XQ-58Aヴァルキリー(Valkyrie)は、有人機と連携可能な第1世代のAI無人機であり、信頼できる手頃な価格を目指していました。
XQ-67Aは、第2世代の自律協調プラットフォーム(ACP:autonomous collaborative platform)として開発が進んでいます。プラットフォームをベースにして、ミッションに応じてセンシングステーションやウェポンステーションとして対応できる自律型のAI無人機です。
ここでは、第2世代のAI無人機XQ-67Aについて、主として米国空軍のWebサイトの情報から説明します。
第2世代のAI無人機XQ-67Aとは
第1世代のAI無人機XQ-58Aヴァルキリー(Valkyrie)は、有人機と連携可能な自律型でリーズナブルな価格を実現しました。
XQ-67Aは、第2世代の自律協調プラットフォーム(ACP:autonomous collaborative platform)として開発されており、オフボードセンシングステーション(OBSS:Off-Board Sensing Station)といわれます。
- OBSSは、自立型のセンサーステーションと考えています。
- 外観は、XQ-58Aヴァルキリーに似ています。
- 開発は、GA-ASI社(General Atomics Aeronautical Systems, Inc.)
図1 第2世代AI無人機XQ-67A
出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイトからの画像(加工しています。)
XQ-67Aの自律協調プラットフォームとは
XQ-67Aは、第2世代の自律協調プラットフォーム(ACP:autonomous collaborative platform)として開発されています。
自律型のAI無人機には、有人機と連携して、次のような様々な用途で運用できることが求められています。
- 無人機A:空中給油(MQ-25™スティングレイ)
- 無人機B:レーダーなどの各種センサーのプラットフォーム(センシングステーション)
- 無人機C:ミサイル等のキャリア(ウェポンステーション)
ここで、無人機の開発という視点でみてみると、
- 開発方法A:無人機A、B、Cの3機種を各々の専用機として開発する。
- 開発方法B:無人機A、B、Cの共通化を進めて、用途に応じた要求を追加する。
という2つの開発方法(方針)があります。
- 開発方法Aが航空機の開発では主流となっている方法です。
XQ-67Aでは、開発方法Bによる「プラットフォーム」として開発されています。
シャーシ(フレーム)の共通化し、用途に応じた部分は個別に開発し、航空機の設計、製造、テストが進められています。
生物学でいう「属(genus)」を共通シャーシ、「種(species)」を用途に応じた部分に例え、共通シャーシをベースにして、用途に応じた無人機を速やかに開発できるようにする方法を検証しています。
XQ-67Aで取り組んでいる新しい開発方法は、自動車業界が製品ラインナップを構築する方法をヒントにしています。
- 標準的な構造(standard substructures)とサブシステムを活用することによる、開発期間の短縮と開発コストの抑制
- 車両のフレーム同様、無人機用の共通フレームを構築することで、オフボード・センシングステーション(Off-Board Sensing Station)やオフボードウェポンステーション(Off-Board Weapon Station)などを共通フレームに追加できるようになる。
つまり、無人機の共通フレームに、
- センシングユニットを追加すると、センシングステーション
- ウェポンステーションを追加すると、ウェポンステーション
になるということです。
自律型コラボレーションプラットフォームとは
XQ-67Aの自律型コラボレーションプラットフォームとは、無人機の使用者による以下の分類を利用し、
- 自律性
- ヒューマン・システムの統合
- センサーと武器のペイロード
- ネットワークと通信
- 航空機(機体)
有人機を無人機で置き換えるのではなく、有人機を補佐(サポート)したり増強したりすることを狙っています。
XQ-58Aヴァルキリーでは、適切な戦闘能力を迅速かつ安価に構築できるコンセプトを証明しました。
XQ-67Aでは、XQ-58Aヴァルキリーの成果を利用し、自動車の車両開発を参考にしています。
- 自動車の開発では、車体(フレーム)ができると、センサー、各種システム、搭載物、電子機器などとの統合を始めることができます。
近年の軍用機開発の課題と共通プラットフォームの優位性
XQ-58AヴァルキリーやXQ-67Aで、従来とは異なる自動車業界を参考にした開発プロセスが利用されている理由には、次のような背景があります。
- 軍用機の初期運用能力獲得までの時間が、驚くべき速さで増加している。
- 市場投入までの時間が短縮されている自動車業界などのベストプラクティスを活用することが重要と考えるようになってきている。
これまで説明してきた新しい開発方法による共通プラットフォームを使うと、次のようなメリットを得られます。
- 数年ごとに新しいモデルが開発され展開される場合、技術の更新と導入の機会が増え、使用可能な航空機をより低コストでより迅速に開発できる。
- 特定の要求に合わせて、科学技術の革新を活用した航空機を速やかに提供できる。
例えば、前述のセンシングステーションとウェポンステーションの要求があった場合、
- センシングステーションは、センサー搭載により速度が遅い、飛行時間は長い。
- ウェポンステーションは、高速、機動性、飛行時間は短い、飛行距離は長い。
という課題があります。
そこで、2機種として設計するのではなく、どの程度共通化できるか検討することで、航空機も自動車の様に共通プラットフォーム(シャーシ)から作れることを示した例が、XQ-67Aといえます。
写真で見るXQ-67A
XQ-67AをAIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイトの写真を使い説明します。
2024年5月現在、入手できた写真は3枚だけです。
開発というよい研究よりの機体なので、しかたないと思っています。
飛行中
下図は、XQ-67Aの写真です。
- AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)による初飛行時の写真です。
- 機体形状は、XQ-58Aヴァルキリーに似ています。
図2 XQ-67A:飛行中(その1)
出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイトからの画像
下図は、後方からの写真です。
図2 XQ-67A:飛行中(その2)
出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイトからの画像
下図は、滑走路上の写真です。
図3 XQ-67A:飛行中(その2)
出典:AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のWebサイトからの画像
第2世代のAI無人機XQ-67Aの歴史
第2世代のAI無人機XQ-67Aは、2024年2月に初飛行に成功しています。
AI無人機の開発は、2014年からはじまり、2019年にXQ-58の仕様を定義し、設計、構築(システムビルドなど)、テストを行っています。
XQ-67Aの2年余りの開発期間の後、設計、製造、飛行のプロセスを進めました。
2021年末、GA-ASI社(General Atomics Aeronautical Systems, Inc.)が、設計担当となりました。
XQ-67Aの諸元
XQ-67Aの諸元は、GA-ASI社(General Atomics Aeronautical Systems, Inc.)のWebサイトでも分かりませんでした。
プロトタイプの段階ですので当然のことなのだと考えています。
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- AIR FORCE MATERIEL COMMAND(米国空軍)のXQ-67Aに関連する以下の記事など
まとめ
第1世代のAI無人機XQ-58Aヴァルキリー(Valkyrie)は、有人機と連携可能な、信頼できる手頃な価格の無人機を目指していました。
XQ-67Aは、第2世代の自律協調プラットフォーム(ACP:autonomous collaborative platform)として開発が進んでいます。
XQ-67Aのプラットフォームをベースにすることで、ミッションに応じてセンシングステーションやウェポンステーションとして対応します。
ここでは、第2世代のAI無人機XQ-67Aについて、以下の項目で説明しました。
- 第2世代のAI無人機XQ-67Aとは
- XQ-67Aの自律協調プラットフォームとは
- 自律型コラボレーションプラットフォームとは
- 近年の軍用機開発の課題と共通プラットフォームの優位性
- 写真で見るXQ-67A
- 飛行中
- 第2世代のAI無人機XQ-67Aの歴史
- XQ-67Aの諸元
- 参考リンク