F-15EXイーグルIIとF-15Eストライク・イーグル、F-15EXイーグルIIは現在量産1、2号機の運用試験中です。F-15Eとは別物と考えています。
推測になりますが、
- F-15Eストライク・イーグルは、歴史の長いF-15シリーズの延長線上で空対空と空対地にも対応できるよう設計されたF-15
- F-15EXイーグルIIは、F-22ラプターよりに設計されたF-15シリーズの最新型
と考えています。
ここでは、F-15Cの後継となるF-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle)について、米国空軍のWebサイトの情報を主に写真で説明します。
最強の戦闘機F-15Eストライク・イーグルとは
F-15Eストライク・イーグルは、空対空と空対地の任務を遂行するために設計されたデュアル・ロール・ファイター(dual-role fighter)です。昼夜間、天候に左右されない戦闘能力を備えています。
これまでのF-15は主として空対空戦闘の役割でしたが、F-15Eストライク・イーグルは、空対空と空対地両方のミッションで運用できるデュアル・ロール・ファイターとして設計されています。
パイロットとウェポン・システム・オフィサーの2人乗りで、長距離機動により目標に接近し、敵の地上陣地を破壊し、脱出する戦闘能力があります。
図1 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-15Eストライク・イーグルの主な特徴
F-15Eストライク・イーグルの主な特徴を列挙します。
ナビゲーションシステム
F-15Eストライク・イーグルのナビゲーションシステムは、次の様な機能を実現しています。
- レーザージャイロと全地球測位システムによる機体位置の常時監視
- パイロットとウェポン・システム・オフィサーの両コックピットのデジタル移動地図などの情報をセントラル・コンピュータなどに提供
APG-70レーダー
APG-70レーダーは、遠距離から地上の目標を探知することができるシステムで、次の様な特徴があります。
- ターゲットエリアを攻撃(掃射)後、空対地マップの機能を停止し、空からの脅威を排除するために空対空モードに戻す。
- 空対地武器の準備中、ウェポン・システム・オフィサーが地上目標を指定している間、パイロットは空対空目標を探知、照準、交戦することが可能です。
夜間低高度航法照準赤外線システム(LANTIRN)
夜間低高度航法照準赤外線システム(LANTIRN)は、夜間や天候を問わず低高度を飛行し、様々な精密誘導武器や無誘導武器で地上目標を攻撃することを可能にします。
LANTIRNシステムは、機体の外装に取り付けられた2つのポッドからなり、昼夜や悪天候の中でもこれまでにない精度で様々な武器を誘導することができます。
ナビゲーションポッド
ナビゲーションポッドには、地形追従レーダーが搭載されています。パイロットはヘッドアップディスプレイに表示される指示に従い超低空を安全に飛行することができます。
また、このシステムは航空機のオートパイロットと連動し、ハンズオフ(hands off、手を放して)での地形追従が可能です。
ターゲット・ポッド
ターゲット・ポッド(targeting pod)には、レーザー・デジグネーター(laser designator)とトラッキング・システム(tracking system)が搭載されています。
長射程でターゲットを破壊するためにマーキングし、追跡を開始すると自動的にGPSやレーザー誘導弾に照準情報が送信されます。
F-15Eで最も重要な追加装備の1つ(後部コクピット)
F-15Eで最も重要な追加装備の1つは、ウェポン・システム・オフィサーのいる後部コックピットにあります。
- 4つのスクリーンにレーダー、電子戦、赤外線センサーからの情報を表示し、航空機や武器の状態、脅威を監視し、ターゲットを選択し、電子ムービングマップ(moving map)を使ってナビゲートすることができます。
- 2つのハンドコントロール(操作)により、新しいディスプレイに表示するデータを選択し、ターゲット情報を絞り込むために使用されます。
- 表示内容は、ディスプレイオプションのメニューから選択し、あるスクリーンから別のスクリーンに変更させることができます。
パイロット用コクピット
パイロット席には、3つのスクリーンに加え、パイロットの目の高さに透明なガラス製のヘッドアップディスプレイがあり、重要な飛行・戦術情報を表示します。
- パイロットは、武器の状態を確認するためにコックピットのスクリーンに目を落とす必要はありません。
- 夜間は、前方の赤外線センサーが生成する昼間の視界とほぼ同じ映像を表示するため、このスクリーンの重要性はさらに増します。
下図はシミュレータの写真ですが、ヘッドアップディスプレイやスクリーンのイメージが分かるかと思います。
図2 F-15Eストライク・イーグルのシミュレータ
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
搭載エンジン
F-15Eはプラット&ホイットニー社のF100-PW-220または229エンジンを2基搭載しており、次の様な先進のデジタル技術を取り入れることで性能向上を実現しています。
- デジタル電子エンジン制御システムにより、F-15Eのパイロットはアイドル出力から最大アフターバーニングまで4秒以内に加速することができます。これは、従来のエンジン制御システムに比べ40%の向上となっています。
- エンジンの加速が速くなれば、離陸も速く、パイロットの操縦に対するレスポンスもよくなります(機動性の向上)。
- F100-PW-220エンジン推力:2基で22,679kg
- F100-PW-229エンジン推力:2基で26,308kg
コンフォーマル燃料タンク
F-15Eの胴体を覆う形状で空気抵抗の小さいコンフォーマル燃料タンクには、それぞれ2,839m3の燃料を搭載することができます。
このタンクは、従来の武器ラックではなく短いパイロンに武器を搭載することで、抵抗を減らし、ストライク・イーグルの航続距離をさらに伸ばしています。
武装(空対地、空対空)
空対地任務のために、F-15Eは空軍の保有するほとんどの武器を搭載することができます。
- 空対空の武器には、AIM-9サイドワインダー(Sidewinder)、AIM-120(advanced medium range air-to-air missiles)高度中距離空対空ミサイル、空対空用のAMRAAMを搭載できます。
- F-15Eには、最大500発の弾丸を搭載できる20mm砲を機体内部に装備しています。
写真で見るF-15Eストライク・イーグル
F-15Eストライク・イーグルをUSAF(米国空軍)のWebサイトの写真を使い説明します。
機体形状
下図は、機体上方からの写真です。
- 歴史のある機体であり、戦闘機として見慣れた形状でもあります。
- 2基のジェットエンジンを備え最強の戦闘機イーグルというのもうなずけます。
図3-1 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):上方から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、正面からの写真です。
- ステルス機と違い直線的なデザインが分かります。
- 2基のジェットエンジンの空気取り入れ口は、可変タイプです。
図3-2 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):正面から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
ステルス機との機体形状の違いの詳細については、以下の記事をご参照ください。
下図は側面の写真です。
- 空気取り入れ口の横にあるのは、コンフォーマル燃料タンクです。
図3-3 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):側面から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は機体下面の写真です。
- 主翼と尾翼の形状が分かります。
- 空気取り入れ口から真っすぐジェットエンジンへとつながっています。
図3-1 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):下方から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
離陸
下図は、F-15Eストライク・イーグルの離陸時の写真です。
- 脚は格納中です。
戦闘機の離陸時は攻撃側にとって好機となります。
このため、いち早く離陸するため、離陸時にはアフタバーナーを使用したり、滑走路から車輪が離れるや否や格納し空気抵抗を減らしているそうです。
実戦経験からのノウハウだと聞いたことがあります。
図4 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):離陸
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
着陸
下図は、F-15Eストライク・イーグルの着陸時の写真です。
- 機体後方に立ち上がっているのは、エアブレーキです。
- 寒冷地などの氷結や短距離着陸のためドラッグシュート(機体後部に格納されているパラシュート様のもの)を使うこともあります。
図5 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):着陸
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
空中給油
F-15Eストライク・イーグルの空中給油を見ていきます。
下図は、KC-46から空中給油を受けるF-15Eストライク・イーグルです。
- 空中給油は、今でこそ当たり前の様に運用されていますが、米国空軍機の運用を変えたと言われており、隠れた重要技術の1つでもあります。
図6-1 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):空中給油(その1)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
空中給油の詳細は、以下の記事をご参照ください。
下図は、KC-135 Stratotankerから空中給油を受けているF-15Eストライク・イーグルです。
- 飛行中の戦闘機のきれいな写真が撮れるようになったのは、空中給油が普及したこともあるようです。
図6-2 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):空中給油(その2)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
駐機中
下図は、駐機中のF-15Eストライク・イーグルの写真です。
- タラップや安全ピンのフラッグなどを確認できます。
静かな雰囲気を感じる1枚です。
図7 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):駐機
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
搭載武器
F-15Eストライク・イーグルは、ミッションに応じて様々な武器などを搭載します。
以下に武装の搭載例を紹介します。
- F-35のビーストモードの例外はありますが、ステルス機は基本機体内に武装を搭載しているのに対し、F-15は主翼下や胴体の下に搭載しています。
- 機体内にミサイルを搭載し、発射する技術も目立ちませんが優れた技術です。
図8-1 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):武装例(その1)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
図8-2 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):武装例(その2)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
図8-3 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):武装例(その3)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
ミサイル等の発射
F-15Eストライク・イーグルからミサイル等の発射時の写真を紹介します。
下図は、AIM-7スパロー(Sparrow)を発射した直後の写真です。
- 奥の方のもう1機も同時に発射しています。
- AIM-7スパローは、セミアクティブ・レーダー・ホーミング誘導方弾で、歴史の長い空対空誘導弾です。
図9-1 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):AIM-7
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、GBU-27ペイブウェイ(Paveway)を投下した直後の写真です。
GBU-27ペイブウェイは、レーザー誘導爆弾です。
図9-2 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):GBU-27
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、GBU-28バンカーバスター(Bunker buster)を投下した直後の写真です。
- GBU-28バンカーバスターは、レーザー誘導爆弾で、地下壕などの堅固な構造物を破壊するために使われます。
図9-3 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):GBU-28
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、JDAM(Joint Direct Attack Munition)を投下した直後の写真です。
- JDAMは、無誘導の爆弾に誘導できる装置を付加したものです。
図9-4 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):JDAM
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
フレア
下図は、F-15Eストライク・イーグルのフレアの写真です。
- フレアは、赤外線誘導弾から逃げる場合に使います。
図10 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):フレア
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
エンジン
F-15Eストライク・イーグルのエンジンを排気ノズル側から見てみます。
下図は、機体の後方からの写真で、排気ノズルが開いた状態です。
図11-1 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):エンジン(その1)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、離陸時の写真です。
- 排気ノズルが絞られている様子が分かります。
図11-2 F-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle):エンジン(その2)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-15イーグルの歴史
F-15は、高いエンジン推力重量比と低い翼面荷重により、優れた操縦性と加速性を実現しています。
これにより、F-15は米国で初めてエンジンの推力が機体重量を上回り、垂直上昇中でも加速できるようになった航空機でもあります。
低翼面荷重(翼面積に対する機体重量の割合)は、操縦(機動)性に重要な要素であり、高い推力重量比と相まって、対気速度を落とさずに機体を旋回させることができます。
以下、F-15の米国空軍への導入状況です。
1972年7月:F-15A初飛行
1972年7月:F-15A初飛行
1974年11月:最初の引き渡しと訓練開始
1974年11月:アリゾナ州ルーク空軍基地の第58戦術戦闘機訓練飛行隊に最初のイーグルが引き渡され、F-15AとBの両機で訓練が開始されました。
1976年1月:F-15初号機引き渡し
1976年1月:戦闘飛行隊向けのF-15初号機がバージニア州ラングレー空軍基地の第1戦術戦闘飛行隊に引き渡されました。
1979年:F-15C/D納入
1979年には単座型のF-15Cと2座型のF-15Dが空軍に在籍となり、日本の嘉手納基地に最初に納入されました。
これらのモデルは、907kgの追加内部燃料、外部コンフォーマル燃料タンクの搭載、最大離陸重量の30,844kgへの増加など、生産型イーグルパッケージの改良が施されていました。
1988年4月:F-15Eの量産初号機納入
F-15Eの最初の量産機は、1988年4月にアリゾナ州ルーク空軍基地、第405戦術訓練飛行隊に納入されました。
F-15Eストライク・イーグルの諸元
米国空軍のWebサイトの情報から主要諸元を下表に示します。
全長 | 19.44 m |
---|---|
全高 | 5.6 m |
全幅 | 13 m |
エンジン |
|
重量 | 17,010 kg |
最大離陸重量 | 36,450 kg |
速度 | 3,017 km/h (マッハ2.5以上) |
高度 | 18,288m |
航続距離 |
3,840km
|
燃料搭載容量 | 16,125kg
|
武装(例) |
|
乗員 | パイロットとウェポン・システム・オフィサー |
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- USAF(米国空軍)のF-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle)の紹介ページ
まとめ
F-15EXイーグルIIとF-15Eストライク・イーグル、F-15EXイーグルIIは現在量産1、2号機の運用試験中ですが、F-15Eはすでに運用されているようなので、別物なのだと考えています。
ここでは、F-15Cの後継となるF-15Eストライク・イーグル(Strike Eagle)について、米国空軍のWebサイトの情報を主に写真を使い以下の項目で説明しました。
- 最強の戦闘機F-15Eストライク・イーグルとは
- F-15Eストライク・イーグルの主な特徴
- ナビゲーションシステム
- APG-70レーダー
- 夜間低高度航法照準赤外線システム(LANTIRN)
- ナビゲーションポッド
- ターゲット・ポッド
- F-15Eで最も重要な追加装備の1つ(後部コクピット)
- パイロット用コクピット
- 搭載エンジン
- コンフォーマル燃料タンク
- 武装(空対地、空対空)
- F-15Eストライク・イーグルの主な特徴
- 写真で見るF-15Eストライク・イーグル
- 機体形状
- 離陸
- 着陸
- 空中給油
- 駐機中
- 搭載武器
- ミサイル等の発射
- フレア
- エンジン
- F-15イーグルの歴史
- 1972年7月:F-15A初飛行
- 1974年11月:最初の引き渡しと訓練開始
- 1976年1月:F-15初号機引き渡し
- 1979年:F-15C/D納入
- 1988年4月:F-15Eの量産初号機納入
- F-15Eストライク・イーグルの諸元
- 参考リンク