「最強の戦闘機は何?」という質問に対し、最高速度やステルス性能などの仕様(数字)で比べることはできます。
しかしながら、そもそも空を飛ぶということは、環境条件(天候)1つとっても様々です。
しかも、相手も飛んでいますし、運用の仕方(戦い方)でも変わってくるものです。
ここでは、現役の代表的な戦闘機として、F-22ラプター、F-15EXイーグルII、F-35AライトニングII、F-16ファイティング・ファルコンの4機を選び最強の戦闘機について考えてみます。
比較する4機の紹介
なぜ、F-22ラプター、F-15EXイーグルII、F-35AライトニングII、F-16ファイティング・ファルコンの4機を選んだのか?
私「はかせ」の独断と偏見で選んだことに違いはありませんが。
個人的には、仕様上の最強の戦闘機はF-22ラプター、でも最強の戦闘機はF-15EXイーグルIIを推しています。
ということで、比較する4機を簡単に紹介します。
F-22ラプター
下図は、F-22ラプターです。
以下の特徴を持つ最強のステルス戦闘機です。
- 高いステルス性
- アフターバーナーなしでのスーパークルーズ(超音速巡航)
- STOL(短距離離着陸)が可能
図1 F-22ラプター
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-22ラプターは、機体性能云々ではなく、戦い方を変えた戦闘機であることが最強たる所以だと考えています。
F-22ラプターのキャッチコピーを意訳してみます。
Air Dominance Delivered
F-22ラプターは空域支配を実現
技術的には、2次元スラスト・ベクトル・ノズルが特徴です。
F-22ラプターの詳細は、以下の記事をご参照ください。
F-15EXイーグルII
下図は、F-15EXイーグルIIです。
私は、F-15Eストライクイーグルと外観からは見分けがつきません。
図2 F-15EXイーグルII
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-15EXイーグルIIは、現在開発中のF-15シリーズ最新型です。
これからの時代にも適応できるように機体構造から見直されており、外観上はさておき中身は従来のF-15と比べて別物です。
F-15EXイーグルIIのキャッチコピーを意訳してみます。
More Capability. More Capacity. More Savings.
F-15の能力を高め、搭載容量を増やし、ライフサイクルコストを抑制
技術的には、マッハ2超えを実現する可変インテークが特徴です。
F-15EXイーグルIIの詳細は、以下の記事をご参照ください。
F-35AライトニングII
下図は、F-35AライトニングIIです。
航空自衛隊も導入しているF-35ライトニングIIは、空軍用のF-35A、短距離離陸/垂直着陸可能(STOVL)なF-35B型、艦載機翼を追って格納できる艦載機のF-35C型と3タイプあります。
図3 F-35AライトニングII
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-35のキャッチコピーは、(日本語に訳すと今一つピンときませんが)この戦闘機の特長をよく表しています。キーワードはコネクテッドと考えています。
F-35ライトニングIIのキャッチコピーを意訳してみます。
The World’s Most Advanced Fighter
Lethal. Survivable. Connected.
世界で最も先進的なF-35A戦闘機
リーサル、サバイバル、コネクテッド
しかも、ステルス機なのに、
- ステルス犠牲に火力アップのBeast Mode(ビーストモード)
があったります。
F-35AライトニングIIの詳細は、以下の記事をご参照ください。
F-16ファイティング・ファルコン
下図は、F-16ファイティング・ファルコンです。
戦闘機界のベストセラーがF-16ファイティング・ファルコンです。
戦力は量と質のバランスが重要です。F-15やF-22は高額なので数を揃えるのは現実的ではありません。また、運用上も例えばF-22やF-15で全てのミッションに対応することは現実的ではありません。
図4 F-16ファイティング・ファルコン
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-16 Block 70/72のキャッチコピーを意訳してみます。
The World’s Most Advanced 4th Generation Fighter
世界で最も先進的な第4世代戦闘機
F-14トムキャット、F-15イーグル、F-16ファイティング・ファルコンの関係も航空戦力の運用視点で見ていくと、F-14は退役し、F-15はイーグルIIとして、F-16は戦闘機界のベストセラーとして現在もバージョンアップしながら運用されているのは、航空戦力の質と量との関係によるもと考えています
F-16ファイティング・ファルコンの詳細は、以下の記事をご参照ください。
最高速度で比べると
まずは、F-22ラプター、F-15EXイーグルII、F-35AライトニングII、F-16ファイティング・ファルコンの最高速度を比べてみます。
最高速度を出すためには、空気抵抗が小さい機体の方が有利です。
空気抵抗が小さいという点では、ステルス機であるF-22ラプターやF-35AライトニングIIは武装は機体内に格納しています。このため、武装を主翼等のハードポイントに固定するF-15EXイーグルIIやF-16ファイティング・ファルコンの方が不利になります。
図にまとめると下図の様になります。
図5 最高速度の比較:F-22、F-15EX、F-35A、F-16
F-22、F-15EX、F-35A、F-16の最高速度と推力を下表に示します。
表1 最高速度とエンジン諸元:F-22、F-15EX、F-35A、F-16
機種 | 最高速度 | エンジン | 推力 |
---|---|---|---|
F-15EX | マッハ2.5以上 | P&W製F-100-PW-220 or 229 | 26,308kg (2基) |
F-22 | マッハ2クラス
|
P&W製F-119-PW-100
|
31,752 kg(2基) |
F-35A | マッハ1.6 | P&W製F-135-PW-100 | 19,504 kg |
F-16 | マッハ2 | P&W製F-100-PW-200/220 /229又は、GE製F-110GE-100/129 | 12,246 kg |
-
- F-22ラプター、F-15EXイーグルII:エンジン2基
- F-35AライトニングII、F-16ファイティング・ファルコン:エンジン1基
- F-15EXの諸元は不明のため、(F-15EXイーグルIIは、F-15Eストライク・イーグル同等以上と考え)F-15Eの諸元を使用しています。
- 推力はkg換算としています。
表1の内容から、F-22、F-15EX、F-35A、F-16を比べると、次のことが分かります。
- 最高速度はF-15EXが1番です。(アフターバーナー使用による瞬間的な最高速度)
アフターバーナーを使うことで瞬間的に最高速度を上げることは可能ですが、燃料消費が非常に大きいこと、燃焼温度も上がるためエンジン自体へのダメージも大きくなります。
また、アフターバーナーを使う機会は、攻撃への対応が難しい離陸時、攻撃の回避行動などの必要最小限であり、気軽に使うものではないようです。
アフターバーナー使用の制約を考慮すると、
- 戦闘機としての最高速度という意味で、F-22のアフターバーナーなしでマッハ1.5が最速と考えています。
技術的な違いについてみると、性能向上を得られる反面複雑な構造となっており、機体価格を上げる一因ともなっています。
- F-15EXは、マッハ2超えのため可変インテーク機構となっています。
- F-22の2次元スラスト・ベクトル・ノズルは、機動性に貢献しています。
- ステルス機は、ステルス性能の維持のためメンテナンス時間・コスト共にF-16やF-15面よりも大きく劣っていることになります。
機体(重量、大きさ)と推力で比べると
戦闘機の運動性能(機動力)の1例として、F-22、F-15EX、F-35A、F-16をの機体と運動性能を比べてみます。
単純比較はできませんが、機体と運動性能とには次の様な関係があります。
- 機体重量が同じならば、推力が大きい方が運動性能や最高速度は上がる。
- F-22の2次元スラスト・ベクトル・ノズルによる運動性能向上は大きい。
- 重量といっても、機体重量、搭載する武装の重量、燃料の重量があり、武装や燃料搭載量により変わる。
F-15EX、F-22、F-16、F-35の機体諸元と推力を下表に示します。
表2 機体とエンジン推力:F-22、F-15EX、F-35A、F-16
機種 | 機体諸元 | エンジン | 推力 |
---|---|---|---|
F-15EX | 全長:19.44 m
全高:5.6 m 全幅:13 m 最大離陸重量:36,450 kg |
P&W製F-100-PW-220 or 229 | 26,308kg (2基) |
F-22 | 全長:18.9 m
全高:5.08 m 全幅:13.56 m 最大離陸重量:38,000 kg |
P&W製F-119-PW-100
|
31,752 kg(2基) |
F-35A | 全長:15.7 m
全高:4.38 m 全幅:10.7 m 最大離陸重量:31,751 kg |
P&W製F-135-PW-100 | 19,504 kg |
F-16 | 全長:14.8 m
全高:4.8 m 全幅:9.8 m 最大離陸重量:16,875 kg |
P&W製F-100-PW-200/220 /229又は、GE製F-110GE-100/129 | 12,246 kg |
-
- F-22ラプター、F-15EXイーグルII:エンジン2基
- F-35AライトニングII、F-16ファイティング・ファルコン:エンジン1基
- F-15EXの諸元は不明のため、(F-15EXイーグルIIは、F-15Eストライク・イーグル同等以上と考え)F-15Eの諸元を使用しています。
- 推力はkg換算としています。
表2の内容から、F-22、F-15EX、F-35A、F-16を比べると、次のことが分かります。
-
- F-15EXとF-22はエンジンを2基搭載し、F-35やF-16よりも一回り大きい機体サイズ
そこで、次式のパワー・ウェイト・レシオで4機を比べてみます。
(パワー・ウェイト・レシオ)=(エンジン推力)/(機体重量)
最大離陸重量でのパワー・ウェイト・レシオ
まず、エンジン推力と最大離陸重量の値を使用してパワー・ウェイト・レシオを比べます。
最大離陸重量を使用しているので、燃料と武装満載の状態での比較となります。
- F-15EXは、外部タンク3基+コンフォーマル・フューエル・タンクを含みます。
F-15EX:1.39(=36,450/26,308)
F-22:1.20(=38,000/31,752)
F-35A:1.63(=31,751/19,504)
F-16:1.38(=16,875/12,246)
最大離陸重量でのパワー・ウェイト・レシオを小さい順に並べると、次式となります。
F-22(1.20)>F-16(1.38)>F-15EX(1.39)>F-35A(1.63)
パワー・ウェイト・レシオが小さい方が加速性能が高いと考えられますので、この4機種の加速性能について、次の様に考えています。
- F-22の加速性能は優れている。
- F-16はエンジン1基で軽量なため、加速性能に優れている。
- F-15EXがF-16と同等のパワー・ウェイト・レシオになっていることには疑問がある。
また、F-22とF-35Aは、武装を機内(ウェポンベイ)に搭載するため、機外(主翼等のハードポイント)に武装を設置するF-15EXやF-16よりも加速性能に優れると考えられます。
機体重量でのパワー・ウェイト・レシオ
次に、武装なしの機体重量でのパワー・ウェイト・レシオを比べてみます。
機体重量は、最大離陸重量から燃料搭載容量(外部燃料タンク含む)を引いた値としています。F-35Aは内部搭載燃料のみです。
F-15EX:0.77(=(36,450-16,125)/26,308)
F-22:0.82(=(38,000-11,900)/31,752)
F-35A:1.20(=(31,751-8,390)/19,504)
F-16:0.93(=(16,875-5,433)/12,246)
機体重量でのパワー・ウェイト・レシオを小さい順に並べると、次式となります。
F-15EX(0.77)>F-22(0.82)>F-16(0.93)>F-35A(1.20)
パワー・ウェイト・レシオが小さい方が加速性能が高いと考えられますので、この4機種の加速性能について、次の様に考えています。
- F-15EXの(アフターバーナーを使った)瞬間的な加速性能はF-22より優れる。
- F-15EX(マッハ2.5以上)の最高速度が、F-22(マッハ2クラス)より優れていることが説明できる。
- F-16はエンジン1基で軽量なため、加速性能に優れている。
- F-22の加速性能はF-15EXに近い優れたものである。
最強の戦闘機とは
最強の戦闘機とは、加速性能や運動能力に高い戦闘機であろうと考え、最高速度とパワー・ウェイト・レシオを使い、F-22ラプター、F-15EXイーグルII、F-35AライトニングII、F-16ファイティング・ファルコンの4機を比較してきました。
エンジン1基のF-35AとF-16よりは、エンジン2基のF-15EXとF-22の方が強いだろうということには納得される方も多いと思います。
また、最高速度が求められたF-15シリーズの最新型であるF-15EXイーグルIIと、航空優勢(Air Dominance)を実現する戦い方を求められたF-22ラプターを比較するのも乱暴な比較ではあります。
それでもあえて、最強の戦闘機は何だと問われれば、私はF-22ラプターだと考えています。その理由を列挙してみます。
- ステルス性に優れている。
- アフターバーナーなしでの超音速巡航(マッハ1.5)が可能
- F-22ラプターの2次元スラスト・ベクトル・ノズル付エンジンは、速度だけでなく機動性にも優れている。
他の機種やデジタル情報の活用と言う面では、F-15EXイーグルIIは同等だと考えています。
以上、スペックの値(諸元)で4種類の戦闘機を比較してきました。
仮に、実際の運用(作戦行動)で最強の戦闘機は何かと問われれば、
- 短期決戦ではF-22ラプターの優位性は変わらない。
- 長期戦になると補給やメンテナンスを含めF-15EXイーグルIIの方が、いわゆる強い戦闘機と言える。
と考えています。
数が必要となれば、戦闘機界のベストセラーF-16ファイティング・ファルコンや、ステルス機ながらビーストモードで武装強化を図れるF-35AライトニングIIにも強みはあります。
ということで、最強の戦闘機の結論は、
「F-22ラプターが最強の戦闘機だと思うけれど、F-15EXイーグルIIの強さは捨てがたいし・・・。」という好みの問題とさせていただきます。
まとめ
「最強の戦闘機は何?」という質問に対し、最高速度やステルス性能などの仕様(数字)で比べることはできますが、環境条件(天候)はもちろんのこと、相手も飛んでいますし、運用の仕方(戦い方)でも変わってくるものです。
ここでは、現役の代表的な戦闘機として、F-22ラプター、F-15EXイーグルII、F-35AライトニングII、F-16ファイティング・ファルコンの4機を選び、最強の戦闘機について以下の項目で説明しました。
- 比較する4機の紹介
- F-22ラプター
- F-15EXイーグルII
- F-35AライトニングII
- F-16ファイティング・ファルコン
- 最高速度で比べると
- 機体(重量、大きさ)と推力で比べると
- 最大離陸重量でのパワー・ウェイト・レシオ
- 機体重量でのパワー・ウェイト・レシオ
- 最強の戦闘機とは