るF-15の可変インテークシステム
写真を使ってF-15の可変インテークについて説明します。
可変インテークが動くことで、インテーク(吸気口)の面積が変わります。
ここでは、可変インテークシステムと呼んでいますが、これは以下の機能を含みます。
- インテークが上下方向に可動します。
- インテーク内部には、ランプとよばれる板が動き、取り込んだ空気の流れを変えられる構造となっています。
- 取り込んだ空気を排出する機能があります。
F-15の可変インテークシステムは、機体の姿勢や運動状態に応じて、コンピュータで自動的に調整されます。
以下、写真を使ってF-15の可変インテークについて説明します。
可変インテークの動作範囲
下図は、F-15EXイーグルII初号機の写真です。
- 機体とインテークの塗装色の関係で分かりにくいのですが、EGRIN空軍基地に到着した初号機の写真です。
図2-1 F-15EXイーグルIIの可変インテーク(下方)
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイトからの画像
下図は、上図のインテーク付近を拡大した写真です。
- インテークは下がった状態です。
図2-2 F-15EXイーグルIIの可変インテーク(下方)
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイトからの画像(加工しています)
下図も、F-15EXイーグルII初号機の写真です。
- インテークは、上がった状態です。
図3-1 F-15EXイーグルIIの可変インテーク(上方)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、上図のインテーク付近を拡大した写真です。
- 図2と比べて見ると、インテークが可動範囲が分かります。
図3-2 F-15EXイーグルIIの可変インテーク(上方)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています)
離陸時の可変インテーク
下図は、F-15Eストライクイーグルの離陸時の写真です。
- 離陸時には、アフターバーナーを使用しますので、通常飛行の場合よりも多くの空気を必要とします。
- このため、可変インテークを下側にすることで、必要な空気を取り込みエンジンに送り込んでいると考えています。
図4 F-15Eストライクイーグル:離陸
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
マッハ2超での可変インテークの働き
音速を超えると衝撃波が発生します。
衝撃波とは、
- 音の速さよりも空気の流れ(戦闘機のスピードや空気取入口からジェットエンジン、排気ノズルまで)が速くなると発生する。
- 衝撃波は空気の塊による圧力が発生する。
- 衝撃波により、ソニックブームとよばれる騒音が発生する。
という特性があり、物理現象としては、
- 空気の流れという流体としての挙動
- 圧縮した空気(流体)
を取り扱うことになるので、正確に理解するのは専門家でないと難しそうです。
私なりに理解できた範囲では、正確性には疑問がありますが、
- 衝撃波対策として、空気の速度を落とすため、ランプ機構やダクト内の排気により空気の流れを変えてい空気の速度を落としている。
- 武装や燃料満載の状態でマッハ2.5で飛行できるわけではない。
と考えています。
飛行中の可変インテークの位置
可変インテークの位置に注目して、飛行中のF-15EXイーグルIIの写真をみていきます。
下図は、F-15EXイーグルII空中給油の写真です。
- 空中給油の様に一定の速度の場合の可変インテークは、下図の様にやや下向き場合が多いようです。
図5-1 F-15EXイーグルIIの可変インテーク(空中給油)
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイトからの画像
下図は、F-15EXイーグルIIが、アフターバーナーを使っている写真です。
- 排気炎の様子からアフターバーナーを使っていると判断しました。
- 可変インテークは、写真の角度で分かりにくいのですが上側の位置にあるようです。
図5-2 F-15EXイーグルIIの可変インテーク(アフターバーナー使用?)
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイトからの画像
下図は、急上昇をしていると思われるF-15EXイーグルIIの写真です。
- 可変インテークは、上側の位置にあるようです。
図5-3 F-15EXイーグルIIの可変インテーク(急上昇?)
出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイトからの画像(加工しています)
可変インテークの位置が最上部
下図は、F-15EXがイーグルIIに命名された時の写真です。
- この状態が、可変インテークが最も上側の位置(インテークが開いた状態)です。
図6 F-15EXイーグルIIの可変インテーク(一番上)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
考察:F-15の可変インテークについて
F-15の可変インテークについて、私が理解している内容を説明します。
下図は、可変インテークを上方から下方に移動させた場合のイメージ図です。
- 下図のグレーの部分はジェットエンジンで、左側から空気を取り込みます。
下図左側のようにインテークを下げると、
- F-15の機体を正面からみると、インテークの四角形の面積が小さくなります。
- 下図の赤い部分の分だけ取り込んだ空気の量が小さくなります。
図7 F-15EXイーグルIIの可変インテークのイメージ(その1)
下図は、離陸や急上昇などで機首を上げた場合のインテークから取り込む空気の量の違いのイメージ図です。
- 下図上側が、インテークの前部に「ひさし」が無い場合、下図下側がF-15の様にインテーク前部に「ひさし(前方の三角形の部分)」がある場合を示しています。
図7 F-15EXイーグルIIの可変インテークのイメージ(その2)
インテーク前部にひさしがないと、
- 機首を上げた場合に、インテーク面積が小さくなります。
- インテーク面積が減ることで、エンジンまで到達する空気量が少なくなります。
- エンジンに十分な空気が送り込まれないと、推力が減ります。
インテーク前部にひさしがあることで、
- 機首を上げた場合でも、インテーク面積が広くなり、機種が水平の場合に比べて大きな変化がないということです。
- インテーク面積が増えることで、エンジンまで到達する空気量を確保することができます。
まとめ
最新のF-15EXイーグルIIはもちろんのこと、F-15Eストライクイーグルを含むF-15シリーズは、最大速度マッハ2.5の戦闘機です。
戦闘機のジェットエンジンは、インテーク(吸気口)から空気を取り込み後方に排気することで推進力を得ています。
ここでは、最大速度マッハ2超を実現するF-15の可変インテークシステムについて、以下の項目で説明しました。
- 可変インテークとは
- 写真で見るF-15の可変インテークシステム
- 可変インテークの動作範囲
- 離陸時の可変インテーク
- マッハ2超での可変インテークの働き
- 飛行中の可変インテークの位置
- 可変インテークの位置が最上部