F-15シリーズは、歴史の長い機体です。最新はF-15EXイーグルIIですが、従来機種からのアップグレードも行われています。
ここでは、F-15Eストライクイーグルを、F-15EXイーグルIIレベルにアップグレードするイーグル・パッシブ/アクティブ・ウォーニング・サバイバビリティ・システム(EPAWSS)について説明します。
- EPAWSS:Eagle Passive Active Warning Survivability Systemのことです。
F-15EXイーグルIIは、従来のF-15とは見た目にはほぼ違いが分かりませんが、中身は別物です。
ここでは、見た目は同じで中身が違う装備の1つEPAWSSについて説明します。
F-15シリーズについて
F-15シリーズや電波暗室などについての参考記事を紹介します。
F-15EXイーグルIIとF-15Eとの違い
F-15EXイーグルIIとF-15Eとの違いは、次のように考えています。
- F-15EXイーグルIIは米国仕様
- F-15Eストライクイーグルは、米国以外で購入できるF-15EXイーグルII相当の仕様
F-15EXイーグルIIとF-15Eストライクイーグルについては、以下の記事をご参照ください。


電波暗室による電磁波試験
電磁波試験はステルス機だけに必要な試験ではありません。
世界最大の電波暗室での実機による電磁波試験については、以下の記事をご参照ください。
航空機のブロック化による開発
航空機開発ではブロック化による段階的な性能向上を前提とした開発が行われています。
ブロック化による航空機の開発については、以下の記事をご参照ください。
EPAWSSとは
EPAWSS(Eagle Passive Active Warning Survivability System)とは、イーグル・パッシブ/アクティブ・ウォーニング・サバイバビリティ・システムのことです。(以下、長いのでEPAWSSといいます。)
EPAWSSとは以下の機能を実現するF-15EXイーグルIIやF-15Eストライクイーグルの攻撃力と生存性を高めるために開発された、最新のフルデジタルの電子線及び脅威識別システムです。
EPAWSSの機能
EPAWSSを開発したのはBAE SYSTEMS社です。
- EPAWSSの製品名:AN/ALQ-250 Eagle Passive Active Warning
Survivability System
EPAWSSは、F-15EXイーグルIIとF-15Eストライクイーグルに従来より優れた最新の自己防護能力と状況認識能力を与える統合されたシステムです。
システムなので外観では識別できませんが、EPAWSSの主な特徴を列挙します。

EPAWSSの特徴からは、電子戦能力が格段に向上し、統合化されたシステムにより自己防護力(残存性)が向上しているようです。
EPAWSSにより実現されるメリットを運用面とシステム面に分けて列挙します。
運用面のメリット:
- 第5世代ステルス機からのデジタル電子戦テクノロジーを活用
- 攻撃と防御両方のデジタル電子戦能力
- F-35ライトニングIIシリーズと組み合わせると電子戦での相乗的な戦力発揮が可能
- チャフとフレアを50%増量
- レーダー及びレーダー警報受信機に干渉しない同時ジャミング
- アクティブ・電子アレイ・レーダーとの相互運用が可能
- より迅速な対抗措置
- 状況認識力の強化
- 将来のさまざまな脅威の識別・対抗能力
システムとしてのメリット:
- モジュール型で拡張性に優れたオープンアーキテクチャーなシステム
- 能力拡張用の情報処理やメモリ機能を備える
- 故障検知とモジュール交換によるメンテナンス
- 従来のF-15シリーズの電子戦システムより省スペース化
- 全方位を網羅する広帯域レーダー警報およびジオロケーション(位置情報の利用)
- マルチスペクトル、無線周波数(RF)、赤外線(IR)対策
- レーダー警報と対抗手段を単一のシステムに統合
EPAWSSの評価:電波暗室
EPAESSは、電波暗室での試験の他、実戦に近い大規模な演習などで様々な試験や評価が行われてきました。
下図は、電波暗室でのEPAWSS試験の写真です。

190508-F-JG201-0084 EPAWSS testing readies F-15 for future An F-15E Eagle is suspended from the ceiling at the Benefield Anechoic Facility during its first phase of testing of the Eagle Passive/Active Warning and Survivability System (EPAWSS) at Edwards Air Force Base, California, May 8, 2019. A testing phase began recently and is currently under way. (Air Force photo by Ethan “Evac” Wagner)
図2-1 F-15EXイーグルII:EPAWSSの試験
出典:AIR FORCE MATERIAL COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
EPAWSSの評価:演習
下図は、演習「Northern Edge 21」に参加したF-15EXイーグルIIの写真です。
- 演習の場は、実際に使われる条件に近い環境での試験を行うことができます。
- F-15EXイーグルIIの2号機です。
- F-15EやF-35などと組み合わせた試験も行われています。

10512-F-HY271-0254 A U.S. Air Force F-15EX Eagle assigned to the 53rd Wing out of Eglin Air Force Base, Fla., takes off in support of Northern Edge 21 at Joint Base Elmendorf-Richardson, Alaska, May 12, 2021. Approximately 15,000 U.S. service members participated in a joint training exercise hosted by U.S. Pacific Air Forces May 3-14, 2021, on and above the Joint Pacific Alaska Range Complex, the Gulf of Alaska, and temporary maritime activities area. (PHOTO BY: Alejandro Pena)
図2-2 F-15EXイーグルII:Northern Edge 21
出典:AIR FORCE MATERIAL COMMAND(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
EPAWSS搭載F-15Eストライクイーグル
2025年1月、EPAWSS搭載した最初のF-15Eストライクイーグルが2機納入されています。
下図は、納入されたEPAWSS搭載のF-15Eストライクイーグルの写真です。

250116-F-YU924-1972 First F-15E Strike Eagles equipped with Advanced EPAWSS system arrive at the Liberty Wing A U.S. Air Force F-15E Strike Eagle aircraft arrives at RAF Lakenheath, England Jan. 15, 2025. The F-15E Strike Eagles aircraft are equipped with the Eagle Passive/Active Warning and Survivability System marking the delivery of the first F-15E’s integrated with one of the world’s most advanced electronic warfare suites in the European theater.(Senior Airman Seleena Muhammad-Ali)
図3 EPAWSSを搭載したF-15Eストライクイーグル
出典:ROYAL AIR FORCE LAKENHEATH(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
F-35シリーズとの組み合わせについても言及されています。
- First F-15E Strike Eagles equipped with Advanced EPAWSS system arrive at the Liberty Wing
EPAWSS搭載した最初のF-15Eストライクイーグルの写真をもう1枚。
- Boeing社の写真です。

250115-F-F3456-1001 F-15 EPAWSS An F-15E on a flightline in San Antonio, Texas. The aircraft was recently upgraded with Eagle Passive/Active Warning and Survivability System, advanced electronic warfare system. (Boeing photo)
図4 EPAWSSを搭載したF-15Eストライクイーグル
出典:WRIGHT-PATTERSON AFB(米国空軍)のWebサイトからの画像
米国空軍の航空整備部隊によるEPAWSS搭載
2025年3月、米国空軍(USAF)の航空整備部隊(AMXS:Aircraft Maintenance Squadron)によるF-15Eストライクイーグルへの最初のEPAWSS搭載が完了しました。
EPAWSSによる性能向上等については前述の通りですが、F-15EストライクイーグルへのEPAWSS搭載は、これまでで最も大規模な改修です。
航空整備部隊でEPAWSSの搭載ができるメリットは、対象となるF-15Eストライクイーグルの整備期間が大幅に短くなるうえに、整備スケジュールの自由度が上がることです。
300日のスケジュールを組む補給処整備(depot maintenance)を、航空整備部隊では150日で完了を目指し、最初のEPAWSS搭載は167日、2回目は136日と予測しています。
AMXSは、短期間でのEPAWSS搭載を実現するために、ボルト・ナットの1本1本に至るまで(every nut and bolt)綿密な分析を行い準備しています。
参考リンク
- 561st AMXS completes first F-15E PDM EPAWSS installation
まとめ
F-15シリーズは歴史の長い機体です。
ここでは、F-15Eストライクイーグルを、F-15EXイーグルIIレベルにアップグレードするイーグル・パッシブ/アクティブ・ウォーニング・サバイバビリティ・システム(EPAWSS)について、以下の項目で説明しました。
EPAWSSは、見た目は同じで中身は違う装備の1つです。
- F-15シリーズについて
- F-15EXイーグルIIとF-15Eとの違い
- 電波暗室による電磁波試験
- 航空機のブロック化による開発
- EPAWSSとは
- EPAWSSの機能
- EPAWSSの評価:電波暗室
- EPAWSSの評価:演習
- EPAWSS搭載F-15Eストライクイーグル
- 米国空軍の航空整備部隊によるEPAWSS搭載