戦闘機界のベストセラーといわれるF-16ファイティングファルコンの最新型は、ブロック70/72と呼ばれています。
航空機は軍用機に限らず高額の開発予算と年月を必要とします。「ブロック」の考え方は、ハードウェアを動かすソフトウェアを含むシステム開発として一般的な方法となっているようです。
ブロック化は、デジタル・ツインの様な派手さはありませんが、優れたモノづくり技術の1つと考えています。
ここでは、「ブロック」について、F-16のブロック70を例に説明します。
ブロックとは
ステルス機に限らず、現代の航空機には最新の技術や様々な要求が求められるため、開発期間が長期化しています。
航空機の開発は、機体、エンジン、及び、アビオニクス(ソフトウェア)に大きく分けることができます。
そこで、航空機に求められる機能や仕様などの能力に優先順位をつけることで、まずは、最低限の能力を備えた状態で実用化(量産化)し、その後は、主にソフトウェアのアップグレードにより能力を高めたり追加していくブロック方式による開発が行われています。
ソフトウェアをブロック化することで、量産機の段階的な能力向上を実現することが可能となっています。
ブロック化の他にも、
- モジュール化によるアップグレード
- 専用システムからオープン・アーキテクチャの利用
などの方法も併用されています。
F-16ファイティングファルコンのブロック70
2024年7月現在、F-16ファイティングファルコンの最新型は、ブロック70/72とよばれています。
- F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)は、最も先進的な第4世代の戦闘機です。
下図は、F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)の写真です。
- シンプルでスリムだったF-16ファイティングファルコンも、外観でも分かるほど改修されています。
図1 F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)
出典:EDWARDS AFB(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)の特徴を説明します。
最新のレーダー:APG-83 AESA
ノースロップ・グラマン製のAPG-83 AESAレーダーは、F-22ラプターやF-35AライトニングIIのAESAレーダーとのハードウェアおよびソフトウェアの共通利用をしています。
- AESA(Active Electronically Scanned Array):フェイズドアレイレーダーです。
これにより、F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)は、第5世代戦闘機のレーダー機能を利用することができます。
APG-83 AESAレーダーには、次の機能があります。
- より優れた状況認識、柔軟性、迅速な全天候型ターゲティング(目標捕捉)
- ターゲットエリアの詳細と、スルーやズーム機能で調整可能なデジタルマップ表示
新しい高解像度ディスプレイによる情報認識
新しい高解像度センター・ペデスタルディスプレイ(CPD: Center Pedestal Display )を搭載することで、パイロットに重要な戦術イメージ( critical tactical imagery)を提供し、AESAレーダー情報とターゲティング・ポッドのデータを最大限に活用できるようになりました。
新しいCPDの特徴、次の通りです。
- カラー・ムービング・マップ
- より大きく管理しやすい空対空状況ディスプレイ
- ディスプレイ間の情報切り替えが可能なズーム機能
- 飛行計器データのデジタル表示
- カラー/ナイト・ヘルメット・マウント・ディスプレイを実現可能
Auto GCAS(自動地上衝突回避システム)搭載
自動地上衝突回避システム(Auto GCAS:Automatic Ground Collision Avoidance System )は、致命的な墜落防止を目的として開発されました。
- Auto GCASは、2014年後半に米国空軍で運用が開始されています。
- 地形への制御飛行(CFIT:Controlled Flight Into Terrain)と呼ばれる操縦できる状態での墜落事故を減らすように設計されています。
構造寿命の向上
F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)の構造寿命(機体寿命)は、約12,000時間となっており、従来のF-16に比べ50%以上延びています。
構造寿命(機体寿命)が約12,000時間ということは、次の意味合いがあります。
- ほとんどの空軍にとって、少なくとも40年の耐用年数がります。
- 全耐用年数の間、構造修理の延長がないことが見込まれ、信頼性が高く、メンテナンスが容易です。
コンフォーマル燃料タンクと改良型エンジン
コンフォーマル燃料タンクは、空力性能を犠牲にすることなく、燃料の増加と航続距離の延長を実現しています。
F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)は、改良された高性能エンジンを搭載しています。
写真で見るF-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)
F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)をUSAF(米国空軍)のWebサイトの写真を使い説明します。
飛行中
下図は、飛行中のF-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)の写真です。
- 外観的には、パイロット席後方から尾部にいたる角ばった形状が特徴です。
図2 F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)
出典:EDWARDS AFB(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、F-16ファイティングファルコンです。
- 図2-1と比べると、単座と複座の違いはありますが、パイロット席後方から尾部に至る形状の違いが分かります。
図3 F-16ファイティングファルコン
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、機体下方向からみた写真です。
図4 F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)
出典:EDWARDS AFB(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
着陸
下図は、着陸するのF-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)の写真です。
- パイロット席後方から尾部にいたる角ばった形状が分かります。
図5 F-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)
出典:EDWARDS AFB(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
まとめ
戦闘機界のベストセラーといわれるF-16ファイティングファルコンの最新型は、ブロック70/72です。
航空機は軍用機に限らず高額の開発予算と年月を必要とします。「ブロック」の考え方は、ハードウェアを動かすソフトウェアを含むシステム開発として一般的な方法となっており、優れたモノづくり技術の1つと考えています。
ここでは、「ブロック」について、F-16のブロック70を例に、以下の項目で説明しました。
- ブロックとは
- F-16ファイティングファルコンのブロック70
- 最新のレーダー:APG-83 AESA
- 新しい高解像度ディスプレイによる情報認識
- Auto GCAS(自動地上衝突回避システム)搭載
- 構造寿命の向上
- コンフォーマル燃料タンクと改良型エンジン
- 写真で見るF-16ファイティングファルコン(ブロック70/72)
- 飛行中
- 着陸