F-15Aストリーク・イーグル:無塗装の機体による世界記録への挑戦機

F-15Aストリーク・イーグル 第4世代戦闘機
出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイトからの画像(加工しています)

最強の戦闘機F-15シリーズ、最新型はF-15EXイーグルIIです。

ここでは、数々の世界的な記録をつくったF-15Aストリーク・イーグルについて、主に米国空軍の写真を使い紹介します。

軽量化のため記録挑戦に不要な装備を外し機体塗装もしないF-15Aストリーク・イーグルは、シンプルな機体形状とパワフルな2基のエンジンによる最強の戦闘機となるF-15シリーズの素性のよさを感じます。

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F-15Aストリーク・イーグルによる世界記録への挑戦

1975年1月、F-15Aストリーク・イーグル(Streak Eagle)によるジェット機の上昇速度(time-to-climb)世界記録への挑戦(プロジェクト・ストリーク・イーグル)が行われました。

プロジェクト・ストリーク・イーグルの技術的な目的は、

  • 管理された試験条件下でのF-15イーグルの限界高度と性能限界に関するデータ収集

でした。

F-15Aストリーク・イーグルは、候補機体の中から軽量な機体であることや、プロジェクト後に元に戻す必要性などを考慮して選ばれています。

プロジェクトに不要な装備を取り外し、必要な装備を追加した最終的な重量は、約16,692 kgとなり、他の機体より816 kg軽い重量でした。

取り外された装備等

このプロジェクトのために、プロジェクトには不要な以下の装備等が取り外され、F-15Aストリーク・イーグルとなっています。

  • フラップとスピードブレーキのアクチュエーター
  • 内部武装
  • レーダーと火器管制システム
  • 重要でないコックピット・ディスプレイと無線
  • ジェネレーター
  • ユーティリティの油圧システム

さらに、機体を塗装しないことで、塗料(約22.7kg)分軽くなっています。

ストリーク・イーグル(Streak Eagle)の由来は、この塗装をしない金属面がむき出しの機体からといわれています。

追加された装備等

プロジェクトのために必要な以下の装備などが追加されています。

  • 改良された酸素システム
  • パイロット用のフル加圧スーツ用のサポート装備
  • 予備バッテリー
  • 長いピトーブーム
  • 肩越しのビデオカメラ
  • バッテリー駆動の無線機
  • 高感度のGメーターやジャイロ
  • 大型VHFアンテナ
  • 尾翼フックに代わる特別仕様のホールドダウン装置

プロジェクトの記録

プロジェクトでは6種類の飛行が行われ、これまでの記録を15~33%上回る記録が達成されました。

30,000 mの記録の飛行プロファイルを意訳してみました。

  • 7,000ポンドの燃料を搭載し、フルアフターバーナーでホールドダウンケーブルからリリース(ホールドダウンケーブルで滑走路に固定された状態からリリースされ、記録開始)
  • リリースから3秒後までに主輪を格納し、129 km/h(70ノット)で旋回
  • 777 km/h(420ノット)でインメルマン旋回(垂直旋回)し、2.65Gを保持する。
  • 高度9,753 m(32,000フィート)に1.1マッハで水平かつ背面飛行で到達
  • 右旋回し、10,972 m(36,000フィート)まで上昇しながら1,111 km/h(マッハ0.9、600ノット)まで加速
  • マッハ2.25まで加速し、4.0G、上昇角60度にする。
  • 60度の上昇を維持
  • アフターバーナーが止まったら停止
  • フレームアウト(エンジンの燃焼が停止)したらエンジン停止
  • 101 km/h(55ノット)、31,394 m(103,000フィート)で弾道飛行
  • 55度の急降下
  • 16,764 m(55,000フィート)以下になったら、エンジンを始動
  • 帰投
はかせ
はかせ

意訳の正確性には自信がありませんので、ご参考までに。

ですが、空戦とは違う過酷さを感じます。

プロジェクト後

プロジェクト終了後のF-15Aストリーク・イーグルは、米国空軍で実運用されることなく、1980年に米国空軍博物館に移管されました。

機体を腐食から保護するため塗装されました。

  • 塗装色は、青のツートンカラーを用いたコンパス・ゴースト・スキーム(Compass Ghost scheme)です。

2021年1月からフルレストアされました。

写真で見るF-15Aストリーク・イーグル

F-15Aストリーク・イーグルを、主にNATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイトの写真を使い説明します。

プロジェクト当時の写真

1975年に行われたプロジェクトなので、公開されている写真を見ても時代を感じます。

はかせ
はかせ

1975年は、昭和50年です。写真からも時代を感じます。

下図は、離陸前のF-15Aストリーク・イーグルの写真です。

  • 軽量化のため塗装されていないため、表面は素材に近い色です。
  • 機首先端に設置されているのはノーズブームです。
  • コクピットにはパイロットが搭乗しています。
  • 機体がホールドダウンケーブルで地上(滑走路)に固定されています。
F-15Aストリーク・イーグル:プロジェクト当時(その1)

231214-F-ZS999-1002 F-15A Streak Eagle F-15A, tail number 72-0119, sits on the runway at Grand Forks Air Force Base, North Dakota in March 1975. A specialized hold back explosive bolt attached to a steel cable replaced the tailhook for the record attempts. With engines at full power, the pilot released the aircraft and reached rotation speed in approximately 3 seconds.(Courtesy Photo)

図1 F-15Aストリーク・イーグル:プロジェクト当時(その1)

出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

ノーズブームの詳細は、以下の記事をご参照ください。

下図は、離陸時の写真です。

  • 軽量化のため塗装されていないため、表面は素材に近い色です。使われている素材の違いやパーツの分割状況が推測できると思います。
F-15Aストリーク・イーグル:プロジェクト当時(その2)

240123-F-IO108-002 F-15 Streak Eagle F-15 Streak Eagle in Flight. 412TW-PA-22370 The museum’s single-seat F15A, nicknamed “Streak Eagle,” broke eight time-to-climb world records between Jan. 16 and Feb. 1, 1975.(PHOTO BY:-)

図1 F-15Aストリーク・イーグル:プロジェクト当時(その2)

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > UPCOMING > Photos>からの画像

下図は、飛行中の写真です。

  • 主翼や胴体下面に余分なものがない、F-15シリーズの基本となる機体形状がわかります。
  • 主翼や胴体のパーツの分割状況が推測できると思います。
F-15Aストリーク・イーグル:プロジェクト当時(その3)

231214-F-ZS999-1003 F-15A Streak Eagle An F-15A Streak Eagle takes flight.(Courtesy Photo)

図1 F-15Aストリーク・イーグル:プロジェクト当時(その3)

出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

グレーに塗装された機体

グレーに塗装されたF-15Aストリーク・イーグルの写真を2枚紹介します。

  • ノーズブームもないので、展示機として再塗装された写真だと思います。

図2 F-15Aストリーク・イーグル:グレイ塗装(その1)

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > UPCOMING > Photos>からの画像

図2 F-15Aストリーク・イーグル:グレイ塗装(その2)

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > UPCOMING > Photos>からの画像

コンパス・ゴースト・スキームで塗装された機体

2021年からのレストア後のF-15Aストリーク・イーグルの写真を2枚紹介します。

  • 塗装色は、青のツートンカラーを用いたコンパス・ゴースト・スキーム(Compass Ghost scheme)です。
  • 機首、機体やロゴがきれいなので、レストア後だと判断しています。
はかせ
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機体と青空や緑との対比が、役割を終えてたたずむ感じのする1枚です。

F-15Aストリーク・イーグル:2021年のレストア後(その1)

240528-F-IO108-057 McDonnell Douglas F-15 Streak Eagle DAYTON, Ohio — McDonnell Douglas F-15 Streak Eagle at the National Museum of the USAF on May 28, 2024. The museum’s single-seat F15A, nicknamed “Streak Eagle,” broke eight time-to-climb world records between Jan. 16 and Feb. 1, 1975.(U.S. Air Force photo by Ken LaRock)

図3 F-15Aストリーク・イーグル:2021年のレストア後(その1)

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > UPCOMING > Photos>からの画像

F-15イーグルシリーズの機体そのものはシンプルな形状です。

パワフルな2基のエンジンとあいまって最強の戦闘機となったと考えています。

F-15Aストリーク・イーグル:2021年のレストア後(その2)

240528-F-IO108-055 McDonnell Douglas F-15 Streak Eagle DAYTON, Ohio — McDonnell Douglas F-15 Streak Eagle at the National Museum of the USAF on May 28, 2024. The museum’s single-seat F15A, nicknamed “Streak Eagle,” broke eight time-to-climb world records between Jan. 16 and Feb. 1, 1975.(U.S. Air Force photo by Ken LaRock)

図3 F-15Aストリーク・イーグル:2021年のレストア後(その2)

出典:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > UPCOMING > Photos>からの画像

参考情報

リンク

この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。

英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。

  • Flashback: McDonnell Douglas F-15A Streak Eagle

動画(YouTubeチャンネル)

F-15Aストリーク・イーグルの動画は、以下をご参照ください。

National Museum of the U.S. Air ForceのYouTubeチャンネルです。

  • Videos of the F-15 Streak Eagle at the National Museum of the USAF:

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まとめ

最強の戦闘機F-15シリーズ、最新型はF-15EXイーグルIIです。

ここでは、数々の世界的な記録をつくったF-15Aストリーク・イーグルについて、主に米国空軍の写真を使い、以下の項目で紹介しました。

  • F-15Aストリーク・イーグルによる世界記録への挑戦
    • 取り外された装備等
    • 追加された装備等
    • プロジェクトの記録
    • プロジェクト後
  • 写真で見るF-15Aストリーク・イーグル
    • プロジェクト当時の写真
    • グレーに塗装された機体
    • コンパス・ゴースト・スキームで塗装された機体
  • 参考情報
    • リンク
    • 動画(YouTubeチャンネル)
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軽量化のため余分装備を外し、機体塗装もしない機体からは、シンプルな機体形状とパワフルな2基のエンジンによる最強の戦闘機の素性のよさを感じます。

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