E-7ウェッジテイル(Wedgetail)は、早期警戒管制機(AWACS)であるE-3セントリーの後継機です。
早期警戒管制機は、地上に設置するようなレーダーを搭載しており、敵味方を含む戦場の詳細な情報をリアルタイムに把握することができます。
E-3セントリーは巨大な回転する円盤(レーダー)を背負った特徴的な外観をもちますが、E-7ウェッジテイルは、回転しない板の様な形状のレーダーとなっています。
ここでは、主に米国空軍のWebサイトの情報からE-7ウェッジテイル(Wedgetail)についてまとめています。
早期警戒管制機(AEW&C)E-7ウェッジテイル(Wedgetail)とは
E-7ウェッジテイル(Wedgetail)は、早期警戒管制機(AWACS)であるE-3セントリーの後継機です。
なお、E-3セントリーとE-7ウェッジテイルは、日本語では早期警戒管制機と同じですが、英語では次のようになります。
- E-3セントリーは、AWACS(Airborne Warning and Control System)
- E-7ウェッジテイルは、AEW&C(Airborne Early Warning & Control)
E-7ウェッジテイルは、外観上の特徴でもあるE-3セントリーの巨大なレーダーが、最新のスキャニングレーダーになっただけでなく、中身もアナログからデジタルとなるなど大幅な性能向上となっています。
E-7ウェッジテイルは空中警戒管制システム(AEW&C)機であり、航空優勢をえるために次の情報を提供します。
- 作戦空域における敵や味方も含めた対象の活動状況の認識
- 作戦で示された、指揮統制、戦闘部隊のマネジメント、戦域の天候などの監視により、敵行動を含めた味方への早期警戒情報の提供
このため、次のようなシステムを備え、戦場の正確なリアルタイム画像を得ることができます。
- 指揮統制戦闘マネジメント(BMC2:battle management command and control)
- 戦域の監視、目標探知、追跡プラットフォーム
基本的にE-3セントリーと同様で機能・性能が向上しているイメージですが、AEW&C(Airborne Early Warning & Control)という名称から、よりコントロール能力が上がっていると推測しています。
下図は、E-7ウェッジテイルの写真です。
- 旅客機をベースに、背中に板(くさび)状の巨大なレーダーを搭載しています。
- 他にも様々なセンサーを備え、中身は様々な情報を処理するコンピュータシステムが搭載されています。
図1 E-7ウェッジテイル(Wedgetail)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
E-7ウェッジテイルの主な特徴
E-7ウェッジテイルは、民間機のボーイング737-700をベースに、板状の巨大なレーダーを搭載しています。
- 柔軟で先進的な空中移動標を探知することができます。
- 様々な環境下で、関連する航空機や地上システム間などの見通し外接続を可能にします。
- 強力なMESAレーダー(電子走査型スキャニングレーダー)による空域認識能力により、様々な高品質のセンサー情報を提供することで戦術的優位性を維持できます。
MESA:Multi-role Electronically Scanned Array RADAR Antenna
E-7ウェッジテイルの主要システム
E-7ウェッジテイルの主要システムには、次のものがあります。
- MESAレーダーとは、多用途(マルチロール)の電子スキャニングタイプのレーダーです。
- 高度な空中移動目標表示と戦闘マネジメント、コマンド・コントロール機能、空中戦闘マネジメントの強化
基本的には、作戦空域でのすべての目標の探知、識別、追跡、報告するための空軍の主要なセンサー(目)の役割を果たします。
また、正確かつリアルタイムなビジュアルデータにより、これまでより広い空域を認識することで、幅広い環境と様々なミッションにおいて、個々の航空機をコントロールしたり指示を与えることができます。
写真で見るE-7ウェッジテイル
E-7ウェッジテイルをAIR COMBAT COMMAND(米国空軍)のWebサイトの写真を使い説明します。
なお、写真のE-7ウェッジテイルは、オーストラリア空軍の機体です。
機体形状
下図は、E-7ウェッジテイルとE-3セントリーの写真です。
- 下図手前が、オーストラリア空軍のE-7ウェッジテイルです。
- 下図奥側が、米国空軍のE-3セントリーです。
- E-3セントリーの方がスリムな機体であることが分かります。
図2-1 E-7ウェッジテイルとE-3セントリー
出典:AIR COMBAT COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
下図は、横からの写真です。
- 旅客機と違い、窓が少ないことが分かります。
- レーダーは、前方に傾斜していることが分かります。
- 機体の背中に複数のアンテナやセンサーがあります。
図2-2 E-7ウェッジテイル:横から
出典:AIR COMBAT COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
下図は、機体下方からの写真です。
- 機首下部の突起部分を確認できます。
- 機体下部にも多くのフィンがあります。
図2-3 E-7ウェッジテイル:下から
出典:AIR COMBAT COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
離陸
下図は、離陸時の写真です。
- 垂直尾翼が大きいことが分かります。
図3 E-7ウェッジテイル:離陸
出典:AIR COMBAT COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
着陸
下図は、着陸時の写真です。
- MESAレーダーも大きいのですが、それ以上に垂直部翼の大きさが目立ちます。
図4 E-7ウェッジテイル:着陸(その1)
出典:AIR COMBAT COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
着陸時の写真をもう1枚。
図4 E-7ウェッジテイル:着陸(その2)
出典:JOINT BASE ELEMENDORF-RICHARDSON(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
空中給油
下図は、KC-135ストラトタンカーから空中給油を受けるE-7ウェッジテイルの写真です。
機体上面の各種センサーを確認できます。
図5 E-7ウェッジテイル:空中給油
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
E-7ウェッジテイルの歴史
E-7ウェッジテイルの歴史(というほどではありませんが)について説明します。
なお、E-7ウェッジテイルが実戦配備されるまでは、引き続きE-3セントリー(AWACS)が運用されるため、E-3セントリーの近代化改修も進められています。
2022年:米国空軍はE-7AをE-3後継機に選定
- 最初の2機は、ラピッド・プロトタイピング取得経路(the rapid prototyping acquisition pathway)による。
F-15EXイーグルIIと同じ様な取得方法なのではないかと思います。
2023年:ボーイング社に試作機2機発注
- E-7ウェッジテイルは、生産開始は2025年、初号機は2027年配備、2032年までに合計26機になる計画
今後の予定
2024年8月9日、USAF(米国空軍)Webサイトのニュースによると、E-7Aウェッジテイルの試作機(operationally representative prototype aircraft)が、2028年度に2機納入される予定です。
- 当初の計画より遅れていますが、進んでいるようです。
参考:US Air Force reaches price agreement for E-7A rapid prototype program with Boeing(Published Aug. 9, 2024)
E-7ウェッジテイルの諸元
Royal Australian Air ForceのWebサイトの情報からE-3Aウェッジテイルの主要諸元を下表に示します。
全長 | 33.6 m |
---|---|
全高 | 12.6 m |
全幅 | 34.3 m |
エンジン |
|
重量 | – kg |
最大離陸重量 | 77,565 kg |
最大着陸重量 | 60,782 kg |
速度 | 955 km/h
巡航速度:760 km/h |
高度 | 12,496 m |
航続距離 | 7,040 km |
燃料搭載容量 | – kg |
レーダードーム | 直径:
高さ(厚み): |
乗員 | 4名(フライトクルー)
他にミッションクルー |
参考リンク
この記事は、写真は主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- 写真は、主にUSAF(米国空軍)のWebサイトから。
- Royal Australian Air ForceのE-7Aウェッジテイル(Wedgetail)の紹介ページ
まとめ
E-7ウェッジテイルは、早期警戒管制機(AWACS)であるE-3セントリーの後継機です。
E-3セントリーは、巨大で回転する円盤(レーダー)を背負った特徴的な外観をもちますが、E-7ウェッジテイルは、回転しない板状のレーダーとなっています。
ここでは、主に米国空軍のWebサイトの情報からE-7ウェッジテイルについて、以下の項目で説明しました。
- 早期警戒管制機(AEW&C)E-7ウェッジテイル(Wedgetail)とは
- E-7ウェッジテイルの主な特徴
- E-7ウェッジテイルの主要システム
- 写真で見るE-7ウェッジテイル
- 機体形状
- 離陸
- 着陸
- 空中給油
- E-7ウェッジテイルの歴史
- 2022年:米国空軍はE-7AをE-3後継機に選定
- 2023年:ボーイング社に試作機2機発注
- 今後の予定
- E-7ウェッジテイルの諸元
- 参考リンク