YF-23ブラック・ウィドウIIは、最強のステルス機F-22ラプターのライバル機として試作された第５世代のステルス戦闘機です。
求められる要求性能はF-22ラプターと同等ながら、外観が大きく異なるステルス機です。
ステルス性についての考え方の違いだと思われます。
ここでは、YF-23ブラック・ウィドウIIについて、米国空軍のWebサイトの情報から説明します。
YF-23ブラック・ウィドウIIとは
YF-23ブラック・ウィドウIIはF-22ラプターと最後まで制式化を争ったステルス戦闘機の試作機です。
エンジンは、後にF-22ラプターとなるYF-22と共通のものを使用し、試作機も2機製作されています。
YF-23ブラック・ウィドウIIは、F-22ラプターと同じステルス機ながら、その外観は大きくことなります。
080902-F-1234S-001 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 The two Northrop-McDonnell Douglas YF-23 prototypes in flight. The aircraft on display at the National Museum of the United States Air Force is the darker one on the right. (U.S. Air Force photo)
図1 YF-23ブラック・ウィドウII
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
写真で見るYF-23ブラック・ウィドウII
YF-23ブラック・ウィドウIIについて、主にNATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイトの写真を使い説明します。
機体形状
下図は、飛行中のYF-23ブラック・ウィドウIIの写真です。（図1の再掲です。）
- F-22ラプター同様、ステルス機らしく機体表面には突起物がなく滑らかです。
YF-23ブラック・ウィドウIIの外観上の特徴は、次の3点です。
- 曲面が主体の（直線部が少ない）機体形状
- ひし形の大きな主翼
- 垂直尾翼と水平尾翼を兼ねた2枚の尾翼
080902-F-1234S-001 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 The two Northrop-McDonnell Douglas YF-23 prototypes in flight. The aircraft on display at the National Museum of the United States Air Force is the darker one on the right. (U.S. Air Force photo)
図2-1 YF-23ブラック・ウィドウII：飛行中
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
下図は、YF-23ブラック・ウィドウIIの上方からの写真です。
- ひし形の大きな主翼形状です。
- 垂直尾翼と水平尾翼を兼ねた2枚の尾翼形状が分かります。
- 機首と2機のエンジン部（吸気口から排気口まで）とが滑らかな曲面で接続されています。
- 吸気口が機体上面にはなく、排気ノズルは機体下方側がふさがれていることが分かります。
060810-F-1234S-004 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 Top view of the Northrop-McDonnell Douglas YF-23 in flight. (U.S. Air Force photo)
図2-2 YF-23ブラック・ウィドウII：上方から
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
下図は、側方から見た写真です。
- 吸気口は主翼下部にあり、胴体内で上方に向きを変え排気口につながっています。
- 2枚の尾翼も胴体から滑らかに接続されていることが分かります。
080904-F-1234S-003 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 DAYTON, Ohio — Northrop-McDonnell Douglas YF-23 at the National Museum of the United States Air Force. (U.S. Air Force photo)
図2-3 YF-23ブラック・ウィドウII：側方から
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
下図は、正面から見た写真です。
- 下図では分かりにくいのですが、吸気口は機体下側にあります。
- 機首部はステルス機特有の形状となっています。
- 2枚の尾翼が垂直ではなく、傾きをもって取り付けられています。
080904-F-1234S-002 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 DAYTON, Ohio — Northrop-McDonnell Douglas YF-23 at the National Museum of the United States Air Force. (U.S. Air Force photo)
図2-4 YF-23ブラック・ウィドウII：正面から
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
下図は、後方からの写真です。
- コクピット部分と2機のエンジン部分が滑らかに接続されています。
- 排気口の機体下部側が後方までふさがれていることが分かります。
- 排気口上方は、F-22ラプター同様四角形の形状となっています。
- 2枚の尾翼が胴体から滑らかに接続されていることが分かります。
080904-F-1234S-004 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 DAYTON, Ohio — Northrop-McDonnell Douglas YF-23 at the National Museum of the United States Air Force. (U.S. Air Force photo)
図2-5 YF-23ブラック・ウィドウII：後方から
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
下図は、YF-23ブラック・ウィドウIIを下方から見た写真です。
- 主翼下面の吸気口と機体上部の排気口とが直線上にあることが分かります。
- 排気口の下面は胴体部とつながり、ふさがっていることが分かります。
- 下図の赤い三角形は、ラム・エア・スクープ（ram air scoop）で、地上での事故を防ぐための表示です。表示の形から砂時計（hourglass）と呼ばれていました。
220201-F-ZS999-003 Flashback: Northrop YF-23 Black Widow II To prevent injury to ground personnel while under the aircraft, the ram air scoop was highlighted with a set of red and white triangles for visibility. The unintended coincidence looked like a Black Widow hourglass while the aircraft was in flight.(Historical Photo)
図2-6 YF-23ブラック・ウィドウII：下方から
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
下図は、斜め前方から見た写真です。
- コクピットを含む機首、エンジン、主翼、2枚の尾翼が、なめらかに接続されている（平面の組み合わせではなく曲面をつなげている）ことが分かります。
080904-F-1234S-001 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 DAYTON, Ohio — Northrop-McDonnell Douglas YF-23 at the National Museum of the United States Air Force. (U.S. Air Force photo)
図2-7 YF-23ブラック・ウィドウII：斜め前方から（その1）
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
下図から、主翼下の吸気口から、主翼上の膨らみ（エンジン部）とが、排気口まで滑らかにつながっていることが分かります。
151007-F-DW547-010 Fourth Building Aircraft Moves Restoration staff move the Northrop-McDonnell Douglas YF-23A into the new fourth building at the National Museum of the U.S. Air Force on Oct. 7, 2015. (U.S. Air Force photo by Ken LaRock)
図2-8 YF-23ブラック・ウィドウII：斜め前方から（その2）
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
スラスト・ベクトル・ノズル
下図は、YF-23ブラック・ウィドウIIの機体後方からの写真です。
- ２基のジェットエンジンのスラスト・ベクトル・ノズルを確認できます。
- F-22ラプターのスラスト・ベクトル・ノズルは、上下方向に向きを変えることができますが、YF-23ブラック・ウィドウIIは上方にも動かないようです。
YF-23とF-22ラプターのスラスト・ベクトル・ノズルの使い方は、運動性とステルス性のバランスなどの考え方（設計思想）の違いなのかもしれません。
151007-F-DW547-011 Fourth Building Aircraft Moves Restoration staff move the Northrop-McDonnell Douglas YF-23A into the new fourth building at the National Museum of the U.S. Air Force on Oct. 7, 2015. (U.S. Air Force photo by Ken LaRock)
図3 YF-23ブラック・ウィドウII：スラスト・ベクトル・ノズル
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
スラスト・ベクトル・ノズルについては、F-22ラプターのスラスト・ベクトル・ノズルについての以下の記事をご参照ください。
コクピット（キャノピー形状）
YF-23ブラック・ウィドウIIのコクピット（キャノピー）部分は、F-22ラプターと同じ様な形をしています。
- キャノピーの周りも突起物の少ない形状となっています。
060810-F-1234S-002 Northrop-McDonnell Douglas YF-23 Northrop-McDonnell Douglas YF-23. (U.S. Air Force photo)
図4 YF-23ブラック・ウィドウII：コクピット
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
YF-22との2ショット
下図は、YF-22（後のF-22ラプター）とYF-23とが一緒に飛行している写真です。
- 下図手前側がYF-22（後のF-22ラプター）、奥側がYF-23ブラック・ウィドウIIです。
- 並べて見ると機体形状が大きく異なることが分かります。
- 空気取入口の位置も大きく違います。
060810-F-1234S-010 YF-22 and YF-23 Lockheed-Boeing-General Dynamics YF-22 and Northrop-McDonnell Douglas YF-23. (U.S. Air Force photo)
図5 YF-22とYF-23
出典：NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE（米国空軍）のWebサイト＜Home > UPCOMING > Photos＞からの画像
YF-23ブラックウィドウIIとF-22ラプターとの違いは、以下の記事をご参照ください。
YF-23ブラック・ウィドウIIの歴史
YF-23ブラック・ウィドウIIの歴史について、米国空軍のWebサイト情報から説明します。
YF-23ブラック・ウィドウIIは、YF-22（後のF-22ラプター）と試作機として最後まで競いあいました。
1980年代：ATFとしての研究
- YF-23ブラック・ウィドウIIは、Advanced Tactical Fighterとして、試作機が2機作られました。
1990年：YF-23初飛行
- 1990年に初飛行し、YF-22と同じように2種類のエンジンと共に評価されました。
- 最終的にYF-23は選定されず、YF-22がF-22ラプターとなりました。
YF-23ブラック・ウィドウIIの諸元
米国空軍のWebサイトの情報から主要諸元を下表に示します。
- YF-23ブラック・ウィドウIIの諸元は、出典を確認できたたものだけ記載しています。
YF-22と比べると、
- 全長が約1m長く、全幅はほぼ同じです。
- エンジンは同一です。
| 全長 | 20.5 m |
|---|---|
| 全高 | – m |
| 全幅 | 13.3 m |
| 尾翼幅 | – m |
| 翼面積 | – m2 |
| エンジン |
|
| 重量 | – |
| 最大離陸重量 | – |
| 速度 | マッハ1.8（2,203 km/h） |
| 航続距離 | – |
| 燃料搭載容量 | – |
| 武装 | – |
| 乗員 | パイロット |
参考リンク
この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。
英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。
- Northrop-McDonnell Douglas YF-23A Black Widow II > National Museum of the United States Air Force™ > Display
- AIR FORCE SUSTAINMENT CENTER（米国空軍）の「Flashback: Northrop YF-23 Black Widow II」のページ
まとめ
YF-23ブラック・ウィドウIIは、最強のステルス機F-22ラプターのライバル機として試作された第5世代のステルス戦闘機です。
求められる要求性能は同等ながら、YF-23ブラック・ウィドウIIの外観はF-22ラプターと大きく異なります。
ここでは、YF-23ブラック・ウィドウIIについて、米国空軍のWebサイト情報から以下の項目で説明しました。
- YF-23ブラック・ウィドウIIとは
- 写真で見るYF-23ブラック・ウィドウII
- 機体形状
- スラスト・ベクトル・ノズル
- コクピット（キャノピー形状）
- YF-22との2ショット
- YF-23ブラック・ウィドウIIの歴史
- 1980年代：ATFとしての研究
- 1990年：YF-23初飛行
- YF-23ブラック・ウィドウIIの諸元
- 参考リンク
