YMV-75:米国陸軍で採用されたティルトローター機V-280バロー

比べてみよう
出典:U.S. ARMY(米国陸軍)のWebサイトからの画像(加工しています)

米国陸軍で開発が進められているV-280バロー(VALOR)は、米国海兵隊で採用されているMV-22オスプレイ(Osprey)によく似たティルトローター機です。

2025年5月、米国陸軍の試作機となり、YMV-75となりました。

ここでは、主に米国陸軍のWebサイトの情報からV-280バロー(YMV-75)について、MV-22オスプレイと比べながら写真を使い説明します。

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V-280バロー(VALOR)とは

V-280バロー(VALOR)は、米国陸軍の将来の長距離強襲機(FLRAA:Future Long Range Assault Aircraft)の試作機に採用されYMV-75となったティルトローター機です。

FLRAAは、陸軍のヘリコプターUH-60ブラック・ホークを補完するために設計されており、「2倍遠く、2倍速く(twice as far, twice as fast)」というニックネームがあります。

YMV-75の意味は、次の通りです。

  • 「Y」は試作機
  • 「MV」はマルチミッション・垂直離陸(multi-mission vertical takeoff)
  • 「75」は、米国陸軍の創設1775年から

V-280バローは、MV-22オスプレイと同様、ヘリコプターとプロペラ機の両方の特性を合わせ持つ技術的にもユニークなティルトローター機です。

ティルトローターにより、MV-22オスプレイ同様、以下のヘリコプターとプロペラ機の両方の特性をもっています。

  • ヘリコプターとして、垂直離陸、ホバリング、垂直着陸が可能
  • プロペラ機(ターボプロップ機)として、長距離飛行、燃料効率、ヘリコプターより高速飛行が可能

下図は、飛行中のV-280バロー(VALOR)の写真です。

V-280バロー(VALOR)

Army designates MV-75 as mission design series for Future Long Range Assault Aircraft Pictured is the Bell V-280 Valor developed for the Army’s Joint Multi-Role Technical Demonstrator program as a pre-cursor to the Future Long Range Assault Aircraft. On 5 December 2022, Bell was chosen to develop the MV-75 FLRAA. (Photos courtesy of Bell)

図1 V-280バロー(VALOR)

出典:U.S. ARMY(米国陸軍)のWebサイトからの画像

V-280バローオスプレイの特徴

V-280バローの特徴は、ティルトローターによりヘリコプターと固定翼機(プロペラ機)の特性を合わせ持つことです。

つまり、ヘリコプターの特性をもちながら、ヘリコプターよりも速度と航続距離に優れています。

技術的に見たティルトローターシステム

V-280バローは、ティルトローターを備えたユニークな外観を持ちます。

ティルトローターの位置(角度)により、以下の3つのモードがあります。

  • ヘリコプターの様な垂直離着陸モード
  • プロペラ機の様な固定翼モード
  • 転換モード(垂直離着陸モードと固定翼モードの間)

ティルトローターシステム自体も、複雑なメカニズムや制御アルゴリズムからなっていると推測していますが、パイロットにとっても、ヘリコプターと固定翼機の両方の特性に応じた操縦が求められることになります。

はかせ
はかせ

複雑な操縦システムに加え、ヘリコプターと固定翼機の特性、さらに、転換モードというこれまでにない飛行モードもありますので、パイロットにも相応の知識や技量が求められます。

写真で見るV-280バロー

米国陸軍のV-280バローをU.S. ARMY(米国陸軍)のWebサイトの写真を使い、MV-22オスプレイと比べながら説明します。

MV-22オスプレイについては、以下の記事をご参照ください。

オスプレイとの違い:垂直離着陸モード

V-280バローとMV-22オスプレイは、ティルトローターですが、その仕組みが大きく違います。

下図は、ホバリング時のV-280バローの写真です。

V-280バロー:垂直離着陸モード

The Army announced that it awarded the$1.3 billion Future Long Range Assault Aircraft contract to Texas-based Bell Textron on Dec. 5. Bell’s V-280 Valor [pictured] a joint multi-role (JMR) technology demonstrator (TD), logged more than 200 flight hours during the FLRAA demonstration and risk reduction efforts to help Bell develop the future FLRAA model. (Courtesy photo)

図2-1 V-280バロー:垂直離着陸モード

出典:U.S. ARMY(米国陸軍)のWebサイトからの画像

下図は、着艦時のMV-22オスプレイの写真です。

MV-22オスプレイ:垂直離着陸モード

240405-N-OA516-1121 PACIFIC OCEAN (April 5, 2024) Aviation Boatswain’s Mate (Handling) 2nd Class Johnny Snowden, from Atlanta directs an MV-22B Osprey attached to Marine Tiltrotor Squadron (VMM) 165 (Reinforced), 15th Marine Expeditionary Unit (MEU), to land aboard the Wasp-class amphibious assault ship USS Boxer (LHD 4) during flight operations in the Pacific Ocean, April 5, 2024. VMM-165 (Rein.) is conducting deliberate, progressive training focused on the integration of MV-22s to the 15th MEU’s Marine Air-Ground Task Force as pilots and air crews achieve proficiency. Boxer is the flagship of the Boxer Amphibious Ready Group and is currently underway conducting routine operations in U.S. 3rd Fleet with elements of the 15th MEU. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class Kevin C. Leitner)

図2-2 MV-22オスプレイ:垂直離着陸モード

出典:US NAVY(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>からの画像

図2-1と図2-2は、プロペラが上方を向いています。

  • 図2-2のMV-22オスプレイは、プロペラとエンジン部分が一緒に向きを変えています。
  • 図2-1のV-280バローは、プロペラ部のみが向きを変え、エンジンの向きは変わっていません。

両者のティルトローターシステムの違いは、エンジン排気方向の違いです。

  • V-280バローは、エンジン排気方向は、機体後方となるため、側面から搭乗が可能となります。
  • MV-22オスプレイの場合は、機体後方から搭乗します。

V-280バローは、向きを変えるのはプロペラ部分のみである点は、MV-22オスプレイよりも動かす部分の重量が小さいというメリットがあるのではないかと推測しています。

オスプレイとの違い:固定翼モード

下図は、固定翼モードのV-280バローの写真(図1の再掲です)です。

  • ティルトローターが水平な位置にあります。
  • 固定翼機並みの速度と航続距離を発揮できます。
V-280バロー(VALOR)

Army designates MV-75 as mission design series for Future Long Range Assault Aircraft Pictured is the Bell V-280 Valor developed for the Army’s Joint Multi-Role Technical Demonstrator program as a pre-cursor to the Future Long Range Assault Aircraft. On 5 December 2022, Bell was chosen to develop the MV-75 FLRAA. (Photos courtesy of Bell)

図3-1 V-280バロー:ホバリング

出典:U.S. ARMY(米国陸軍)のWebサイトからの画像

下図は、固定翼モードのMV-22オスプレイの写真です。

  • ティルトローターが水平な位置にあります。
  • 固定翼機並みの速度と航続距離を発揮できます。
MV-22オスプレイ:固定翼モード

220412-M-YO040-2142 DARWIN, Australia (April 12, 2022) A U.S. Marine Corps MV-22 Osprey from Marine Medium Tiltrotor Squadron (VMM) 268 reinforced, Air Combat Element (ACE), Marine Rotational Force-Darwin (MRF-D) 22, participates in a formation flight over Darwin, NT, Australia, during an administrative movement April 12, 2022. VMM 268 flew the Ospreys from Darwin Port to Royal Australian Air Force Base Darwin, strengthening the squadron?s support of MRF-D 22 by fully equipping and staging a capable ACE. (U.S. Marine Corps photo by Cpl. Cameron Hermanet)

図3-2 MV-22オスプレイ:固定翼モード

出典:US NAVY(米国海軍)のWebサイト<Home > Resources > Photo Gallery>からの画像

図3-1と図3-2は、プロペラが上方を向いています。

両者の尾翼形状も違います。

  • V-280バローは、逆V字型の尾翼です。
  • MV-22オスプレイは、H型の尾翼です。

V-280バローの歴史

V-280バロー(VALOR)の歴史について説明します。

米国陸軍は、回転翼機(AH-64/OH-58/UH-60/CH-47など)の後継機開発を個別に行うのではなく、センサー、アビオニクス、エンジン等のコンポーネントを共通化(ファミリー化)することで、コスト削減や開発期間の短縮を狙い「FVL(Future Vertical Lift:将来型垂直離着陸機計画)プログラム」を立ち上げました。

陸軍のヘリコプターUH-60ブラック・ホークの後継機プログラム(FLRAA:Future Long-Range Assault Aircraft:将来型長距離強襲機)において、Defiant XとV-280 Valorが競っていました。

2017年:初飛行

2018年:米国陸軍のテストパイロットによる初飛行

2025年:YMV-75に指定

  • V-280バローが、米国陸軍の将来の長距離強襲機(FLRAA:Future Long Range Assault Aircraft)の試作機に採用され、YMB-75となる。

V-280バローの諸元

V-280バローの諸元は、現時点で不明なので、YMV-75の諸元とあわせわかりましたら追記予定です。

参考リンク

この記事は、主に米国肉軍のWebサイトから、V-280バローに関する情報を参考にしてまとめています。

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まとめ

米国陸軍で試作機YMV-75に指定されたV-280バローは、MV-22オスプレイ同様、ヘリコプター(回転翼機)とプロペラ機(固定翼機)の両方の特性を合わせ持つ、技術的にもユニークなティルトローター機です。

2025年5月、米国陸軍の試作機となりYMV-75となったV-280バロー(VALOR)について、主に米国陸軍のWebサイトの情報から、MV-22オスプレイとの違いなどを写真を使い、以下の項目で説明しました。

  • V-280バロー(VALOR)とは
    • V-280バローオスプレイの特徴
    • 技術的に見たティルトローターシステム
  • 写真で見るV-280バロー
    • オスプレイとの違い:垂直離着陸モード
    • オスプレイとの違い:固定翼モード
  • V-280バローの歴史
    • 2017年:初飛行
    • 2018年:米国陸軍のテストパイロットによる初飛行
    • 2025年:YMV-75に指定
  • V-280バローの諸元
  • 参考リンク
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