F-117ナイトホーク(Nighthawk)は、世界初のステルス機として実戦投入されました。
現在のステルス機である、F-22ラプター、F-35AライトニングIIの丸みを帯びた機体形状とは違い、F-117ナイトホークは平面が際立つ独特の外観を持つ機体です。
すでに退役となっているF-117ナイトホークですが、2023年5月のノーザン・エッジ23などで今でも飛んでいます。
ここでは、世界初のステルス機としてスカンクワークスが開発したF-117ナイトホーク(Nighthawk)について説明します。
F-117ナイトホーク(Nighthawk)とは
F-117ナイトホーク(Nighthawk)は、世界初のステルス機として実戦投入されました。
F-117ナイトホーク(Nighthawk)の開発目的は、
- 敵に探知されることなく活動できるジェット戦闘機を求める国家的な緊急課題に応える。
ことでした。
これは、敵のレーダーに感知されずに行動できるという大胆な要求であり、スカンクワークスにより極秘かつ短期間で開発されました。
図1 F-117ナイトホーク(Nighthawk)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
2020年代のステルス戦闘機と言えば、F-22ラプター、F-35AライトニングIIですが、丸味を帯びた機体形状とは異なり、F-117ナイトホークは平面が際立つ独特の機体です。
ステルス機の開発技術
1970年代に入ると、新しい素材や技術によりレーダーを回避する「ステルス性」を備えた航空機の設計が可能になりました。
しかし、ステルス性について考慮できるようになったとはいえ、当時の技術(コンピュータや解析技術)では、F-117ナイトホークのような平面反射を考慮するのが現実的な設計限界でもあったようです。
そして、現在では、さらに優れた素材や技術により、F-22ラプター、F-35AライトニングIIのようなステルス性に優れた機体設計ができるようになっています。
F-117ナイトホークの主な特徴
F-117の特長は、
- 伝統的な流麗な航空機デザインとは異なり、レーダー波を反射する平面を組み合わせたユニークなデザイン
- 角張ったパネルにレーダー吸収材を外付け、レーダーからはほとんど見えない(観測されない)
ことです。文字にすると今一つ分かりにくいのですが、F-117ナイトホークの外観を見れば一目瞭然です。
また、機体制御は、4重に冗長化されたフライ・バイ・ワイヤ操縦システムにより行われます。
言葉がよくありませんが、F-117ナイトホークはコンピュータで無理やり安定化させて飛行させているイメージです。
写真で見るF-117ナイトホーク
F-117ナイトホーク(Nighthawk)を米国空軍のWebサイトの写真を使い説明します。
機体形状
下図は、機体上方からの写真です。
- 平面を組み合わせた機体であることが分かります。
- 尾翼は逆ハの字型です。
- コクピットは視認性がよいとは思えませんが、ステルス性を優先した結果です。
- コクピットの前にはセンサーを確認できます。
図2-1 F-117ナイトホーク:上方から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、前方からの写真です。
- 主翼が薄くフラットな形状となっています。
- 空気取入口の形状が分かりやすいかと思います。
- 空気取入口の上側の開口部は、メンテナンス用のハッチになっているようです。
図2-2 F-117ナイトホーク:前方から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は横方向からの写真です。
- 特徴的な機首と尾翼の形状が分かります。
- 主翼の薄さが分かります。
図2-3 F-117ナイトホーク:横から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、機体下方からの写真です。
- 機体下面は主翼下面とともにフラットな形状であることが分かります。
- 機体後方がジグザグの形状になっているのはステルス機特有の形状です。
図2-4 F-117ナイトホーク:下方から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、機体後方からの写真です。
- ドラッグシュートを使い着陸した時の写真です。
- 大きく後方に傾斜した尾翼であることが分かります。
図2-5 F-117ナイトホーク:後方から
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
離陸
下図は、離陸するF-117ナイトホークです。
- 現在のステルス機である、F-22ラプター、F-35AライトニングIIの丸みを帯びた機体形状とは違い、F-117ナイトホークの平面で構成された直線的なデザインの機体形状が分かります。
図3 F-117ナイトホーク:離陸
出典:HOLLOMAN AFB(米国空軍)のebサイト<Home > News > Photos>からの画像
着陸
下図は、着陸するF-117ナイトホークです。
図4 F-117ナイトホーク:着陸
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
空気取入口から排気口のレイアウト
下図の写真で、空気取入口から排気口までの位置関係が分かります。
- 排気口は、機体下面側(地上側)からは直接見えないようになっています。
- 排気ノズル(下図の主翼と尾翼との間の銀色の部分)による静音化も図られているようです。
- F-117ナイトホークの機体形状は、正三角形に近いイメージがありますが、先端が鋭角な二等辺三角形に近い形状です。
- 逆ハの字型の2つの尾翼は、後方ほど狭くなっています。
図5 F-117ナイトホーク:空気取入口から排気口
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
空中給油
下図は、F-117ナイトホークがKC-10エクステンダーから空中給油を受けている写真です。
- 1990年代の写真です。
図6 F-117ナイトホーク:空中給油(その1)
出典:AIR COMBAT COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、F-117ナイトホークの給油口が確認できる写真です。
- 給油口は、コクピットの後方にあります。
- 三角形を組み合わせた機首形状が分かります。
- コクピットのハッチ部分がギザギザになっているのは、ステルス機で見られる形状です。
図6 F-117ナイトホーク:空中給油(その2)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
参考:機体形状の違い
下図は、左から、F-22ラプター、F-117ナイトホーク、F-4ファントム、F-15イーグルです。
4機とも双発機ですが、機体の平面形状の違いが分かります。
- F-117ナイトホークは、デルタ翼のような機体形状です。
- F-117ナイトホークは、夜間に飛行するため真っ黒な機体色となっています。
- F-4ファントムからF-15イーグル、そして、ステルス機であるF-22ラプターへと変化(進化)していったと考えています。
図7 F-117ナイトホーク:F-22、F-117、F-4、F-15
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-117ナイトホークの歴史
F-117ナイトホークの歴史について説明します。
非常に早いペースで開発が進んでいったことが分かります。
1975年:ステルス実証機「ハブ・ブルー」
F-117ナイトホーク開発の始まりは、1975年の夏、米国防総省国防高等研究計画局(DARPA:The Defense Advanced Research Projects Agency)による「ポールオフ(pole-off)」と呼ばれるコンペからです。
スカンクワークスが提案した設計は、他に類を見ない被発見性(観測性)を示し、やがてF-117ナイトホークにつながるステルス実証機「ハブ・ブルー(Have Blue)」の契約を獲得しました。
1977年:ステルス実証機ハブ・ブルー(Have Blue)初飛行
1977年、ステルス実証機ハブ・ブルー(Have Blue)が初飛行に成功しました。
DARPAは、スカンクワークスにF-117ナイトホークの契約を発注します。
1981年:F-117ナイトホーク初飛行
1981年、契約締結からわずか31か月(2年と7か月)後、F-117ナイトホークが初飛行に成功しました。
1982年:F-117ナイトホーク納入開始
1982年、F-117ナイトホークの納入が開始されました。
契約締結から納入開始までが、これほど短期間で進んだ理由には、これ以前のスカンクワークスと米国空軍との良好な(歴史的な)パートナーシップによるものと言われています。
1983年:F-117ナイトホーク運用開始(極秘運用)
1983年には、F-117ナイトホークは初期運用を開始していますが、その後も長い間極秘にされていました。
1988年、ようやくF-117ナイトホークの存在が公式に認められました。
1990年:F-117ナイトホーク表舞台に登場
1990年、初めて正式にF-117ナイトホークが公開されました。
この時すでに運用開始から7年が経過しています。
2008年:F-117ナイトホーク退役
2008年、F-117ナイトホークは退役となりました。
2020年代:F-117ナイトホーク復活?!
正式には退役となっているF-117ナイトホークですが、訓練に使われています。
下図は、2023年5月、米国空軍のノーザン・エッジ23-1(Northern Edge 23-1)に参加したF-117ナイトホークです。
- 機体下面がフラットであることが確認できます。
図8 F-117ナイトホーク:ノーザン・エッジ23-1
出典:USAF(米国空軍)のWebサイトからの画像
F-117ナイトホークの諸元
F-117ナイトホークの主な諸元は、主にHOLLOMAN AFB(米国空軍)のWebサイトの情報を参考に紹介します。
全長 | 19.4 m |
---|---|
全高 | 3.9 m |
全幅 | 13.2 m |
エンジン |
|
重量 | 23,625 kg |
速度 | 亜音速(マッハ1未満) |
最大巡航速度 | 1,100 km/h |
武装 | 機体内に搭載(ウェポンベイ) |
運用人員 | 1名 |
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- F-117ナイトホーク(Nighthawk)の紹介ページ(HOLLOMAN AFB)
まとめ
世界初のステルス機として実戦投入されたF-117ナイトホーク(Nighthawk)は、平面が際立つ独特の外観を持つ機体です。
F-117ナイトホークは、すでに退役となっているのですが、2023年5月のノーザン・エッジ23などで今でも飛んでいます。
ここでは、世界初のステルス機としてスカンクワークスが開発したF-117ナイトホーク(Nighthawk)について以下の項目で説明しました。
- F-117ナイトホーク(Nighthawk)とは
- ステルス機の開発技術
- F-117ナイトホークの主な特徴
- 写真で見るF-117ナイトホーク
- 機体形状
- 離陸
- 着陸
- 空気取入口から排気口のレイアウト
- 空中給油
- 参考:機体形状の違い
- F-117ナイトホークの歴史
- 1975年:ステルス実証機「ハブ・ブルー」
- 1977年:ステルス実証機ハブ・ブルー(Have Blue)初飛行
- 1981年:F-117ナイトホーク初飛行
- 1982年:F-117ナイトホーク納入開始
- 1983年:F-117ナイトホーク運用開始(極秘運用)
- 1990年:F-117ナイトホーク表舞台に登場
- 2008年:F-117ナイトホーク退役
- 2020年代:F-117ナイトホーク復活?!
- F-117ナイトホークの諸元
- 参考リンク