ステルス機であるF-22ラプターは、レーダーに発見されにくい機体形状に加え、塗装などにも様々な工夫が施され、低観測性(LO)に優れた機体です。
F-22ラプターの写真をUSAF(米国空軍)のWebサイトなどで見ていると、機体下面に薬のカプセルの様な形のセンサーの様な物が取り付けられています。
Google先生に聞いてみたところ、どうやらレーダー反射装置のようです。
ステルス機なのにあえてレーダー波を反射させる理由やステルス機のレーダーによる観測イメージについて説明します。
F-22ラプターの機体下面に付いているのは何?
最新のステルス機はF-35ライトニングIIシリーズですが、最強のステルス機はF-22ラプターだと考えています。
なお、F-22ラプターの詳細は、以下の記事をご参照ください。
F-22ラプターのレーダー・リフレクター
下図は、F-22ラプターの機体下面の写真です。
- F-22 Raptor Demonstration Teamによるデモ飛行での写真です。
- 機体下面の中央部に飛び出ている物が、レーダー・リフレクターです。
図1-1 F-22ラプター
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像
下図は、上図の機体下面中央部を拡大した図です。
図1-2 F-22ラプター:レーダー・リフレクター
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
写真で見るF-22のレーダー・リフレクター
F-22ラプターの機体下部のレーダー・リフレクターの有無を写真で確認します。
レーダー・リフレクターあり
下図は、F-22ラプターの機体下部にレーダー・リフレクターがある写真です。
- 2024年6月に行われた訓練での写真です。
- 機体下面中央付近をよくみると確認できる突起状のモノが、レーダー・リフレクターです。
図2 F-22ラプター:レーダー・リフレクター搭載
出典:7TH AIR FORCE(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
レーダー・リフレクターなし
下図は、F-22ラプターの機体下部にレーダー・リフレクターがない写真です。
- 2016年のRed Flag16-1(米国空軍の演習)での写真です。
- Red Flag16-1では、実戦に近い条件での訓練を行うため、レーダー・リフレクターがないと思われます。
図3 F-22ラプター:レーダー・リフレクターなし(その1)
出典:USAF(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
もう1枚、レーダー・リフレクターなしの写真です。
- 2024年10月の訓練での写真です。
図3 F-22ラプター:レーダー・リフレクターなし(その2)
出典:U.S. AIR FORCE CENTRAL(米国空軍)のWebサイト<Home > News > Photos>からの画像(加工しています。)
ステルス機をレーダーで観測するイメージ
F-22ラプターのレーダー・リフレクターについて説明する前に、レーダーについて説明します。
レーダーとは
レーダーには、レーダー波のを出す(発射、放射)とレーダー波を受信する機能があります。
レーダーにより、航空機を発見するイメージは、次の通りです。
- レーダーから、レーダー波を発射します。
- 発射されたレーダー波は、航空機等にぶつかり反射されます。
- 航空機等に反射されたレーダー波を、レーダーで受信します。
- 発射したレーダー波と受信したレーダー波の情報から、航空機等の位置を計算(推定)します。
ステルス機と非ステルス機によるレーダー処理
非ステルス機とステルス機は、機体で反射してレーダーで受信されるレーダーの反射波の大きさ(強さ)が大きく異なります。
- 例えば、最強の戦闘機といわれるF-15EXイーグルIIと最強のステルス機F-22ラプターとでは、レーダー波の反射波の大きさは、1/10とか1/100といった感じで桁が違うイメージになります。
- モノの大きさに例えれば、ステルス機はレーダー上には非常に小さい物体として映るということです。これを、低観測性(LO:low observability)といいます。
下図は、ステルス機と非ステルス機によるレーダー処理のイメージ図です。
- 下図、青い矢印がレーダーにより発射されたレーダー波です。
- 下図、赤い矢印は、レーダー波が機体で反射したレーダー波です。
- 青い矢印と赤い矢印の大きさが、レーダー波の大きさ(強さ)を表しています。
非ステルス機(下図左側)と比べると、ステルス機(下図右側)はレーダー波の反射波が小さく(弱く)なります。
図4 ステルス機とレーダーとの関係のイメージ
ステルス機のレーダー・リフレクターのイメージ
下図は、ステルス機のレーダー・リフレクターの効果をイメージした図です。
- 下図、青い矢印がレーダーにより発射されたレーダー波です。
- 下図、赤い矢印は、レーダー波が機体で反射したレーダー波です。
- 青い矢印と赤い矢印の大きさが、レーダー波の大きさ(強さ)を表しています。
図5 ステルス機のレーダー・リフレクターのイメージ
上図左側の図は、ステルス機から反射するレーダー波のイメージです。
- ステルス機から反射されるレーダー波(反射波)が小さい(弱い)ことを示しています。
上図右側の図は、レーダー・リフレクターを設置したステルス機から反射するレーダー波のイメージです。
- ステルス機から反射されるレーダー波は、機体による反射波に加え、レーダー・リフレクターによる反射もあることを示しています。
- ステルス機としての性能を示す反射波(上図左側の赤い小さい矢印)よりも、レーダー・リフレクターによる反射波(上図左側の赤い大きい矢印)の方が大きいことを示しています。
考察:レーダー・リフレクターの役割について
実際のステルス機では、これほど単純ではないと思いますが、
- レーダー・リフレクターは、レーダー波に対し、ステルス機本来のレーダー波ではなく、レーダー・リフレクターによる反射波をレーダーに受信させる役割がある。
と考えています。
ステルス機の持つ相手側のレーダーでは発見できないというメリットを最大限に活用するためには、ステルス性能を知られないことが重要です。
レーダー・リフレクターには、F-22ラプターのステルス性能を隠す役割もあるのではないでしょうか?
実戦的な訓練では、レーダー・リフレクターを外し機体本来のステルス性能を発揮して、ステルス性の優先度が低い訓練などでは、レーダー・リフレクターを搭載しているのではないかと考えています。
まとめ
ステルス機であるF-22ラプターは、レーダーに発見されにくい機体形状に加え、塗装などにも様々な工夫が施され、低観測性(LO)に優れた機体です。
ステルス機は、機体表面が滑らかなのが特徴ですが、USAF(米国空軍)のWebサイトのF-22ラプターの写真では、機体下面に突起物(レーダー・リフレクター)があったり無かったりします。
ステルス機なのにあえてレーダー波を反射させる理由やステルス機のレーダーによる観測イメージについて、以下の項目で説明しました。
- F-22ラプターの機体下面に付いているのは何?
- F-22ラプターのレーダー・リフレクター
- 写真で見るF-22のレーダー・リフレクター
- レーダー・リフレクターあり
- レーダー・リフレクターなし
- ステルス機をレーダーで観測するイメージ
- レーダーとは
- ステルス機と非ステルス機によるレーダー処理
- ステルス機のレーダー・リフレクターのイメージ
- 考察:レーダー・リフレクターの役割について