T-7Aレッドホーク耐候性試験:極寒・酷暑に高湿度での機能確認

T-7Aレッドホーク対候性試験 航空機のテスト
出典:USAF(米国空軍)のWebサイトからの画像(加工しています)

自動車のCMで雪国での走行テストの映像を見ることがありますが、新しい航空機の開発でも耐候性試験は必須です。

耐候性試験は、寒い気候だけでなく、高温、多湿などに条件下で、試験対象の機能が正常に発揮されるかを確認します。

ここでは、航空機の耐候性試験試験について、次世代の訓練機T-7Aレッドホークの耐候性試験について説明します。

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耐候性試験とは

耐候性試験とは、低温から高温までの気象条件を再現した試験室の中で、試験対象の実機に異状なことが発生しないか、あるいは、本来の機能が正常に発揮されるかなどを確認する試験です。

試験対象の試験環境を変えるためか環境試験と呼ばれることもあります。

下図は、EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)にある、マッキンリー気候研究所(McKinley Climactic Laboratory)で行ったT-7Aレッドホークの耐候性試験の写真です。

  • 下図左側が低温試験、下図右側は高温試験の写真です。
  • 試験環境の気温は43.3度から-31.7度、高湿度での試験も行いました。
  • この試験室の広さは、約5,100m2です。

図1 耐候性試験のイメージ:T-7Aレッドホーク

出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)

航空機の耐候性試験とは

航空機には、低温から高温、高湿度などの極端な環境においても、正常な飛行ができることを求められます。

正常な飛行をするまえに、機体や計器類、搭載している電子機器などが、極端な気温や湿度において、どの様な挙動を示すか(極端な気温や湿度に対し、どんな風に耐えたか)を確認する必要があります。

耐候性試験は、航空機が実際に飛行する前に、実際の環境(極端な高温から低温や高湿度)での環境下でどの様な挙動を示すかを評価するために行います。

実際の試験も一発勝負となりますので大変ですが、様々な条件を実現する準備作業も大変です。

マッキンリー気候研究所とは

マッキンリー気候研究所(McKinley Climactic Laboratory)は、フロリダ州にあるEGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)にあります。

実機を使った試験は、試験設備や使用する機材等の準備が必要になります。

マッキンリー気候研究所には、経験豊富な溶接技術者、機械技術者、電気技師、計測の専門家、試験のための組み立て技術者や冷凍機オペレーターを研究所内に抱えることで、試験に必要な対応を迅速に行うと共に、必要な技術的熟練度を維持しています。

例えば、新しい機体や装備品ができると、マッキンリー気候研究所のクルーはそれらに対応したり、時には特定の要求に対応するために新しい方法を採用することもあります。

マッキンリー気候研究所で再現できる環境条件を列挙します。

  • 砂漠や極寒
  • 極端な高温および低温
  • 砂、塵、風、雨、雪、塩霧、日射、雨氷、氷結、高地
  • 急速な減圧
  • 高湿度

T-7Aレッドホークとは

T-7Aレッドホークは、T-38Cタロンの後継機となる次世代の訓練機です。

詳細は、以下の記事をご参照ください。

T-7Aレッドホークの耐候性試験

2024年1月から2月にかけての1か月に及ぶ、T-7Aレッドホークの耐候性試験の様子を写真で説明します。

この耐候性試験の目的

この耐候性試験は、マッキンリー気候研究所のチャンバー(試験室)にT-7Aレッドホークを置き、気温43.3度の高温から-31.7度の低温という極端な温度や高湿度の状態を約1か月間与える試験です。

  • 極端な温度や湿度環境下で、T-7Aレッドホークの機体、様々な計器類や電子機器が、どのように耐えたかを評価します。
  • この試験は、作戦行動で実際に直面する極限状況下での耐候性を評価する狙いがあります。

高温試験:ソーラーテスト

下図は、高温試験、ソーラーテスト(solar test)の写真です。

  • 機体上部の天井に設置されているのがソーラーテスト用のヒーターです。
T-7Aレッドホークの対候性試験:ソーラーテスト(その1)

T-7 solar test A T-7A Red Hawk sits under bright lights used to create heat in the McKinley Climatic Lab March 19 at Eglin Air Force Base, Florida. The Air Force’s newest training aircraft experienced temperature extremes from 110 to minus 25 degrees Fahrenheit as well as heavy humidity during the month of testing. The tests evaluate how the aircraft, its instrumentation and electronics fared under the extreme conditions it will face in the operational Air Force. (U.S. Air Force photo by Samuel King Jr.)

図2 T-7Aレッドホークの耐候性試験:ソーラーテスト(その1)

出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、正面から見たソーラーテスト中のT-7Aレッドホークの写真です。

T-7Aレッドホークの対候性試験:ソーラーテスト(その2)

T-7 solar test A T-7A Red Hawk sits under bright lights used to create heat in the McKinley Climatic Lab March 19 at Eglin Air Force Base, Florida. The Air Force’s newest training aircraft experienced temperature extremes from 110 to minus 25 degrees Fahrenheit as well as heavy humidity during the month of testing. The tests evaluate how the aircraft, its instrumentation and electronics fared under the extreme conditions it will face in the operational Air Force. (U.S. Air Force photo by Samuel King Jr.)

図2 T-7Aレッドホークの耐候性試験:ソーラーテスト(その2)

出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、マッキンリー気候研究所のチャンバー内の写真です。

  • 試験室(チャンバー)の大きさの分かる写真です。
T-7Aレッドホークの対候性試験:ソーラーテスト(その3)

T-7 solar test A T-7A Red Hawk sits under bright lights used to create heat in the McKinley Climatic Lab March 19 at Eglin Air Force Base, Florida. The Air Force’s newest training aircraft experienced temperature extremes from 110 to minus 25 degrees Fahrenheit as well as heavy humidity during the month of testing. The tests evaluate how the aircraft, its instrumentation and electronics fared under the extreme conditions it will face in the operational Air Force. (U.S. Air Force photo by Samuel King Jr.)

図2 T-7Aレッドホークの耐候性試験:ソーラーテスト(その3)

出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

低温試験:コールドテスト

下図は、低温試験、コールドテスト(cold test)の写真です。

  • 機体上部の天井のエアダクトを確認できます。
T-7Aレッドホークの対候性試験:コールドテスト(その1)

T-7 Cold Test A T-7A Red Hawk sits in a frozen McKinley Climatic Lab chamber Jan. 22, 2024 at Eglin Air Force Base, Florida. The Air Force’s newest training aircraft experienced temperature extremes from 110 to minus 25 degrees Fahrenheit as well as heavy humidity during the month of testing. The tests evaluate how the aircraft, its instrumentation and electronics fared under the extreme conditions it will face in the operational Air Force. (U.S. Air Force photo by Samuel King Jr.)

図3 T-7Aレッドホークの耐候性試験:コールドテスト(その1)

出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、正面から見たコールドテスト中のT-7Aレッドホークの写真です。

  • キャノピーや機体表面の霜が確認できます。
T-7Aレッドホークの対候性試験:コールドテスト(その2)

Alia on the line A T-7A Red Hawk sits in a frozen McKinley Climatic Lab chamber Jan. 22, 2024 at Eglin Air Force Base, Florida. The Air Force’s newest training aircraft experienced temperature extremes from 110 to minus 25 degrees Fahrenheit as well as heavy humidity during the month of testing. The tests evaluate how the aircraft, its instrumentation and electronics fared under the extreme conditions it will face in the operational Air Force. (U.S. Air Force photo by Samuel King Jr.)

図3 T-7Aレッドホークの耐候性試験:コールドテスト(その2)

出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

下図は、コールドテスト中のT-7Aレッドホークの写真です。

  • 天井の冷気吹き出し口の氷や、氷雪が降っている様です。
T-7Aレッドホークの対候性試験:コールドテスト(その3)

T-7 Cold Test A T-7A Red Hawk sits in a frozen McKinley Climatic Lab chamber Jan. 22, 2024 at Eglin Air Force Base, Florida. The Air Force’s newest training aircraft experienced temperature extremes from 110 to minus 25 degrees Fahrenheit as well as heavy humidity during the month of testing. The tests evaluate how the aircraft, its instrumentation and electronics fared under the extreme conditions it will face in the operational Air Force. (U.S. Air Force photo by Samuel King Jr.)

図3 T-7Aレッドホークの耐候性試験:コールドテスト(その3)

出典:EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

参考:チャンバー内では人工雪も作れます

下図は、マッキンリー気候研究所のメインチャンバー内で、試験準備のため人工的に雪を作っている写真です。

マッキンリー気候研究所のメインチャンバーの人工雪

McKinley Climatic Laboratory celebrates 75th anniversary Team members at the McKinley Climatic Laboratory at Eglin Air Force Base, Florida, use machines to create snow in the MCL Main Chamber to prepare for environmental testing. Those at the MCL recently celebrated the 75th anniversary of the facility. The first tests at the MCL occurred in May 1947. The MCL is operated by the 717th Test Squadron, 804th Test Group, Arnold Engineering Development Complex. (U.S. Air Force photo by William Higdon)

図4 マッキンリー気候研究所のメインチャンバーの人工降雪

出典:AIR FORCE TEST CENTER(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像

参考リンク

この記事は、主に以下のWebサイトの情報をまとめています。

英文サイトを和訳していることと、私の理解した内容なので正確な情報は、以下の情報をご参照ください。

  • EGLIN AIR FORCE BASE(米国空軍)のT-7Aレッドホークの耐候性試験の記事のページ
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まとめ

自動車のCMで雪国での走行テストの映像を見ることがありますが、新しい航空機の開発でも耐候性試験は必須です。

耐候性試験は、寒い気候だけでなく、高温、多湿などに条件下で、試験対象の機能が正常に発揮されるかを確認します。

ここでは、航空機の耐候性試験試験について、次世代の訓練機T-7Aレッドホークを例に、以下の項目で説明しました。

  • 耐候性試験とは
    • 航空機の耐候性試験とは
    • マッキンリー気候研究所とは
    • T-7Aレッドホークとは
  • T-7Aレッドホークの耐候性試験
    • この耐候性試験の目的
    • 高温試験:ソーラーテスト
    • 低温試験:コールドテスト
    • 参考:チャンバー内では人工雪も作れます
  • 参考リンク
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