F-14トムキャット(Tomcat)、映画初代トップガン(1986年公開)の主役機であり、映画2代目トップガン マーヴェリック(2022年公開)でも登場しました。米国海軍ではすでに退役しています。
F-14トムキャットは、艦載機(米国海軍の空母艦載機)です。強力なレーダーと長射程のミサイルを搭載した、強力な攻撃力を備えた機体です。
F-14トムキャットが現役の時代には、F-15イーグルとどっちが強いとかが話題になり、F-14トムキャットの大きな特徴の1つでもある可変翼により、空戦性能(機動性)が高いという評価もあった覚えがあります。
以下、主に米国海軍のWebサイトからの情報と、National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)の写真を使いながら説明します。
F-14トムキャットとは
F-14トムキャットは、米国海軍の空母艦載機です。
- 外観上は、コンピュータにより自動的に後退角が制御される可変翼が大きな特徴です。
図1 F-14トムキャット(Tomcat)
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
F-14トムキャットの主な特徴
F-14トムキャットの主な特徴を列挙します。
F-14トムキャットは米国海軍の艦載機で、空母からカタパルトにより発艦、任務を終えると空母に着艦します。このため、機体は非常に薄く見えますが、カタパルト発艦や着艦に耐える頑丈な着陸装置(写真など)と機体構造となっています。
また、可変翼は機体の大型化や重量増の大きな要因の1つでもあります。
リフティング・ボディ
リフティング・ボディとは、胴体そのものが翼の様に揚力を発生させる形状の胴体のことです。
F-14トムキャットの場合、主翼前方にある固定翼の部分と後部胴体部分とで揚力を発生させている見た目に平たい胴体のことです。
リフティング・ボディにメリットには、急激な機首上げを行った場合の荷重が胴体部にもかかるため、主翼にかかる負担を小さくできることがあります。
私はF-14トムキャットの機体形状は美しく好きなのですが、リフティング・ボディを採用することで、空間に浮かぶような機体形状となっているためだと考えています。
長距離ミサイル搭載
長距離(200km超)空対空ミサイルAIM-54フェニックスを6発搭載可能です。
- 1970年代に、目標探知用の高性能レーダーと射撃統制システムを備え、空母から飛び立ち、ミサイル発射地点からさらに200km離れた目標にミサイルを発射できたということです。
- AIM-54フェニックスを6発搭載して空母から発艦可能ですが、着艦は重量制限を超えるため、運用ではAIM-54は4発までとし、他のミサイルを搭載していました。
図2 F-14トムキャット:AIM-54フェニックスミサイル発射
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
可変翼システム
現在米国で運用されている可変翼を持つ軍用機は、超音速爆撃機B-1Bランサーのみです。
可変翼システムは、重量増による制約はありますが、低速から超音速での飛行が可能となります。
可変翼の後退角を20~68度の範囲で変化させることができ、見た目にも大きな可動範囲が分かります。
- 主翼を開いた状態は、空母からの発艦や着艦時などの低速時
- 主翼を閉じた状態は、高速飛行時
また、コンピュータで自動的に主翼の後退角を変化させているため、機動性にも優れるメリットがあります。
可変翼システムによるメリットなどを列挙します。
- 空母からの発艦や着艦などで可変翼を広げて揚力を確保できる。
- 高速飛行の場合には、可変翼を後退させて空気抵抗を減らすことができる。
- 接近戦による機体速度の低下などで失速しそうになると可変翼の後退角を変化させ失速を防ぐことができる。
- F-14トムキャットは艦載機なので、可変翼を後退させることで格納スペースを小さくできる。
可変翼システムによるデメリットを列挙します。
- 可変機構を組み込むことによる重量の増加。
- 複雑なシステムによるメンテナンス性が悪くなる。
- 製造費用が上がる。
F–14トムキャットの可変翼システムの基本構造部材はチタン製で、材料費も加工費も高くなっていたようです。(F-14の書籍で読んだように思うのですが、確認できませんでした。)
写真で見るF-14トムキャット
F-14トムキャットをNational Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの写真を使い説明します。
この記事を書くにあたり、写真を改めて探しました。F-14トムキャットはすでに退役した古い機体なので、思いのほか時間がかかりました。
Flickerには、ここで紹介していない写真もありますので、興味のある方は探してみてください。
機体形状
下図は、機体上方からの写真です。
- 主翼を後退させた状態です。
- AIM-9サイドワインダーを搭載しています。
この写真も最後に紹介する空母甲板上のシルエットと共に好きな写真です。
図3-1 F-14トムキャット:上方から
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
下図は、前方からの写真です。
- 空母(CVN-71 Theodore Roosevelt)から発艦したところです。
図3-2 F-14トムキャット:前方から
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
下図は側方からの写真です。
- AMRAAM(advanced medium range air-to-air missile)を搭載しています。
図3-3 F-14トムキャット:側方から
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
下図は機体下方からの写真です。
- LANTIRN(Low-Altitude Navigation and Targeting Infrared for Night)ポッドを搭載しています。
図3-4 F-14トムキャット:下方から
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
下図は、後方からの写真です。
- 赤いH字型はエアブレーキです。
- 白黒の縞模様は、アレスティング・フックです。
図3-5 F-14トムキャット:後方から
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
空母からの発艦
空母からの発艦を見ていきます。
下図は、F-14トムキャット発艦直前の写真です。
- 発艦に備え低い姿勢になっています。
- 前輪付近の上記は、蒸気カタパルトによるものです。
図4 F-14トムキャット:発艦(その1)
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
下図は、カタパルトで一気に加速させたF-14トムキャットが甲板から離れる直前の写真です。
- 蒸気カタパルトにより低い姿勢のまま離陸可能な速度まで一気に加速します。
図4 F-14トムキャット:発艦(その2)
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
空母のカタパルト発艦の詳細は、以下の記事をご参照ください。
空母への着艦
空母への着艦を見ていきます。
空母は島の様に大きいですが、空母の飛行甲板は艦載機を発・着艦や補給整備をするには十分広いとはいえないようです。
- 機体後部のアレスティング・フックを確認できます。
- F-14トムキャットは最大離陸重量で発艦は可能ですが、最大離陸重量での着艦はできないため、着艦時の制限重量オーバー分は、着艦前に投棄する必要がありました。
図5 F-14トムキャット:着艦
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
空母甲板と格納庫
F-14トムキャットは、主翼は曲がりませんが、後退させることで機体の幅を狭くすることができます。
下図は、空母(CVN-71 Theodore Roosevelt)甲板上の写真です。
- 中央にはカタパルトによる発艦のため主翼を広げたF-14トムキャットを確認できます。
- 駐機中及び発艦ポジションに向かうF-14トムキャットは、主翼を後退させています。
図6-1 F-14トムキャット:空母甲板
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
下図は、格納庫内を移動中のF-14トムキャットです。
図6-2 F-14トムキャット:空母の格納庫
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
空中給油
F-14トムキャットは、もちろん空中給油可能です。
下図は、KC-10エクステンダーから空中給油を受ける写真です。
図7 F-14トムキャット:空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
はかせの好きなシルエット
最後の1枚は、F-14トムキャットらしいシルエット(色調をセピアにしています)で、私の好きな写真です。
- 空母(CVN 68 Nimitz)の飛行甲板上のF-14トムキャットです。
図8 F-14トムキャット:シルエット
出典:National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)のFlickrからの画像(加工しています)
F-14トムキャット(Tomcat)の歴史
F-14トムキャットの開発について説明します。
F-14トムキャットは、1968年、当時米国海軍の空母戦闘機として開発中だったF-111Bに代わる戦闘機として設計されました。
1970年12月:F-14トムキャット初飛行
- P&W製TF30エンジン搭載
- AWG-9システムを採用
1973年:配備開始
2006年:全機退役
F-14トムキャットの諸元
Naval History and Heritage Command(米国海軍)のWebサイトの情報から主要諸元を下表に示します。
全長 | 19.07 m |
---|---|
全高 | 4.87 m |
全幅 | 主翼前方時:19.5 m
主翼後退時:11.58 m |
エンジン |
|
最大離陸重量 | 33,723 kg
空虚重量:18,190 kg |
速度 | 2,484 km/h(マッハ2.08)
巡航速度:927 km/h(マッハ0.77) |
高度 | 17,068 m以上 |
航続距離 | – m |
燃料搭載容量 | – kg |
武装(例) |
|
乗員 | 2名(複座) |
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- Naval History and Heritage Command(米国海軍)のF-14トムキャットの紹介ページ
プラモデル(スケールモデル)
F-14トムキャットはすでに退役していますので、構造をじっくりみたければ、プラモデルを作ってみるのも1つの手段かもしれません。
私はガンプラは作りますが、塗装はできないのでいわゆるスケールモデルには手をださなようにしています。タミヤ製のF-14Dは、時々購入したくなりますが。
- 2023年12月10日現在、タミヤショップオンラインでは定価9,460円(税込)です。
まとめ
F-14トムキャットは、米国海軍の空母艦載機です。すでに退役となっていますが、強力なレーダーと長射程のミサイルによる強力な攻撃力を備えた機体です。
個人的には可変翼のメカニズムと美しい機体形状が好きな機体です。
F-15トムキャットが現役の時代には、F-15イーグルとどっちが強いとかが話題になり、F-14トムキャットの大きな特徴の1つでもある可変翼により、空戦性能(機動性)が高いという評価もあった覚えがあります。
ここでは、主に米国海軍のWebサイトからの情報と、National Museum of the U.S. Navy(米国海軍)の写真を使いながら以下の項目で説明しました。
- F-14トムキャットとは
- F-14トムキャットの主な特徴
- リフティング・ボディ
- 長距離ミサイル搭載
- 可変翼システム
- F-14トムキャットの主な特徴
- 写真で見るF-14トムキャット
- 機体形状
- 空母からの発艦
- 空母への着艦
- 空母甲板と格納庫
- 空中給油
- はかせの好きなシルエット
- F-14トムキャット(Tomcat)の歴史
- 1970年12月:F-14トムキャット初飛行
- 1973年:配備開始
- 2006年:全機退役
- F-14トムキャットの諸元
- 参考リンク